ジェフ・ベック『エンジェル』

ジェフ・ベックと云えば「3大ギタリスト」「世界最高のエレクトリック・ギタリスト」「ロック・ギターの最高峰」等など、つまり楽器奏者としての側面で語られることが多い。勿論その通りなのだから問題はないのだが、本当は音楽の発明家として、改革者として語られるべき偉人なのだという事実が忘れられがちなのだとすれば、それはとても残念なことだ。

 ヤードバーズではサイケデリック音楽を発明してあのジミ・ヘンドリックスにすら影響を与え、『トゥルース』ではハード・ロックを編み出してレッド・ツェッペリンを世に導いた。『ラフ・アンド・レディ』からは、10年後にはあたりまえになるソウルとロックの融合をいち早く実践し、『ブロウ・バイ・ブロウ』では世界にクロスオーヴァー/フュージョン・ブームを巻き起こした。

 こういう趣旨でジェフ・ベック評論を展開したのは渋谷陽一だけだったんじゃないか。

 ハイドン、モーツァルト、マイルス・デイヴィス、ザ・ビートルズに匹敵する改革者なのだ。それでいて自身は、ただただ演奏への衝動だけでシーンを生き抜いた。

 『エンジェル・フットステップス』はもう20年も前のアルバムの収録曲だけど、彼の長いキャリアからすれば新しい方だ。
 21世紀になってから出たライブ音源や映像では必ずハイライトとなっていた。この曲に限らず、旧作の偉業やノスタルジーに頼る必要なく仕事ができる人だった。

 ジェフ・ベックのファンは男性が多い。
きっと皆んな、その生きざまにあこがれたのだ。僕もそうだ。

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