病人レポート9 : 「自分で自分を産む」
前処置と言われる(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/hsct02.html)抗がん剤も昨日で最終日。今回は8日間の旅でした。もう何度このくだりをやってきたか知れないので、特に真新しさは無いのですが、相変わらず「毒を以て毒を制する」感じは、心身共に沁みます。。
粘膜をやられるので、水を飲むことも億劫になり、味覚障害により食の愉しみも皆無。。強い吐き気でどの姿勢を取っていても苦痛。。ただ「居る」ということが精一杯の時間が続きます。こうしてじわじわと「元気」と思っていた人間が「病人」にトランスフォームしていく。
友と語らい、お酒を飲み交わし、行きたいところへ行って、食べたいものを食べて、、ほんの少し前までそうやって「生きて」いたことが、遠い遠い昔のように思えて来ます。1滴の点滴ごとに、その元いた世界から1歩ずつ遠ざかっていくような。なんとも言えない焦燥感。そして毎度ながら、そんなことは無いと知っていつつも「もう今まで生きてきた場所には戻れない」のではないかという、一抹の不安もたびたびやってきます。
横幅2mほどの窓に映る景色は確かに今まで生きて来た世界を映し出しています。でも、そこに私という存在は重力を持って存在していない感覚を覚えるのです。
生きることの意味を考えます。忘れていた感情、封印してきたつもりだったいろいろな生々しい感情が襲ってくる時、こうまでしても生き延びることの意味を、思います。ここからドロップアウトしたらどうなるのか?と。何度も何度もその思いを巡らせては、自制しての繰り返しです。
そして今日、今晩、私は私をもう一度自分で産み落とします。泣いても喚いても、この時は静かにやってきます。同じ有るのなら、めいいっぱいそこに幸福感を感じて迎えたい。ドナーさんと力を合わせて、これでもう二度とここには戻ってこないこと、しっかり最後まで身体を治し切ることを、この身体に司令として出そうと思います。
みなさまからの熱い熱いお気持ちも、いつもとても近くに感じています。
新しいいのちの旅立ち。見守ってください。
2019.1.23
この太陽が沈む頃に。。。