キオクノート #12 やめるまでの時間
書こう書こうと思いながら前回から独立までの記憶が定着していないのか何から書けばわからないまま2ヶ月立ってしまいました。
ひとつづつ思い出したらメモっとかないと、こうやってパソコンに向かってもスマホを構えても文って書けなくなってきました、歳かな。
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さて、独立しようと思ってからまず手を付けたのは普段使っている道具のチェックでした。
厨房での仕事は主に仕込みと営業中=調理して仕上げる、に分かれると思いますが、自分が想定している独立後の店の規模と料理を想定しつつ今働いている店にある道具を取捨選択していくのです。
例えば、ペッパーミル=こしょう挽きなんかでも、今の店は広いから各持ち場に一つづつだけど自分の店では大きめ一つでいいかなとか、鍋も材質とサイズと数までメモに書き出してチェックしていました、ぼくは。
提供したい料理のイメージもあったので近いスタイルのお店に足を運び、見える範囲の道具を片っ端からメモです。
当時はまだ携帯電話で写真が取れる時代ではなかったのでひたすらメモ。
厨房のおおきな機器も自分なら火口は3個だなとかアイスクリームマシンはどうするかまで考えていました。
ただ、この時には予算に関しては全く考えておらず、あくまで必要かどうかのメモだったんですね。
このメモだけで小さなメモ一冊になりました。
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そして、料理ばっかりやっていたぼくはお金の計算は大の苦手だったので、お店でうごくお金の流れとそれの記帳の仕方、税金の話など、経営の部分も意識的にオーナーなどに聞いて勉強するようになりました。
これはいわゆるどんぶり勘定する料理人って多いんですが、一回もここに触らずに独立してしまうと大変だと思うので、ぼくは後輩が相談に来たときには口を酸っぱくして伝えるようにしています。
やりたい事業をするのに必要なお金を全額貯めて用意するなんて言うのは全然現実的ではないというのは当時からわかっていたので、お金の借り方や小さな店の作り方みたいな本もたくさん読みました。
こういうようなことを日々の業務と並行してやって、休日は他店に勉強というのを繰り返していきました。
そしてこの日々の業務というのも非常にハードで、記憶があいまいな原因かもしれないけど、なにしろ仕事は料理長。
スタッフはほぼ未経験、ホールスタッフもアルバイト、頼れる先輩も数人だけで自分の仕事で手一杯と毎日体と頭フル回転でした。
スタッフにも強く当たり、辞めていった人も多数、オーナーにも意見して困らせ本当に申し訳ないと思ってます、そして店を辞めたいと思ってると相談してから実際辞めるまで1年半かかりました。
当時も今も飲食業界の人不足はかわらないと今は冷静に思えるけど、当時は早く早くと自分のストーリーを進めたくてウズウズしてましたね。
誰もが用意周到に独立を迎えるわけじゃないと思います、特に飲食店開業についてはいろんな人を見てきたのでそう言えます。
ぼくの場合はこうやってシュミレーションをずっとやって、いつか来るオープンの日を夢見ながらそれをモチベーションにしてテンション上げて、日々仕事に望んでました。
良かった、書いていたら当時の気持ちを思い出した。
と同時に、この若さでは経験が足りてないんじゃないか?もう一軒くらい修行に出たほうが良いんじゃないか?というモヤモヤもあり、今思えば辞めるまでの1年半はその問の答えを出すのに十分な時間だと思えます。
そして独立を迎えるにあたり、舞台は大阪に移ります。
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