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血液をサラサラにするお薬のメカニズム〜抗凝固薬・抗血小板薬

どこか怪我をしたら血が出ますが、それはずっとさらさらと、流れ続けると出血多量になってしまいますよね。

でも、そうではない。なぜそうならないのか?それは、血液が固まるからです。

これは、身体に備わる素晴らしいシステムだと思います。なので、このシステムにちょっと不備が生じると、薬で調整しなければならなくなります。

1.血液凝固を英語でなんという?

まずは、英単語について.

Co・agu・u・la・tion
【意味】凝固、凝析、凝結、凝固物

Ex.
Coagulation point:凝固
Coagulation time:凝固時間
Coagulation factor:凝固因子 など

■Advanced:上級編■
Diagnose coagulation abnormalities: 凝固異常の診断
anticoagulation therapy:抗凝固療法


2.Coagulation cascade 血液凝固反応について

血液凝固反応のことは、Coagulation cascadeといいます。体内で様々な反応が次々と起こっていく反応がありますがそういうのをCascadeと呼びます。これはカナカナ英語としても医療でよく出てきます。

では、今回のテーマである血液凝固が起こる過程について。

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大きく分けて
Step1:①Intrinsic内因系と②Extrinsic外因系の2つがあります。
Step2:Thrombin production:トロンビン産生が起こり、
Step3:Fibrin production:フィブリン産生となる。

ThrombinがFibrin monomersを産生することで、これが血小板の活性をします。血小板は血液を固める作用を持つので、ここで最終的な Clot:凝固が起こるという仕組みです。

3.Coagulation test:血液凝固試験について

Diagnose coagulation abnormalities:凝固状態の診断や、anticoagulation therapy:抗凝固治療をしていく上で大切なCoagulation test:凝固試験について。

Prothrombin Time:プロトロンビン時間を図るということは、How long it takes blood to clot? (血液が固まるまでにどのくらいかかる?)を調べることです。
代表的な薬として、血液をサラサラにするための薬としてWalfarin ワルファリンがありますが、これを飲んで、どのくらい血液のサラサラ具合に影響しているのか?を調べて薬の用量を調節したり、効き目を判断する基準とします。
この方法には2つの方法があり、INRと呼ばれるものと、単純にPTと呼ばれるものがあります。

3-1.Prothrombin time-international normalized ratio (PT-INR;INR)
プロトロンビン時間-国際標準化比 

これは、World Health Organization;WHOが指針とした国際標準比です。
プロトロンビン時間を比率 ratioで現すもの。

【Range】0.80~1.20(healthy)
【Target 】2.0~3.0
【How?】Use specimen's plasma PT and control plasma PT.
【Recommended】Warfarin:ワルファリン

INRがTargetよりも高い⇒凝固しやすい[固まるのが早い]
INRがTargetよりも低い⇒凝固しにくい[固まるのが遅い]

3−2.Prothrombin time (PT):プロトロンビン時間 

これは、同じくプロトロンビン時間ですが、sec:秒で現すもの。

【Range】10-14sec
【What is this?】How long it takes blood to clot? (血液が固まるまでにどのくらいかかる?)
【How】Time required fo blood to clot using the reagent(試薬を使用た際の、血液凝固するまでの時間を測定)

PT (sec)短い場合⇒凝固しやすい[固まるのが早い]
PT (sec)長い場合⇒凝固しにくい[固まるのが遅い]

3-3.Activated partial thromboplastin time (aPTT)

【Range】20-39sec
【How?】functional measure of intrinsic and commom pathways of coagulation cascade(内因性経路と通常(Thrombin&Fibrin production)経路の機能測定)
【Recommended】UFH therapy:未分画ヘパリン療法

4.Anticoagulant 抗凝固薬について

抗凝固薬は、日本語でも血液をサラサラにするお薬、と言われたりしますが、英語でもBlood thinning drug ともよばれます。

4-1.Injection 注射薬

注射薬には2種類あり、Unfractionated Heparin 未分画ヘパリンと、Low molecular Weight Heparin 低分子ヘパリンがあります。

4-2.Oral 経口薬

昔から使われていて、実績がある凝固系を働かせる上で欠かせないビタミンであるビタミンKの働きを邪魔するアンタゴニストであるWalfarin ワルファリン(Coumadin®、ワーファリン®/ワルファリンK®)が有名です。

近年、ビタミンKに作用しないnon-vitamin K antagonist oral anticoalulants;NOACと呼ばれる新しいタイプの経口薬が出ていますが、これらは、血液を固める時に重要な役割を果たすThrombin トロンビンの生成に関わる第Ⅹa因子(10因子)を阻害することで、血液を固まりにくくします。これは、カナダと日本で発音は違えど、商品名は同じです!こうやって統一してくれると本当にありがたい。
Dabigatran ダビガトラン(Pradaxa®、プラザキサ®)、Rivaroxaban リバーロキサバン(Xarelto®、イグザレルト®)、Apixiban アピキサバン(Eliquis ®、エリキュース®) Edoxiban エドキサバン(Lixiana®、リクシアナ®)など。

4-3.Antiplatelates 抗血小板薬

①解熱鎮痛薬のNSAIDsの代表格でもありながら、抗血小板作用も持ち合わせるAcetylsalicylic Acid  アセチルサリチル酸(Aspirin®、アスピリン®/バイアスピリン®)。アスピリンはCOXを阻害することで、血液凝集を起こすとされるトロンボキサンA2(TXA2)の生成を阻害するために、血液をさらさらにする作用である抗血小板作用を持つとされます。

②血小板凝集の促進に関わるPhosphodiesterase ホスホジエステラーゼを阻害するDipyridamol ジピリダモール(Persantine®、ペルサンチン®)

③血小板のADP受容体であるP2Y12受容体を阻害して、血小板の凝集を抑えるチエノピリジン系と呼ばれるTiclopidine チクロピジン(Ticlid®、パナルジン®)とClopidogrel クロピドグレル(Plavix®、プラビックス®)

④そして、日本では2017年に承認されている、血小板のADP受容体であるP2Y12受容体を直接的で可逆的に阻害するTicagrelor チカグレロル (Brilinta®、ブリリンタ®)があります。


5.最後に

心疾患の際には必ずと言っていいほど、血液凝固の分野は出てきます。
薬剤師として、知って置かなければ行けない知識もたくさん。これからも日々勉強を続けてコツコツと頑張ります。


参考

INRについての分かりやすいサイト
抗凝固薬について(名古屋徳洲会総合病院)
ADP阻害薬の作用機序
ジピリダモールの解説


*この記事は、私が日々勉強する中で得ている知識を元に書いています。事実に基づいた作成を心がけているつもりですが、一部で間違いがあったりする可能性もあります。ご了承下さい。


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