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仕事帰りの「日比谷野音」

今週は疲れている。主に、仕事で疲れている。しかも、久々に、精神的に、だ。(決して人間関係によるものではないので、ご心配なく。)

こんな時は、振り切った方向に全力で進むしかない。自分で「非日常」を作り出すのだ。そう考えた私が今日の仕事帰りに向かったのは、日比谷公園だった。

「日比谷音楽祭2022」

日比谷公園で開催される音楽イベント。野外音楽堂で行われる3日間のライブは無料で観覧ができる。当日枠の抽選があると知り、昼休みに申し込んだところ当選したのだ。初日である今日の出演者は主に4組。しかも上演時間は1時間という詰め込みようだ。私の仕事は山積みだが、これはもう、行くしかない。

こんな時「東京に住んでいてよかった」と心から思う。日比谷公園は私の職場から徒歩15分だ。とはいえ、結局時間ギリギリまで残業してしまい、会場に入れたのは1曲目が終わったころだった。

——なぜ、もっと、本気で走らなかったんだろう。今考えれば、来週にまわしていい仕事もあったのに……。私が見逃した1曲目を演奏していたのは、奇妙礼太郎だった。

私にとって初めての「日比谷野音」、そして初めての奇妙礼太郎の生演奏。それらを現実として受け止める間もなく、またたくまにライブは終わってしまった。

「野音のステージの後ろにはビルが見えるんだな」とか、「野音にはやっぱり雨が似合うんだな」とか、「もっともっと、ちゃんと身体の中に音楽をとどめておきたかったな」とか、そういういくつかの、気持ちの断片を抱えたまま、私は夜の日比谷公園をぐるぐると歩いた。

一度は地下鉄の駅に向かったものの、なんだか名残惜しくなって踵を返す。と、信号待ちをしている可愛らしい車が目に止まった。運転席にいたのは紛れもなく、”風変わりな”彼だった。

夜の国会通りに消えていくミニクーパーの後ろ姿を、私は夢見るような気持ちで見送った。

また近々、ライブ会場でお目にかかりたい。

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