#17 非経口薬が凍結乾燥されるときに大切なのが共晶温度だった
〈訳〉非経口薬の凍結乾燥製品に関する以下の記述は1つを除いて全て正しい。間違っているものは;
a. 熱に不安定な材料の活動の損失は最小限である。
b.液体は共晶温度以下に凍結する必要がある。
c.溶質は通常、アモルファスガラスを形成する。
d.共晶温度は薬液の凝固点である。
e.水は昇華によって凍結混合物から除去される。
〈答え〉d.
〈解説〉
Lyophilization = 凍結乾燥
*lyophilized powder = 凍結乾燥させた粉末
Point1. Euthectic tempreture 共晶温度とは
薬学を学んでいる人なら必ず1度は聞いたことがあり、そして頭を悩ませたことがある人は一体何人いるでしょうか...ここは、試験が終わったらすぐに忘れてしまう分野であろう(笑)物理化学の分野ですよね。
共晶温度を考える上で大切なのは、
1.温度と濃度
2.2つの物質が混ざっている
3.液体が固体になる時の温度
ということ。
Point2. 日常での共晶現象を考える
日常にある場合を考えた良い例を見つけました。
〈参照〉http://www3.muroran-it.ac.jp/hydrogen/lec/intromat_09_12.pdf
水と塩です。例えば、極端な話をすると水90%、塩10%の塩水の場合、は常温(15℃)ではほとんど液体です。これを0℃のところに持っていくと、水90%は氷(固体)になり、塩水も少し凍り始めます。
水10%、塩90%の場合は、NaClは飽和状態になるため、常温でも塩はNaClで結晶状態です。でも、温度を下げていくと水も氷になっていくし、塩水(液体)も固体へと変わっていきます。
しかし、これらはある温度に達するとすべて固体になります。
この温度が共晶温度、または共融点とも呼ばれます。塩化ナトリウム22.4%と氷77.6%の混合物の場合は、融点が−21.2℃で固体へと変化します。
Point3. 研究の世界での共晶温度の重要性
今回、この問題を解いていて薬学の世界でとても共晶温度が大切であることを思い出すことがありました。
私はもともと薬学部卒業後、研究の道に進みました。そこで、色々な試薬を扱うことがありました。試薬を受け取る際は、使用する薬品は、凍結保存で、粉末状態で到着することが多いのですが、これらを使用する場合に、何の溶媒に溶かすべきかを確認する必要があります。
もともと2つ以上の液体だったものを、凍結乾燥させて郵送しているわけです。
a. 熱に不安定な材料の活動の損失は最小限である。
b.液体は共晶温度以下に凍結する必要がある。
e.水は昇華によって凍結混合物から除去される。
これら3つの回答は、正いことがわかります。
これらが成り立った上で、凍結乾燥して送られてきていたのだなと実感しました。
Point4. アモルファスについて
c.溶質は通常、アモルファスガラスを形成する。
morphousとは、固有の結晶状態を示し、純物質は通常morphousです。しかし、急速に冷凍された場合や、不純物が混じった状態では通常の規則的な結晶ができず、アモルファス(amorphous)、あるいは非晶質(non-crystalline)となります。
溶質とは、液体(溶媒)に溶けている物質のこと。
研究で扱う試薬でも”純度”についてのレポートは必ずあります。それは99%に近いのが当たり前でしたが、実際に凍結乾燥する過程では色々な問題が出てくるのだろうなということも今回の問題を解いてみて良い振り返りになりました。
Point5. 凝固点とは
d.共晶温度は薬液の凝固点である。
凝固点とは、液体が固体になる温度のことですが、今までの話で共晶温度が単純な凝固点ではないことが分かります。
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