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親鸞聖人の「非僧非俗」の精神

 今日、産土神社を参拝していると、その帰り道でふと「親鸞上人の非僧非俗とは素晴らしく強い精神では無いのか」というインスピレーションを受けました。
 政党に所属するようになって以来、私はあまり信仰面のことは書かない様にしていますが、私の尊敬する宗教家が空海聖人(弘法大師)であり日蓮聖人(立正大師)であることは、私は別に隠してもいないし、私の家の宗派自体が真言宗と日蓮宗の二重信仰です。
 しかし、実は親鸞上人のことも尊敬しています。実は私は『正信偈』を読むと感動する人間です。
 かつてある真言宗の高僧の下で修行していた時、その高僧の部屋の本棚に『教行信証』があったので読んでみるととても感動しました。すると、私が読んでいる姿を見たその高僧が「どうだろう、感動するだろう」と、その高僧も『教行信証』に感動したことがあったようです。
 空海も日蓮も今でいうヸ-ガン(ヴィーガン)で、私も菜食主義者ですから、肉食妻帯の親鸞とはその点も正反対に見える方もいるかもしれませんが、私はそのことはあまり矛盾に思っていないのです。そのことは話すと長くなるので割愛しますが。
 さて、非僧非俗と言うのはどういうことかと言うと、偶に勘違いされている人がいますが、肉食妻帯したから僧では無い、と言う意味ではありません。
 親鸞上人が受けた戒律は具足戒ではなく、罰則規定の無い菩薩戒です。そもそも菜食を義務付けているのは具足戒ではなく菩薩戒です。
 よく勘違いされているのですが、大乗仏教の菩薩戒の方が上座部仏教でも使われる具足戒よりも緩い、と言う人がいます。そんなことを言っている人は一度禅寺で修行すれば「大乗仏教は緩い!」と言う寝言を言わなくなるのではないか、と思いますが。
 例えば菜食について規定しているのは大乗仏教であって、上座部仏教の僧侶は肉も食べる、それどころか肉が好物だと公言する人もいるぐらいですし、上座部仏教の戒律は「自分がしてはならない」ことが主なのに対して大乗仏教の戒律では「他人に悪いことをさせない」ことが主である、つまり、他人を救うと言う点に関しては遥かに大乗仏教の方が厳しいものです。
 しかしながら、日本では天台宗や浄土宗の僧侶は菩薩戒だけを受戒して具足戒の受戒はしませんから、菩薩戒に罰則規定が無い以上、別に親鸞上人が僧侶のまま肉を食べても誰も罰しない訳です。だから破戒僧自体は昔からいた。
 一方、親鸞上人は朝廷から僧侶の資格を剝奪されて流罪になります。その際に「藤井」と言う姓も与えられていますから、普通還俗すると元の氏族に戻る、親鸞上人は藤原氏出身ですから「藤原」の本姓に戻るはずなのですが、なんと藤原氏からも「放氏」と言って追放されてしまったようなのです。
 ところが親鸞上人は僧侶資格を剥奪されたからと言って、開き直って俗人に戻ったりはしなかった。それが「非僧非俗」で、それは素晴らしいことだな、とそこまではこれまでも思っていました。
 しかし、産土神社の帰り道で私はもっと重要なことに気付いた訳です。
 私は親鸞上人に関する歴史に詳しい訳では無いですが、ただ強制還俗とは言っても「いや、私は僧侶なのだ!」と言いつづけることは出来たと思うのです。
 これまた古代から「私度僧」と言うのがいて、この私度僧と言うのは政府の許可を得ないで得度している僧侶を指すようですが、要するに政府の許可が無くても出家する人は昔からいた訳です。
 ところが、親鸞上人は私度僧にはならなかった、そここそが「親鸞上人の強さ」ではないか、とふとインスピレーションが降りてきました。
 私が親鸞上人の立場だと、確実に「私は僧侶である!朝廷が何を言おうと僧侶だ!」と言うでしょう。仮に殺されても僧侶を名乗る、それこそが強さである、と信じると思います。
 しかし、親鸞上人はそのような安直なことはしなかった。僧侶の資格剝奪を受け入れた上で、俗にもならないと言う、一番困難な方法を「敢えて」選ばれたのだと思います。
 『教行信証』で親鸞上人は「主上臣下、法に背き義に違い」と書いていますから、朝廷こそ法と義に反している、と言う訳なので、ならば私度僧になってもいいじゃないか、と私は思ってしまう。
 が、この一文の後に親鸞上人はこう書かれています。
「僧儀を改めて姓名を賜うて遠流に処す。予はその一つなり。しかればすでに僧にあらず俗にあらず。このゆえに禿の字をもって姓とす。」
 これを見ると、確かに強制還俗させて「姓名」を与えたのは朝廷です。しかし、朝廷が下賜したのは「藤井」の姓であるけれども、親鸞上人は自分から「非僧非俗」だからと言って「禿」の姓を名乗った訳ですから、非僧非俗と言うのは親鸞上人の主体的な選択になるのです。
 その道を選んだ瞬間、僧と俗の境から解放された、強くて且つ爽やかな境地が表れたのではないか、と言う風に感じました。
 私は親鸞の時代は専門では無いので、単なる勘違いかもしれませんが。


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