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ヴィラデストワイナリー訪問記 「自分の場所」を作る #0121

先週、祖父母宅の遺品整理ついでに、久しぶりに長野県東御市にあるヴィラデストワイナリーに行ってきました。

もうかれこれ15年以上前に発見して、上田に住んでいた頃は時々行ってましたが久しぶり訪問。訪問した日はとんでもなく暑かったのですが、相変わらずの素晴らしいランドスケープにゆったりした気分になりました。

ガーデンがまたさらに深化していて、「時間と土地」がうまく絡んでいるよなーということと、「自分の場」ってのがあるのはいいよねってことを思った次第です。

ガーデンから見たレストラン

ヴィラデストワイナリーってどんなとこ?

ご存知の方も多いと思いますが、ヴィラデストは2003年に、画家の玉村豊男氏がオープンしたワイナリー。今から20年前ですよ。やはり先駆けはすごいね。

長野県の東御市にあり、田んぼや畑が広がる山道を登って行った先、一見森しかないような小道を入ると、盆地を見渡す土地に広大なワイナリーとレストランが出現します。当時は本当に山と畑しかなかっただろうからね、えらいもんです。

背景は山

こういう仕事をしていると山を切り開くことの大変さがよくわかるので、広大な敷地(しかも山)をアレンジする仕事には感心させられます。

ここがすごいのは、広大な葡萄畑もさることながら個人的にはやはりガーデン。盆地を見下ろすようにガーデンを設てあって、そこを歩くだけで楽しい気分になります。植物の配置も、さすが画家だけあって、構図や配色に気を配っていてとても素晴らしい。あとは、レストランで使うための野菜も育っているのですが、見た目とエタブルを混ぜる感じも欧州を彷彿とさせていい感じです。
散策できるランドスケープとしてだけでなく、このガーデンはレストランからも見えるようになっていて、窓からのピクチャーとしてもとても良い。

見事なランドスケープ!
ピクチャーウィンドウも良い(画質荒)

あとは、とにかくここのガーデンが素晴らしいのは、メンテナンスがしっかり行き届いていることですね。庭は作った時よりも、アフターメンテナンスの方がよっぽど大事なのです。

よくメンテナンスされています

ランドスケープ&商業が上手く関わった一つの事例

敷地内にはレストランだけでなく、ワイン、グッズの販売などを行なっている施設が併設されていて、ここに立ち寄っている人も多かったです。

今回はレストラン目当てだったのですが、コースを3つから選べるようになっていてどれもとても美味しかったです。野菜はガーデンのものを使えるし、小麦の栽培も多いエリアなので、周辺だけでだいぶ材料は揃いそうな感じ。ケーキは食事中にショーケース内に種類が追加されていくので、これもよかったですな。
そして何しろ量が適量!ここに来る人は、ヤングでガッツリ食べる感じより、ゆっくりした場を楽しめる30代以上が多い感じなのもあるのでしょうが、若干少なく感じるくらいがワインを楽しむのには最適です(今回は運転あるから飲めなかったが)
軽井沢から近いが近すぎないし、「ちょうどいい」感じがあります。

ガーデンはエタブルなものと一緒になっている

スタッフの方も、子供が持っている人形をみんな可愛がってくれたり、ケーキが追加されるとわざわざ教えてくれたりwとても親切でいい感じでした。余裕がある感じがするね。この余裕は、場の演出の一つになっている気がします。

もちろんワイン自体をこの場所以外でも販売しているわけで、なかなかいい感じで大きくなっているなーというところでした。

時間と土地を味方につける

ガーデンもそうなのですが、こういった場に関しても「時間と土地を味方につける」ということもうまくできているんだろうなーと思います。

ガーデンの植物に関していうと、特に宿根草などは1年目より2年目の方が株が大きくなるわけで、さらに年数を重ねると違う種が増えたり、場と合わずに意外と育たなかったり、、を繰り返して風景に「馴染んで」いくものです。
その間も適切に手をかけないとすぐに場が荒れたり、育たなかったり、が起きます。逆に手をかけすぎると人工的な感じになりすぎてしまいます。(それはそれで面白くなったりもするんだけど)

これは時間をかけないとできないことで、料理や接客なども同じような感じで場に馴染んで行ったんだろうなーということをガーデン一つからも読み取ることができます。そういう意味で、うまく時間を味方につけたんだなーと思ったわけです。

ガーデンの植物でこんなこともできる

土地に関しても同じですね。
地方のメリットは土地を「平面に」使えるということです。簡単な話、都会だと土地代が高いから、上に建物を伸ばして回収する必要が出てきますが、地方だとそのままフラットに活用できます。元からある風景(例えば山だったり盆地だったり)をそのまま借景として使うことで、「広大な土地をうまく広大に見せる」というランドスケープ的価値を大いに活用できるわけです。
これもつまり場に馴染ませていくことであり、「既にそこにある物との共同作業」と言い換えることもできます。

このあたりのことを20年前から続けている、と言うのは大いなる価値だと思うわけです。

自分の場所を作る、ということ

この場所自体は玉村氏がおそらく気に入ってランドスケープを作って行ったわけですが、今ではすっかり彼の場でもあります。
それは提供するものや働く人、お客さんも含めて、たくさんの人の場でありながらもやっぱり彼の場なのだと思います。
自分の場に人が集まってくる、というのは常に風通しが良くなるわけです。植物育てる時も大事なんですよ、風通し。

わたくし自身はあまり土地に固定される気質ではないのです。どこに行ってもOK!と言うタイプではあるので、その辺は気楽なんだけど。でもやっぱり物理的に自分の場がある、ということは固定的に見えて実は流動的かつ多様なんだよなーと思います。

以前、これも長野の佐久にあるYUSHI CAFE で「場所があると人が向こうから来てくれるから飽きない」ということを聞いた記憶があります。
自分で作った場にはやっぱり「自分」が出るので、それでも来てくれる人というのは考えてみればありがたいもんですよね。
それに、それぞれの経験や体験を持ってやってくる、というのはそれだけで歴史が蓄積されていくわけだし、かつ風通しが良くなって面白い場になるんだろうな、と改めて思った次第です。

時々わたくしが翻訳を手伝っているブランドのデザイナーが、「自分が入る老人ホームを設計しようとしている」と最近言っているのですが、人間結局最後は集える場が欲しいんじゃないかなーとも思ったわけです。

近場に行くことがあれば、ぜひ立ち寄って見てください!

そんなことをつらつら思いながら、満足してその後は子供に付き合って、某商業施設に立ち寄らされましたw

翌日は、安定のおぎはら植物園にて、ワークショップ用に苗の仕入れを大量にして帰りましたとさ!

ではでは!



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