直流送電と電車網
エネルギー安全保障は、国防という狭義の安全保障だけでなく、防災を始め経済や環境を含めた多様な問題の一環として考えるべきであり、国民の生活に直結するという意味では「生活安全保障」の大きな要因を占めます。
私はかつて中学生の頃に日本未来の党を支持し、その流れで旧国民民主党から立憲民主党の党員となったが、そもそも日本未来の党を支持した大きな理由が環境問題への姿勢でした。
そんな中、小学生の頃に送電におけるエネルギーロスの話を知り、大規模送電システムを止めない限りはエネルギー問題の解決は困難だと考えました。
しかし、大規模発送電を無くすことは現実的ではなく、エネルギー安全保障の問題は難しいと思ったものです。
実は長距離の送電の場合は、交流送電の方が直流送電よりもエネルギーロスが大きいという問題があります。
かつて直流送電を主張したエジソンが交流送電を主張したニコラ・テスラに敗れたため、直流送電は長距離送電に向いていないというイメージがありますが、当時は直流送電での変圧の技術が未発達であったためで、実際には直流送電の方が大容量の長距離送電に向いています。
大規模発送電自体を直ちに変えることが出来ない以上、直流送電の採用を検討せざるを得ません。
もっとも、直流送電を行う際の課題としては、現在全国にある送電網に加えて家電製品まで全て買い換えないといけない、ということが挙げられます。
もちろん家電製品については周波数の違う関東と関西の両方で使える家電も現にありますから、過渡期には直流と交流の双方に対応した家電も開発されることでしょう。
また、送電網についてもまず一部の地域で試験的にやってみるという方法があります。人口の少ない過疎地に補助金と引き換えに行ってもらい、成功例を重ねてから都市部でも行う、という方法が一番混乱が少ないでしょう。
いずれにせよ、政治力が必要な話となります。
この際、カギとなるのが、既に直流で長距離送電が行われているという“先例”でしょう。
電車の多くは直流送電であり、長距離送電における先例となるのみならず、将来的に鉄道の上下分離方式を採用する際には、電車の送電網も政府が管理することになりますから、その際には直流送電網の一環として電車の送電網を活用できます。
我が国では鉄道政策について利用者の便宜を中心に語れており、その結果として利用者負担の原則が採用されています。よく近年の鉄道の赤字を民営化のせいにする人がいますが、実際には国鉄時代も赤字は利用者負担とされてきました。
しかし、実際には鉄道も国防やエネルギーを含めた生活安全保障政策の一環として議論されるべき課題であると考えます。その一つが、鉄道を直流送電への転換のモデルケースとして捉えることです。