【映画】「レ・ミゼラブル」

2019年のフランス映画「レ・ミゼラブル(Les miserables)」(ラジ・リ監督)。

あのヴィクトル・ユゴーの古典小説の現代版かなぁと思って観たら全然違って、小説の舞台になった街での“ああ無情”な悲劇と復讐のお話だった。

アフリカ系移民や低所得者層が多く住み、スラムのような犯罪多発地区でもあるパリ郊外のモンフェルメイユが舞台。パリにこんな地区があるのも知らなかったけど、監督自身がここの出身だって。コレだったら、あのスパイク・リーが絶賛したのも頷けた。

フランスが優勝したサッカーW杯フランス大会が開催された1998年の設定。
国民が歓喜に沸く映像で始まるが、その裏で、やはりアフリカからの移民が多く住む街(フランスのゲットー)は差別・分断の対象となってる。
その地区の警察の犯罪防止班に、新人のステファンが配属される。
先輩2人と3人1組でパトロールするうちに、複数の移民グループ同士が対立関係にあることがわかる。
イッサという少年が、対立する移民のサーカス団からライオンの子供を盗んだことで抗争が起きようとしている時、ステファンたちは取り締まりに走るが、ステファンの先輩たちが、見つけたイッサを強引に捕まえようとして、仲間の子供らの反逆に会い、先輩の一人が謝ってイッサをゴム弾で撃ってしまう。
新人ステファンは先輩たちを非難して奔走するが、事態は取り返しのつかない方向へと進んでしまう…。

フランス人警官の先輩が、移民を下に見て、横暴かつ強引な奴で、「俺がこの街のルールだ!」と言い放ち、移民たちは恐れながらも苦々しく恨みに思っている。家に帰ればフツーに幼い娘を躾ける父親だが、こういうタイプの警官はアメリカ等でもたくさんいそうだ。

移民と同じ黒人の警官は、子供らの反抗にブチ切れてゴム弾を撃ってしまうが、家に帰れば、母親の前で自分の行為に嫌気がさして泣いてしまう、実は気の弱い奴。

新人ステファンは、先輩2人のやり方に疑問を持ち、子供らに親身になって接しようとするけど、先輩2人と行動を共にする。

最後は、この3人が子供達の復讐に合う。デカい花火を撃たれたり、階段の上から物を投げつけられたり、バットで殴られたり、消化器をぶち撒けられたりだけど、狭いアパートの階段に閉じ込められた感じで、命に関わってくる。

ステファンが火炎瓶を持った子供イッサに銃を向けたところでエンドで、その後、どうなったかはわからない。結果がわからない終わり方にちょっと不満だけど、ドキュメンタリー風のフランスの移民問題の現実を強烈に示したのだと思う。

全編を通して底にあるのはただ“怒り”だ。

移民という“よそ者”がフランス本国で生きていく上での難しさ、また虐げられてる移民同士の縄張り争い、賄賂等でかろうじて力を持つ権力者、どこの国でも先進国であれば多かれ少なかれこうした問題はあるのだろう。監督が意図しないでも心が揺らぐ強烈なメッセージ性のある映画だった。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。