グラフ_令和元年の成立法案

今日本に「保守二大政党制」が必要な理由ーー国会の“全会一致”の慣例を逆手に取るべし

 今の日本には保守系の野党が必要である。出来れば、最大野党が保守政党でなければならない。

 私は今の自民党はもはや左翼政党であると認識しているが(流石に共産党や立憲民主党よりかは右だとは思うが)、仮に自民党を支持している保守派の皆様も、保守系野党の存在には賛成してもらわなければ困る。

 というのも、日本の国会には「全会一致」の慣例があるからである。

「与党のみ賛成」の法律は4%しか存在しない

 日本の国会がどれだけ全会一致主義か、昨年の国会で成立した法律の審議情報をすべてチェックして検証してみた。衆議院では会派ごとの賛否情報が公開されている。それに基づきグラフ化したのがこの図だ。

グラフ 令和元年の成立法案

 具体的な数値で見ると、昨年成立した95件の法律がどのように採択されたかの内訳は、次のようになる。

全会一致   45件
共産のみ反対 18件
一部野党反対 15件
一部野党賛成 13件
与党のみ賛成 4件

 全会一致率は47%であり、半数近い。また「共産のみ反対」(共産以外全会一致)を加えると66%が全会一致である。

 日本共産党は他の政党とは大きく異なる組織である。一例をあげると、靖国神社参拝の是非ならば自民党内でも意見は分かれているが、伊勢神宮参拝を否定しているのは共産党だけである。(同じ左翼政党でも立憲民主党は伊勢神宮に集団参拝しているし、また「神祇不拝」の創価学会を支持母体とする公明党も他の政党の政治家・閣僚が伊勢神宮に参拝することを批判したりはしない。)

 つまり、政策レベルではなく根本的な感性・思想や事実認識のレベルにおいて、日本共産党は他の政党と大きく異なるのである。そのような日本共産党のみが反対している状況は、事実上の全会一致と見做して構わない。

 なお、「一部野党反対」と「一部野党賛成」の基準について説明する。

 「一部野党反対」とは、共産党以外の会派で一つだけ反対する会派があったケースであり、「一部野党賛成」とは、共産党以外の会派で複数の野党会派が反対しているが、一方で賛成している野党会派もあったケースである。

(※令和元年後半から立民・国民・社民の統一会派が出来ているが、実態に即してこれは「複数」にカウントしている。)

 実際には、非共産の野党会派が複数反対している状況は殆どない。つまり、「全会一致」「共産以外全会一致」「一部野党反対」の合計は82%なのである。

 一方、「与党のみ賛成」で成立した法律は4%のみ。非共産の野党会派複数が反対している「一部野党賛成」を含めても14%で、非共産の野党会派の殆どは成立した法律に賛成している。

野党についての「思い込み」から脱却すべき

 ちなみに、野党について我々はかなり「思い込み」を持っている面がある。

 例えば、「日本維新の会は安倍政権の別動隊」だとか「立憲民主党は何でも反対」だとか。実際にデータを見るとそれは全くの勘違いであることが判る。

 実際には、「一部野党反対」で最も多かったケースは「日本維新の会のみが反対」である。中には共産党が賛成している法律であっても、唯一日本維新の会だけが反対しているケースも複数あった。

 ちなみに、昨年において自民党から共産党まで賛成している法律に反対したことのある会派は、日本維新の会だけである。

 逆に「一部野党反対」の法律は全て立憲民主党が賛成している。昨年のデータを見た限りでは、立憲民主党が単独で反対に回っているケースは皆無なのだ。

 最大野党の割には、自分たち単独で政府の法律に反対したことがないとは、情けない状態である。もっとも、他の非共産の野党会派が反対に回っている時に一緒に反対に回ったケースはあるが、言い換えると他の非共産の野党会派よりも自民党に近い訳だ。

 私はかねがね立憲民主党は自民党の別働体であると指摘してきたが、国会採決の結果は私の主張を裏付けていると言えるだろう。

 驚いたのは、報道でも「近い関係」と見做されている野党同士が見事に「分裂」しているケースもある、ということである。だいたい、我々は野党について次のようにグループ分けしていたはずである。

<比較的右寄り>日本維新の会、希望の党
<旧民主党たち>立憲民主党、国民民主党
<完璧左翼政党>日本共産党、社会民主党

 ところが、「金融早期健全化法改正案」の採決では野党会派の賛否は次のように別れた。

賛成・・・立憲民主党・無所属フォーラム; 社会保障を立て直す国民会議; 希望の党; 未来日本

反対・・・国民民主党・無所属クラブ; 日本共産党; 日本維新の会; 社会民主党・市民連合

 国民民主党が反対している法案に立憲民主党が賛成しているのは「やっぱり、立民党は安倍政権の補完勢力だな」という心証を裏付けるものでしかないが、その上、日本維新の会が反対に回って希望の党が賛成に回っているのも興味深い現象だ。

 社民党が共産党と足並みをそろえているのは「左翼同士仲間だからね」と解釈できるが、国民民主党と日本維新の会は立憲民主党よりかは右側の政党である。このケースは、政党の法律への賛否は思想の左右だけは決まらないことを示している。

それならどうして「全会一致」が多いのか

 そうすると、野党会派は与党に対してかなり「是々非々」の態度をとっていることが判る。思想が似ている政党であっても対応が分かれるということは、政党ごとに自主的に賛否を判断していると考えられる。

 ならば、どうして「全会一致」の法律案が多いのか。

 言うまでもない。与党が(というか、国会事務局や官僚たちが)根回しを行ったうえ、予め野党も賛成してくれそうな法案を提出しているからである。

 特に、最大野党である立憲民主党が単独で反対した法案が成立した例は皆無であるという事実から、与党は立憲民主党への根回しを重点的に行っていると言えるだろう。

 日本人は調和を重んじる気質がある。また、日本に限らず議会制民主主義を採用している国では全会一致を理想視する例が多い。それは今の我が国の政界も例外ではないようである。

 しかしながら、これを「理想が守られていて良いこと」とは、言えない。

 何しろ、仮に自民党が保守だとしても(無論、私はそうは思っていないが)最大野党が左派ならば政府は左派に妥協した法案ばかりを提出するということである。

 そして、現在、最大野党の立憲民主党は左翼勢力である。つまり、本来の自民党よりも“左寄り”の法案が次々と成立しているのである。

保守二大政党制の樹立が必要である

 与党が最大野党に妥協するということは、裏返せば最大野党が保守派であれば保守派に妥協した法律が成立するケースが多くなる、ということである。

 無論、与党も最大野党もどちらも保守派であることが最も望ましい。そういう状態を保守二大政党制と言う。

 保守派であるならば、自民党への評価に関係なく保守二大政党制に反対する理由はないはずだ。

 仮に自民党が保守であるにしても、最大野党が左翼であれば左翼に妥協しないといけなくなる。一方、最大野党が保守であるならば自民党が本来の保守政党としての真価を発揮できる。

 また、自民党が左翼であったとしても、最大野党が保守であると左翼的な法律制定への一定の抑止力となる。

 つまり、自民党への評価に関係なく保守系野党が必要なのである。

 現時点では国民民主党と日本維新の会、希望の党の三党が、立憲民主党よりかは右側であると評価できる。

 しかし、この三党の議席をすべて合計しても52議席。対して、立憲民主党の議席数は57議席であり、仮に三党が合流しても最大野党にはなれない。現実には国民民主党と日本維新の会の中にも左派が少なからずいるし、この両党が合流する見込みも薄いため、保守二大政党制には程遠い状況だ。

 選挙で保守系野党候補が躍進すると状況は変わるが、それでも保守二大政党制と言える状況に持っていくためには、前回の衆院選以上に保守系野党候補に大きな風が吹かなければならない。前回衆院選における希望の党への異常な逆風を見ると、それを期待できる状況にはない。

 だが、そのような世論でない限りは“日本の左傾化”は留まることを知らないであろう。

 一刻も早い保守二大政党制樹立のために、世論を動かしていかなければならない。

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