涙もろくなった
いつからだろう。
自然と涙が溢れるようになった。
大学生ぐらいまでは、映画やドラマで泣くほど感動するという感情になったことがない。
卒業式とかでは泣いたことはあっても、作品を観て泣くということが自分にはわからなかった。
それがどうだろう、社会人になって急に変わったような気がする。
テレビで感動する話を少し聞いただけで泣きそうになったり、ドラマや映画でも感情移入するようになった。
年を取ると涙もろくなると言われているが、こんな童顔の私も年を取ったということなのだろうか。
社会人になると社会の厳しさを目の当たりにするし、自立していかなければならない。社会にもまれることで心の中で新しい自分が生まれたのだろうか。
前の職場にいた頃、無性に泣きたくなって感動系の映画をレンタルしに行ったことがある。こんなことは初めてだった。
今思えばそれほど前の職場がつらかったのだろう。
今の職場になってからはそういう自分から泣きに行くことはなくなったのだが、今までより感情移入するスピードが速くなっている気がする。
感動するものは家族と一緒には観られない。泣いているところを見られたくないからだ。
自分の部屋で一人で観ていたとしても、急に家族が自分の部屋に来たらと思うと涙をこらえてしまう。
最近では歌がうまい人の歌声を聴いているだけで感動するようになった。
歌というものはこんなにも人を引き付ける力があるのかと実感している。
私は人生でライブというものに行ったことがない。
ライブのチケットは普通の人は取れないと思い込んでいるので、行けないものだと思って買おうともしたことがなかった。
しかし私の兄は友達のつてでコブクロのライブのチケットをもらっていたことがあった。今思うと羨ましすぎる。
私が初めてプロの歌声を聞いたのは大学生の頃。住んでいた寮の近くのスーパーにものまね芸人が来るというイベントがあった。
そのころ少しテレビに出ていたダブルネームという2人組の歌まね芸人だった。
その人たちの歌声を聴いていると、うますぎて最初口パクかと思った。
「え、これって本人の歌声をスピーカーで流しているだけじゃないん?」
っと心の中で言ったことを今でもはっきり覚えている。それほど衝撃だった。
ということは、歌まね番組によく出ているような方はどれほど似ているのか。テレビ越しでも似ているのに、生で聴いたら腰を抜かしそうだ。
歌手の方の歌声も、テレビや動画を見ているだけで鳥肌がたって泣きそうになるのに、生で聴いたら私はどうなるのだろうか。想像しただけで泣けてくる。
友達の結婚式でも泣きそうになるのに、自分の結婚式はどうなるのだろう。
他人の子供のことでも泣きそうになるのに、自分の子供に対してはどうなるのだろう。
おいおい、泣く人生が始まったとこなのにこれでは先が思いやられるな。
でも泣くっていいよね。
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