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箸置き

最近は、箸置きを使う家庭というのは少ないのだろうか?

私の母は料理が得意ではなかったけれど、いつも食卓にきちんと箸置きを並べていた。お正月以外は、特に季節ごとに種類を変えるようなこともなく、焼き物か木の箸置きを使っていた。

そのせいもあって、私は今でも家で箸置きを使わないと落ち着かない。だから一人暮らしを始めた時に、お気に入りのうつわやさんで箸置きを買った。しかも、ひとつで充分なはずなのに、おかしな見栄を張って、同じデザインのものを色違いで2つ買ったのである。

ひとつは黄色、もうひとつは桃色。片方だけ使ってしまうと、もう片方が不憫である。それに、「もう片方」が使われるのを待っているということは、私自身もそれを使ってくれる人を待っているようで、なんだか不憫なのである。

結局、昼間の食事には桃色を使い、夕食には黄色を使うことに決めた。黄色は明るい日差しの色だから、暗い夜の食卓でも明るくしてくれる気がしたのだ。

ひとりのくせに、箸置きなんて古風なものを何故か2つも買った私は、今夜も明るい食卓で健やかにごはんを食べている。

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