造園業における、わたくし的弱者の戦略 #0119
木下斉さんのジブン株式会社経営の関連して「弱者の戦略」がトピックとして挙がっています。
個人事業として造園業に関わる今、まさに弱者としてどう戦略を立てるか、どのように局地戦に持っていくのか、ということは生存戦略として大いに意識する部分です。大企業の会社員として過ごしていた頃は、この弱者の戦略については全く考えたことがなかったのですが、、。
では自分なりの「弱者の戦略」はどのようなものか、自分ヒストリーも紐解きつつ、改めて言語化してみようではないか!という次第です。
これまでの弱者の戦略を思い出してみる
まず個人的な事例として、わたくしの今までの弱者の戦略を思い出してみます。
・アメリケ時代の生存戦略
小学校時代、アメリカで生きていくため、英語のできないわたくしが取った方法は、「記憶力でギャフンと言わせる」方式でした。
例えば、アメリカ50州を授業中にOHP(懐かしい!)で表示させて言い当てるクイズがあったのですが、地理好きのわたくしは全て暗記して、全部に手を挙げました。すると先生から「他に答えられる人はいないのかね、、」と呆れられ、おかげで一目置かれたわけです。他にも大統領を全部覚えるぞ方式とか、みんなが覚えなそうなものを暗記しまくって、ブラボー言われるスタイルでした。結構いい自信になって、その後のプロジェクトベースの課題とかも面白いもの作りまくって評価されたわけです。
・受験期の生存戦略
わりと勉強はできるタイプだったのですが、特に抜きん出ていたわけでもなく、地理や生物などマイナー科目に成績が偏ったタイプでした。やっぱりすげーやつにはなかなか追いつけないので、そこで取った方式は「一点突破スタイル」。
アメリケから戻って以降、英語はキープできるように結構頑張っていました。なので、とにかく英語を極めまくるために長文を書きまくってネイティブの先生に添削してもらったり、今で言うとスピードラーニング的にCDで(!)音源を再生しまくって書き取りしまくる方式を開発してやってました。おかげで受験はほぼ英語と小論だけで突破しましたね、、。
・デンマークでの生存戦略
30代で行ったデンマークでは、アジア人すら他にいなかったので、議論の際は東アジアの文化的、歴史的背景を踏まえた意見として表明することを初めのうちは心がけていました。(そのうち「自分の意見」に変えていきましたが)
パーティーなどでも日本的なもの、例えば英語落語などやることで、一躍学校の有名人になりましたね、、何なら、地域のレストランとか施設にも呼ばれたので、地域的有名人になりました、、。まあこれでコミュニケーションはかなりスムーズになったので、一度有名になっておくと後が楽、と言うことを実感できて、これはこれでよかったです。
こうやって見てみると、自分がマイノリティとしての立場に追い込まれると、特に戦略を練るイメージがありますな。自分自身の傾向としても、自分がマイノリティでいる方が楽しいと思えるタイプだというのもありますな。
造園業としての弱者の戦略
さて。そう考えると、わたくしが造園業を生業にしているのも、マイノリティ的に絶妙な「現れ」であると言えそうです。
まず、業界としてマイナーですね。そして、地域として山形庄内というマイナー性。マイナス×マイナスはプラス、マイナー×マイナーはメジャーなのです(なんのこっちゃ)
そもそも、「戦略」とは「戦いを略す」ことなので、業界としてマイナーであるゆえ、戦わない方法をすでに選んでいると言えます。すでに戦略的に業界を選んだというわけです!
業界的には外構業者、建設会社などもグリーンに関わることはあるのですが、そこまで手を出さない業者がほとんどなので、「植物」という括りになるとバリアを張られた状態で(特に地方では未だに)造園業は括られているので、棲み分けしやすいと言えばしやすいです。
ですが、近年では「ランドスケープ」という形で拡大解釈されるようになってきたので、他業種に脅かされる可能性は出てきていると解釈されます。ランドスケープを考えるプレイヤーや、建築領域などのプレイヤーが解釈を広げて全体デザインをしていくわけですからね。
造園業者もその拡大領域に食い込んでいく例は多々ありますが、特に地方の造園業者などは、それらの「下請け」となる公算が大きいわけです。地方の造園業者にその危機感はまるでないけどね、、。
一方、わたくしは建築や外構を広く「造園」と捉える機会が広がっている、と感じています。インドアグリーンの需要も広がっているので「インテリア」領域にも入り込めるので、むしろ中間領域でチャンスが広がっていると感じています。
わたくしは、現段階においては個人で動いているため、この曖昧領域をクリエイトすることこそが局地戦であると考えています。大規模な業者が行かないところに行くわけですが、要するにゲリラ戦を仕掛けるわけです。
大規模な造園業者が何をしているか?
大きな造園業者が何をしているかというと、例えば公共空間の植栽やメンテナンスみたいなものです。大きな木を植えたり街路樹を剪定(という名の伐採)をしているわけですが、これは人数をかけて短時間で一斉に攻め立てる戦法です。要するに土木工事的、総攻撃的なやり方ですね。
人数が多いと工期が短くて済みますし、大きく作土を動かしたり、岩を動かしたり、インターロッキングを敷くような「大きな仕事」が容易です。
また個人の仕事というのは、歴史的な意味での弱者、という面もあります。
いわゆる庭師のような職人の世界は、10代から修行をしているような人がザラなので、技術面で大きくビハインドを取っていることは否めません。
当然、技術的なアップデートは必要なのですが、「ここでは戦わない」ということは常に意識しておく必要があります。つまり、いわゆる日本庭園的な剪定などの伝統的な技術部分で勝負しない、ということです。
個人の造園業であることの優位性
では、ここでどんなゲリラ戦を仕掛けるのかと言うと、わたくしの場合、、
①デザインとしての「北欧」
②個別具体的カスタマイズ
この辺のことを考えています。
①デザイン面という意味では、自分の場合、北欧で学んだ経緯もあるので、資材や植栽の構成をガーデナー的なアプローチで考えています。特に草花類は、デザイン性を持ってやっているところは近隣にほぼないので、草花や資材にちょっとこだわった、個人宅向けの花壇や鉢植えに対してまず働きかけました。
ワードとして「北欧」は近年建築や家具では見かけますが、庭関係ではまず見かけないので、これは大いに打ち出している次第です。
もう少し広く庭などを手がける場合は、空間構成もよく考えます。
個人的に、庭は「何を植えるか」より「どう植えるか」が肝心だと思っているので、テキトーに植えている大規模業者とは、そこは大いに分けて考えていますな。
実際施工もするので、短期かつ容易に施工できる方法を考え続けています。例えば、アイアンの花壇などは、施工しやすい板厚や幅をトライし続けて、特に現場で曲げ加工がしやすい材料をみつけだしました。
②ゲリラ戦のポイントとなるのは、「個別具体的である」ということです。
お客さんと個別に話していると、その人の趣味趣向や考え方の傾向などがよくわかります。長期に作っていきたいのか、パッと仕上げて欲しいのか。どんな色が好きで、インテリアは何を使っているのか。どんな雑誌を読んで、休みの日は何をしているのか、、。
その辺を細かくリサーチして、個別にカスタマイズして作っていく。これはまさにゲリラ戦的なやり方であると思っております。
そういった意味で、個人のお客さんに具体的に会えるポップアップの物販というのはなかなか大事な機会であると言えるわけですな。
とにかく、弱者の戦略としては「自分をマイノリティ側に置く」ということで、そこから個別具体的にアタックしていくことが大事であると。何にしても、技術論に持っていかない!というのが肝要だと思っております。
ではでは!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?