見出し画像

編隊飛行衛星とは?

この記事(ブログ etc.)はCanSatチームFUSiONのアドベントカレンダー2023、4日目(12月6日)の記事です。

初めて記事を投稿します、Tomoki.Mです。
現在、修士論文に向けて研究をしている最中ですが、FUSiONという団体でアドベントカレンダーを行うことになったので、今回、このような形で記事を書かせていただきます。
私は、航空宇宙工学を専攻しており、宇宙開発に興味・関心がある者なので、宇宙に関連する記事を投稿することができればなと思います。
記事の投稿が初めてであることと、シンプルに修論に追われている身なので、記事内容は編隊飛行衛星の簡単な紹介にとどめさせていただこうと思いますが、温かい目で読んでいただけると助かります。


大型衛星での解像度の優れたデータ取得

近年、宇宙空間からの天文観測や地球観測を解像度良くするために、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)をはじめとした様々なミッションが検討・開発されてきています。JWSTが宇宙から撮影してくる写真は非常にきれいで、私自身もパソコンのトプ画にしてしまっています。特にお気に入りは、わし座星雲です。この写真を見たとき、こんなにも美しい写真を撮ることができるのかと感動したのを今でも覚えています。

さて、このような大型人工衛星を用いて大きい望遠鏡を作れば、それだけ高解像度のデータを取得することができるようになります。しかしながら、ここは宇宙です。地球では、大きな建造物を作ることは土地さえあれば (もちろんそれなりにコストはかかりますが) 特に問題なく建設することができますが、宇宙ではそうも簡単にいきません。
宇宙機は一度打ち上げたら修理ができないので、大型衛星を開発するとなると10年~20年もの年月がかかってしまいます。その上、人工衛星は自ら宇宙に行く能力を有していないのでロケットに入るような構造にしなければなりません。

こういうことを考えていくと、大型衛星1機で観測できるデータの解像度には限界が生じかねず、さらなる高解像度データを取得するには、他の手法を用いることが求められます。そこで出てくるのが編隊飛行衛星です。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の全体像 (Credit: alex-mit)
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したわし座星雲 (©NASA)

編隊飛行衛星でできること

人工衛星でいうところの編隊飛行とは、複数機の人工衛星が宇宙上でお互いの位置や姿勢を制御しながら飛行していることを言い、そのような人工衛星のことを編隊飛行衛星といいます。人工衛星が編隊飛行をすることにより、仮想的に大きな望遠鏡を構築することができるようになります。

これは、人工衛星の話ではないですが、2019年に地球上の8つの電波望遠鏡を結合させて仮想的に地球サイズの電波望遠鏡を作ることでブラックホールの撮影に成功したというニュースが流れていたこともありましたよね。(史上初、ブラックホールの撮影に成功 ― 地球サイズの電波望遠鏡で、楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る | 国立天文台(NAOJ))

仮想的な大きな望遠鏡を宇宙空間で作ることができたら、大気の影響や他の要因の影響が少ない分、より解像度の高いデータを取得することができるようになります。そこで、今までも現在も様々な編隊飛行衛星ミッションの提案がなされてきています。その中の代表例を2つほど紹介します。

初めにTPF-Iです。この人工衛星は、1990年代に考えられていた、編隊飛行衛星ミッションとしてはかなり初期の頃に検討されていたミッションです。この衛星は赤外線スペクトラムを観測することによって地球に似たような惑星を探すというミッションです。近年、月資源や水を探査する衛星ミッションの検討がようやく活発になってきたことを考えると、地球外惑星を観測するというミッションが30年前に提案されていたことに少し驚きますよね。

このTPF-IはNASAが検討していたミッションですが、同時期に同じ目的である地球に似た惑星を探すミッションを欧州宇宙機関(ESA; European Space Agency)も考えており、DARWINと名付けて検討していました。

しかしながら、この当時、開発コスト的な観点やこれらのミッションを実現するための技術開発が追い付いていないことなどが原因として、両プロジェクトともに無期限の延期になってしまっています。(これらのミッション内容を引き継ぐ形で現在はLIFEというミッションが動いていますので、興味ある人は調べてみてください。LIFE - Home (life-space-mission.com))

TPF-Iの概念図 (Peter R. Lawson, et al.  Proc. SPIE 6693.)

今度はちゃんと打ちあがったミッションを説明します。これもまたNASAのミッションなのですがGRACE-FOといいます。このミッションは地球の重力場を高精度で測定することによって気候変動や地球の水循環に関する研究を支援することが目的です。

この編隊飛行衛星は2002年に打ち上げられ、2017年まで稼働していましたが、その時期に様々なデータを収集してきているので、こちらも興味があれば調べてみてください。(GRACE-FO (nasa.gov))

GRACE-FO (©NASA)

終わりに

さて、ここまで非常にざっくりと説明してきましたが、編隊飛行衛星について少し興味を持っていただけたでしょうか。
本当はもう少し丁寧に多くの編隊飛行衛星を紹介させていただきたいのですが、書く分量が増えてしまい、かえって読むハードルが上がってしまう気もするので、今回は軽くまとめて終えてしまいました。

上で紹介した編隊飛行衛星ミッションは両方とも大型衛星を用いていますが、近年では大学の研究室が開発した超小型人工衛星を用いて編隊飛行を実証するミッションも行われてきています。超小型人工衛星だと、開発コストが下がり、開発期間も短くなるのでこれからますます超小型人工衛星を用いた編隊飛行ミッションが検討・開発されていくことになると思います。

FUSiONチームが開発した機器が搭載されるようになるのも今後起こりえるかもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?