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薄熙来先生の義母・範承秀氏逝去報道に見る中国の”君主政体”化

 私の尊敬する中国の政治家である薄熙来先生の妻・谷開来氏の母親である範承秀氏が昨年12月に99歳で逝去された。

 中国共産党には戦前から入党しており、党員歴は80年以上。

 歴史を学ぶと粛清に次ぐ粛清の中国史にも、このような「長寿」の政治活動家が多数登場する。逆に日本人は粛清などされないのに政治活動をしなくなる。これが中華と東夷の違いである。

 範承秀氏が亡くなられた時、娘の谷開来氏は刑務所の中であった。イギリス人男性を殺した容疑だと言うのであるが、どこまで本当の話なのか。

 中国における有罪判決を信じるのは、日本で言うと小沢一郎先生が有罪だと信じるようなものである。って、信じている日本人は多いか。これだから東夷の国は・・・いや、これぐらいにしておこう。

 薄熙来先生も無期懲役で服役中だ。容疑には収賄や職権濫用も含まれているが、検察側証人が薄熙来先生の関与を否定するなど、かなり杜撰な容疑であった。典型的な国策捜査である。

 だが、日本も中国も国策捜査をするところは一緒であるが、興味深いことに同じ国策捜査でも君主国の日本が「共和政体の論理」であるのに対して、共和国の中国が「君主政体の論理」であるということを発見した。

 共和国においては「平等」が求められる。「平等」と言うと聞こえはいいが、それは刑罰によって貴人の名誉を剥奪することに繋がる。

 共和国の国策捜査は「人格破壊」(character assassination)の一環である。人格破壊こそが目的なのであって、刑罰はそのための手段に過ぎない。

 韓国では元大統領への激しい人格破壊が行われる。朴槿恵前大統領への国策捜査は酷いものであった。

 君主国においては、国策捜査の際にも「必要以上に相手の名誉を傷つけてはいけない」と言う自制心が働く。それを怠ると、必要以上に名誉を傷つけられた者は「怨霊」となって国家に災いを齎す。

 「怨霊」と言うとオカルトだと思われるが、要は「子孫」のことである。

 菅原道真公への国策捜査は冤罪であることが明白であった。時の天皇は自分の父親である上皇を幽閉した上で(上皇が認めるはずがなかったから)、無実の菅原道真を裁判にかけず(当たり前だ、裁判で有罪にできる証拠などない)大宰府へと左遷した。表向きは「天皇の恩恵により起訴すべきことを不起訴にし、左遷とした」と言う形で。

 だが、それでも菅原道真公の「名誉」を傷つける分には充分であった。その後、国策捜査に関与した人たちが雷で死ぬなどしたため、朝廷は菅原道真公の名誉回復を行って神として祀り、その子孫も貴族として遇した。

 これは古代の話ではなく、イギリスでは近代に入っても司法権を貴族院が有していた。貴族や政治家に対して庶民は過酷な刑罰を科す傾向があり、それを防いで彼らの名誉を守るための措置である。

 今の日本はそのような「君主政体の知恵」は、無い。

 何しろ、冤罪かもしれない夫の言動で立憲民主党の西村ちなみ幹事長を攻撃する人がいる。陸山会冤罪事件に至っては、無茶苦茶な国策捜査で無実の大物政治家に激しい人格破壊攻撃が加えられた。

 小沢一郎先生も西村ちなみ先生も古代ならば怨霊になって雷を落としていただろうが、ただ、この両者が落選していない分、まだ日本国民に良識は残っていたということか。

 中国は共和国である。共和国では有罪判決を受けると一切の特権を剥奪される。刑務所に収監された朴槿恵元大統領のように。

 だが、範承秀氏の葬儀には薄熙来先生と谷開来氏からの花が飾られた。獄中からの献花を認めるとは、中国も捨てたものでは無い。これはむしろ「君主政体の論理」である。

 しかも、薄熙来先生の息子である薄瓜瓜氏が追悼文を発表できたと言う。薄熙来先生への名誉剝奪も子供までは及ぼさないと言う意思表示だ。

 何やら古代日本に似てきた。というか、似せているのだろう。

 範承秀氏への献花は陳希国家行政院院長も行っている。形式的とはいえ「国家として葬儀を行った」「子孫への配慮も行った」と言う形にした。

 どうしてそうしたのか。答えは簡単だ。粛清された方にも寛容になった方が、政体が長持ちするからである。

 「国家百年の計」と言う言葉があるが、習近平国家主席はわずか100年間しか持たない国家など、失敗作であると理解しているだろう。彼は中華の政治家である。東夷のどこかの黄色い猿の政治家とは違い、とてもcleverだ。

 中国共産党は数十年前から日本の自民党政権が長続きした秘訣を探っている。だが、習近平国家主席はその域に留まっていないだろう。

 「中華民族の復興」を唱える習近平国家主席の関心事は、「天皇が長続きした秘訣」にあるはずだ。

 しかも、その日本の制度をそのまま中国に持ってくるような、バカなことはしない。ジョン・ロックの社会契約説をそのまま輸入した東夷の黄色い猿と一緒にしてはならない。

 習近平国家主席がやろうとするのは「天皇の中国化」だろう。

 より正確に言うと「華」である。中華の魂を維持したまま、日本のやり方を見習う。

 日本が続いた理由は「君主政体」だったからだ。君主政体の柔軟さや寛容さを取り入れれば中国の「人民民主主義」も長持ちすると習近平国家主席は考えているはずである。

 そして習近平国家主席は自分の戦略が中国で成功した暁には、それを世界中に弘めようと本気で考えていることであろう。

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