私的ベスト・ミュージック10枚(2020年3月編) by 高橋アフィ

3月は色々多忙であまり聞けなかったと思ったんですが、思い返すと3月も粒ぞろいでした。

Satin Doll / Sam Gendel

「激チル!最高!」みたいなのを想像していたら、実験的で最先端かつオールドスクールという奇作。そして全面的に導入されたエレドラ、いわゆる硬いビートではなく、むしろ生っぽいヨレやもたりをそのまま残した、というか強調された感じなんですよね。機械の挙動が不恰好な時に感じる人間味 / 郷愁に目を向けている気もします。音像の新しさをチルで聴かせてしまう、異形ジャズ作。

RAIN DANCE / Emma-Jean Thackray

UKのトランペッター/マルチ奏者のEP。今まではトラックメイカー的な側面も強い印象だったのですが(アゲインスト・ザ・クロックにも出てる)、本作はバンドサウンドでそれぞれのプレイヤーも良く、Emma-Jean Thackrayの世界観がそのままスケールアップした印象。サイケなエフェクト感ありつつ、トラックとしては基本硬めで踊れる演奏というバランスが良かったです。Wisdomのスーザ(チューバ)でごりっとやる感じ、かっこ良いですね!!

B​-​Sides & Rarities / Sen Morimoto

昨年KAINAのfeat.も素晴らしかったSen Morimotoによるアウトテイク的なやつ(?)。しかし滅茶苦茶クオリティ高い!!サンプリングの気持ち良さ / 気持ち悪さと、音が多層に鳴っているカオスをコントロールする高度な作曲能力、そしてチルい雰囲気なのにビートはしっかり太い!!とにかく最高です!

Yene Mircha / Hailu Mergia

エチオジャズ!親しみやすいメロに楽しげキメ、ゆる良いしなんだか笑顔になってしまいます。

My Magic Dreams Have Lost Their Spell / Nick Storring

音に向き合うとはこういうことです。トロントのチェロ / マルチ奏者。マスタリングはSandro Perri。"using exclusively acoustic and electromechanical instruments and very little electronic processing."とのことで、多分エフェクト処理をほとんどしていないということかと。弦楽器や打楽器など様々な音色が美しく、調和と不協和を行き来する作曲が素敵。

Fire Sign / Braxton Cook

歌とサックスが共に主役である名盤です。共に空間に溶かすような音色で、メロウネスが溢れています。そして何よりメロが良い!ジャズ・ミュージシャンが歌うこと増えてきていますが、その中でも圧倒的にポップスとしてもちゃんと良いメロを作曲できると思います。ずっと聴けますね。

Ghost Demos / TV Blonde

でろでろローファイエクスペリメンタル歌物。

Visions / Matthew Tavares & Leland Whitty

元BBNGのキーボMatthew Tavaresと現BBNGのサックスLeland Whittyのアルバム。スピリチュアル・ジャズやブラジリアンからの影響も見えるサイケ具合で、(ポスプロではなく)生音を中心として演奏がトランシーになっていく様というか、没入的な音楽性が良かったです。このトランス感、即興演奏を軸とした録音ということもあるでしょうね。またLeland Whittyの吹きっぷりが良くて、レアグルーヴと現代が自然に繋がっている演奏が面白かったです。

Gloam / Cole Pulice

ミネアポリス拠点のサックス奏者によるエクスペリメンタル / アンビエント。Bon IverやMild High Clubのサポートなどもしているそうです。エフェクトがかかったサックスの音色が、シンセと肉声の間みたいで素直に眠れます。
オーバーダビングなしゆえの音の少なさ(オクターバー系かけてはいるけど)が、良きアンビエントになっていると思います。

REJOICE / TONY ALLEN & HUGH MASEKELA

2018年に惜しくも他界した南アフリカ出身のジャズ・トランペッター、ヒュー・マセケラと、トニー・アレンのセッションを2019年に重ね録音したりなどして完成した作品。Joe Armon-Jones (Ezra Collective)なども参加してますが、主役はやはり二人で、僕としてはトニー・アレンが最高ということです。


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