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FMにおける、AM感。

ほぼ毎日ラジオを聴いている私だが、実際にチューニングを合わせているのは1局のみだ。それはFMの「J-WAVE(81.3)」。首都圏を放送区域としたラジオ局で、スタジオは港区の六本木ヒルズにある。

曲多め、洋楽多め、都会感あふれるこの局の中で、異色を放つ番組がピストン西沢さんの「GROOVE LINE」だ。この番組は月曜日から木曜日までの週4日、夕方4時半から2時間半にわたって放送されている。つまりオシャレな局であるはずのJ-WAVEのウィークデイのほとんどを、この「異色」が占めている。その「異色」の正体は、なんとも言えない「AM感」だ。お便りの内容をかなり誇張して読んだり、曲振りが雑だったり、リスナーとの電話を乱暴にぶった切ったり。数年前、「GROOVE LINE」を初めて聴いた私は、かなり戸惑ったのを覚えている。(「AMに失礼じゃないか!」という方、気を悪くなさったらすみません……)

しかし慣れてくると、あの感じがなぜか心地よくなってくる。仕事帰りに気分がモヤモヤしている時などは、タイムフリー機能を使って繰り返し聴くこともあった。それはまるで、疲れた時のキムチ鍋のような、自分の身体が自然と求める刺激のようなものだった。

一見テキトーで、雑に見えるピストンさんの番組進行だが、そこには熟練の技と、ラジオへの愛がある。以前、同局の「Jam the WORLD」(現在の「Jam the PLANET」の前身)で、パーソナリティの安田菜津紀さんがピストンさんをゲストに呼んだことがある。その中で、彼がラジオの存在意義やラジオの未来について熱く語ったのが印象的だった。(こんなに真面目なピストンさんの話を聴いたのは、これが初めてだった。「GROOVE LINE」を初めて聴いた時よりも、戸惑った。)最近はコロナ禍で、ラジオを聴く人が増えたらしいが、そんな今の私たちがラジオに求めているものを、あの頃から予見していたようだった。

FMにおける、あえてのAM感。J-WAVEが気取った局だと思っている方には、是非この番組を聴いていただきたい。開局30周年を超えるJ-WAVEの中で、「GROOVE LINE」は長者番組のひとつだ。FMラジオのオシャレ代表格であるJ-WAVEだが、実際にそれを支えているのは、オシャレなFMリスナーではなく、オシャレに憧れてJ-WAVEにチューニングを合わせながらも、結局「GROOVE LINE」のAM感に魅了されるリスナーたちなのだと思う。

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