Post-it! 気になる一曲 『Suite 2 - Menuet I, II』

アルバム『CELLO SUITES 1. 2. 3』より
清水 靖晃
1996年



二度目の人身事故だ。
ホームに溢れかえった人人人…
ようやく到着した車両からもオーバーフローする人人…
2台続けて車両を見送ったら帰宅する気が失せた。駅を抜け出して商店街にエスケープする。金曜の夜、商店街も人で溢れていた。

雑踏の隙間から憶えのある音が耳に飛び込んできた。サックスだな。ああ、バッハだ。
バッハとサックス —— この組み合わせに衝撃を受け、何年も前に私はCDを買ったのだっだ。

久しぶりに聞いたサックスのバッハは喧騒を吸着して音の周囲30cmがしんと静かだった。選挙演説のがなり声も、行き交うひとの騒めきも一瞬にして後退した。
家でCDを聴き直し、香り高きメヌエットに惹きつけられた。しかしあの喧騒で聞いたバッハが忘れられず、何度も思い出している。