【日本映画】「楊貴妃」

溝口健二監督の、1955(昭和30)年公開の、初のカラー(当時最先端の総天然色)映画「楊貴妃」。香港との合作。

唐の玄宗皇帝の妃、世界三大美女のひとりといわれる楊貴妃(ヨウキヒ)の生涯を描いたもので、京マチ子が演じる。

一豪族の、台所仕事などをする下女同然の娘が、その美貌と、琵琶をはじめとした音楽や舞踏の才能を見出されて、玄宗皇帝(森雅之)のお妃となって、皇帝の寵愛を一身に集めるが、政情不安により豪族や大衆の嫉妬に遭い、一族と共に迫害を受けて縊死させられるまで。

悪女といわれた西太后らとカンチガイしてたよ。ココに描かれた楊貴妃は、あくまで品行方正な、優しくて美しいお妃であって、皇帝が彼女を好き過ぎたことで、政情不安となって国が傾いたのだ。楊貴妃の一族も、兄以外は権力欲が激しい悪い連中ばっかだし。

確かに、京マチ子演じる楊貴妃が温泉に入るシーンなんか、色が白くて、ちょっと豊満で、男を狂わせるような色気がある。

皇帝と2人で変装して、お祭りが開かれている町へ一般市民として出かけて楽しむところも、微笑ましくてホッとするばかり。

でも、そんなささやかな幸せが長く続くわけもなく、楊貴妃の一族が驕り高ぶった振る舞いをしたことで、大衆の楊貴妃に対する嫉妬も昂っていく。

身内や政情、当時の社会環境によって、純粋な故に皇帝のことを想って犠牲を強いられてしまう女性をメロドラマ風に描いたのは、全く溝口監督らしいけど、作品としては何か物足りないなぁ。失敗作かも。

皇帝自らが作った権力と官僚的な法に縛られてしまい、権威を守ろうとして、楊貴妃は殺されるという流れは示唆的だけど。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。