蚊を連れ帰る日々
暖かくなってきてから、毎日帰宅時に家の中に蚊が入り込んでしまう。アパートの中庭に、かなり草が茂っているからだろう。
今日も玄関のドアを開けるなり、靴を脱いでいる私を追い越すように、2匹の蚊が入ってきた。なんだか急に体がむず痒くなる。左肘、左くるぶし、右手の甲……。はじめは気のせいかと思ったが、皮膚がぷっくりと膨れて赤みを帯びてきた。
視界の端をふわふわと飛んでいく2匹を恨めしく思いながら、虫刺されの薬を塗る。その後、洗面台の方についてきた1匹はしとめたのだけれど、潰した手のひらに血は見えなかった。となると、残る1匹が3ヶ所も刺したということなのか。
それからテレビを見ている間も、残った1匹は私の前を、左から右、右から左へと、ふわふわと飛んでいく。慎重に待ち続け、近づいてきたのを見計らって何度か仕留めようとしたけれど、うまくいかない。私の血をたらふく飲んで、身が重くなっているはずなのに、狙いを定めたとたん、やけに俊敏に逃げるのだ。
30分ほど経ち、キッチンの床にとまったところを叩くことには成功したが、ここでも血は見当たらなかった。私を刺したのは一体どの蚊なのか。実は外で他の蚊に刺されていて、連れ帰ったのはまた別の蚊だったのか。私は不要な殺生をしたのだろうか。いや、「予防」の観点から言えば有用だったはずた。いやいや、オスの蚊は吸血しないらしい。もしもこの2匹がオスだったなら……。
そんなことを考えたって、痒みはなかなかおさまらないし、41歳の1日目は過ぎていく。明日からは、中庭に入る前に虫除けを全身に振りかけようと思う。
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