「テッド・バンディ」

去年、公開の「テッド・バンディ(Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile)」(米、ジョー・バーリンジャー監督)。

“極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣”(実際の裁判で判決文に含まれた文言)という題だが、稀代の連続殺人鬼、テッド・バンディの犯罪そのものよりも、彼とそのシングル・マザーの恋人、エリザベス・ケンドール(リズ)との関係がストーリーの中心。彼女が出版した回顧録が原作だ。

実際には、セオドア・ロバート・バンディは70年代に米・7つの州で30人以上もの若い女性を殺害している。

彼はハンサムで、裁判には蝶ネクタイをして出廷するくらいオシャレでダンディ、気遣いができて、ウィットに富んだ会話も面白く、頭脳明晰で、裁判では国選弁護人をクビにして、自分で自分を弁護した。

だから、バンディの裁判ではファンになった若い女性が多数傍聴に訪れて、キャーキャー熱を上げるくらいだったという。

表はそうでも、裏では女子寮に潜入したりして女の子を漁って暴行、暴力を振るって殺害し、遺体に噛み付いたり、首を切り落としたり、残虐の限りを尽くしてたのだ。

不思議なことにバンディは恋人リズと彼女の幼い娘にはとても優しく、残虐な本性を明らかにすることはなかった。そのためリズもバンディと恋に落ちて心酔してしまう。

またリズを演じたフィル・コリンズの娘リリー・コリンズが繊細な壊れそうな美人で、裁判でバンディの悪行が明らかになっていき、悲しみ、嘆き、酒に溺れて苦しむ姿が可哀想で観てられないくらいだ。

バンディを演じた俳優は本人にソックリ過ぎてビックリ。時たま見せる狂気の表情が上手いね。

バンディはサディストの変態性欲者で完全なる二重人格っぽいが、父親が誰かわからずに幼少期から母親との関係が悪かったらしい。女性に対する残酷な暴力の振るい方を見てると、母親との関係に相当なトラウマがあったのではないか。

リズはバンディの表の顔だけに騙されたわけだが、これだけ上手く口が立つと誰でも騙されそうだ。

愛した男が実は…というのは、愛した自分を責めてしまうものだ。あの時の一言が彼をそうさせたんじゃないか、というように。自分は全く悪くはないのに、愛した自分を悪く思うことで愛した過去を否定したくないからだろうと思う。リズも例外ではない。彼女はバンディの口から告白を聞くことで彼と完全に決別するのだ。

俺的に興味があるのは、実際のバンディの犯罪の手口だけど、リズとの関係をメインに弁護士や検事、昔の彼女との心理的なやり取りを追ったこの映画も興味深く観たね。

実際のバンディは1989年1月24日に電気椅子により死刑となった。最後、実際の本人の裁判やテレビの取材の模様が出てくる。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。