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貧血と赤血球の関係を詳しく解説!

赤血球は、私達の体内に酸素を届けてくれるとっても大切な役割をしています。
血液検査でも必ずと言っていいほど項目で出てきます。でも、一体これってそれぞれ何を意味するの?

これについて、お話していきます。

1.赤血球数 Red blood cells :RBCs

【What?】 
赤血球はbone marrow(骨髄)で産生される。
 ・血液中の赤血球の数を数えるもの
・RBCsの検査により、anemia(貧血)、calculation of RBC indices(赤血球指数算数)、hematocrit(ヘマトクリット)を調べるのに使用される。【Role】Transport oxygen to tissues(酸素を各組織に運ぶ)
【Range】male:4.3〜5.9×10^12/L(430万~590万個)
     female:3.5〜5.0×10^12/L(350万〜500万個)

2.ヘマトクリット Hema・tocrit

【What?】血液全体に占める赤血球の容積比率(%)
【How?】凝固剤(血液を固まらないようにする薬剤)を入れたヘマトクリット管に血液を入れて、専用の遠心機を使用して沈殿させる。
【Range】male:39~49%
     female:33~43%

3.ヘモグロビン Hemo・globin

【What?】全血液中のヘモグロビン値
Iron(鉄)を含む色素:Hemタンパク質:globinが結合した化合物
【Role】Iron(鉄)を含む色素:Hemタンパク質:globinが結合した化合物
【Range】male:140~180 g/L 
     female:120~160 g/L

4.MCV、MCH,MCHCの違いは?

4-1.平均赤血球容積:Mean corpuscular volume :MCV

【What?】measure of the average RBC volume(RBCの平均的な容積の指数)
【How?】Hematocrit 値(%)×10 / 赤血球数(10^6 /μL) ×で求める(μm^3)【Role】これにより、次の各分類での貧血に分けられる
MCV<80  :micro・cytic 小球性→microcytic anemia
80<MCV<100:normo・cytic 正球性→normocytic anemia
100<MCV  :macro・cytic 大球性→macrocytic anemia

例) RBCs 4×10^6、Hb 12 g/dL 、Ht 40%
MCV = Ht × 10 / RBCs = 40 (%) ×10 / 4 =100 (fL)

4-2.Mean corpuscular hemoglobin(MCH):平均赤血球ヘモグロビン量

【What?】average mass of hemoglobin per RBC in a blood sample(赤血球1個あたりのヘモグロビン値)
【How?】Hemoglobin値÷赤血球数で求める(pg)
【Role】これにより、次の各分類での貧血に分けられるが、MCVと同様の動きをするので、あまり用いられない

4-3.MCH Concentration(MCHC):平均赤血球ヘモグロビン濃度

【What?】measure of the concentration of hemoglobin in a given volume of packed RBC(赤血球1個あたりのヘモグロビン値)
【How?】Hemoglobin (g/100mL)×100 / Hematocrit(%)で求める(%)【Role】これにより、次の各分類での貧血に分けられる。
MCHC<30:hypo・chromic 低色素性→hypo chromic anemia
31<MCHC<35:normo・chromia 正色素性→normochromic anemia
*MHCHが35以上高くなるのは特別な場合のみ

例) RBCs 4×10^6、Hb 12 g/dL 、Ht 40%
⇒MCHC = Hb×100 / Hc = 12 ×100 / 40 = 30

5.貧血の種類について

貧血は、英語でAnemia と言いますが、実は種類はたくさんあります。

大きく分けて、2つあります。

5-1.鉄欠乏性貧血

1つは、血液中で大切なヘモグロビン(Hb)の材料であるIron 鉄分が不足する場合。この貧血をIron-deficiency Anemia 鉄欠乏性貧血といいます。

Hemは色素だと言いましたが、この赤い色素を作り出すのに大切なのが鉄分なのですが、この鉄が何らかの影響で不足してしまうと、正常な赤血球と比べて、色が薄い赤血球が現れます。また、鉄分がないと、ヘモグロビンが作られなくなってしまうので、大切な赤血球も上手に作られなくて大きさも小さくなっていってしまいます。

赤血球は体中に酸素をは運んでくれているので、鉄欠乏性貧血になると、身体が酸素不足の状態になり、様々な症状が現れてきます。

5−2.巨赤芽性貧血

もう1つは、赤血球の成長に関わるVitamin 12 ビタミンV12や、Folic Acid 葉酸が不足する場合。この貧血をMegaloblastic Anemia 巨赤芽球性貧血といいます。通常の赤血球数よりも数が減るので、こちらも酸素を運んでくれるはずの赤血球がいなくなり、酸素不足の状態になります。

ここでは、赤血球がどのようにして出来るのか?について改めて復習したいと思います。細胞は、造血幹細胞が赤芽球となり、葉酸、ビタミンB12、Intrinsic factor 内因子(胃)、Erythropoietin;EPO エリスロポエチン(腎臓)などの造血因子によって調整を受け、脱核(核が抜けること)が起こり、最終的に赤血球になるのです。が、葉酸やビタミン12が不足すると、成熟がうまくいかずにDNA合成が障害されてしまい、細胞の分裂や核の成熟に異常が起こって、細胞核・細胞質が共に大きな赤芽球=巨赤芽球ができます。

日本では巨赤芽球が発生する97%はビタミンB12の欠乏で、2%が葉酸の欠乏とされているようです。

ビタミン12欠乏性の巨赤芽性貧血は、胃の内因子の不足によっても起こります。内因子が不足すると、ビタミンB12は身体に吸収されないのです。この、内因子の欠乏が原因の場合を特にpernicious anemia 悪性貧血と呼びます。
ビタミンB12の吸収を調べるためのテストがSchilling test シリング試験と呼ばれるものです。

葉酸欠乏性の巨赤芽球性貧血は、葉酸の不足なのですが、通常サプリメントで摂取する場合Folic Acidと呼びます。しかし、赤血球を生成する場合には、Folate 葉酸塩と呼びます。慢性のアルコール中毒などの場合には、葉酸の吸収に影響が出ている可能性があるそうです。

5-3.Shilling test:ビタミンB12が原因の貧血を調べるための試験

Shilling testは、今ではほとんど使われていない方法ですが、ビタミンB12が内因子によって吸収されているかどうかを調べるための試験です。この試験によって、胃内で内因子が産生されているかどうかが分かります。

今では適切な治療法が確率していますが、過去には悪性貧血は治療が難しかったので、診断のためにこの試験が使われていたようです。

Stage1:ビタミンB12を2種類摂取します。1つは液状のビタミンB12で、放射標識されていて、尿中に出てくると検出可能です。もう1つは注射で、1時間後に打ちます。24時間中の尿を採取して、尿中のビタミンB12を測定してビタミンB12の吸収を測ります。


Stage 2:次に、放射標識されたビタミンB12の錠剤を内因子と共に摂取しする。このステージにより、ビタミンB12のレベルが低いのは内因子の欠如によるものかどうかを調べます。Stage 1と同様に、24時間中の尿を摂取し、この試験で正常であれば、内因子欠乏によるものであることが分かり、悪性貧血と診断できます。


Stage 3:ここでは、ビタミンB12のレベルが低いのは微生物によるものである可能性を探るために、2週間抗生物質を摂取します。2週間後に放射標識されたビタミンB12を摂取して、24時間の尿サンプルから原因を探ります。


Stage 4:ここでは、膵臓が原因である可能性を探ります。代表的な膵酵素を3日間摂取し、もう一度放射標識されたビタミンB12を摂取します。そして、今までと同様に24時間の尿サンプルから原因を探ります。


■医学英語ポイント■

hypo-【意味】低〜
Ex. Hypo・chromic:色素性、Hypo・glycemia:血糖症、Hy・pox・ia:酸素症

normo-
【意味】正~、正常
Ex.Normo・Chromic:色素性、nor・mox・ia:酸素正常状態、normo・blast:正赤芽球

hyper-
【意味】高〜、過〜
Ex. Hyper・ox・ia:酸素症、hyper・acid:酸症、胃酸過多


参考:
ドクターズ・ファイル『貧血』
Healthline_Anemia
Healthline_Shilling Test
MCVとMCHCの試験


*この記事は、私が日々勉強する中で得ている知識を元に書いています。事実に基づいた作成を心がけているつもりですが、一部で間違いがあったりする可能性もあります。ご了承下さい。


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