【古典映画】「銃殺」

1964年の英国産戦争映画「銃殺(King and Country)」(ジョゼフ・ロージー監督)。

金がかかってない、モノクロで撮られた、地下壕だけが舞台の、地味なフィルムだが、戦場において人間が異常な心理に陥ってしまう様を描いた、優れた出来の作品だと思う。

第一次世界大戦で、前線に送られた若い兵士が勝手に歩いて前線から離れ、すぐさま捕らえられて、逃亡を図ったとして軍事裁判にかけられる。かつての上官が若い兵士の心情を理解して彼を弁護するも…。

一応、反戦映画だ。

最後は銃殺刑になってしまうのだが、地下壕における簡易な即席の裁判で、上官が若い兵士の弁護をする。
「彼は真面目な志願兵だけど、戦場で同期が死んでいくのを見て限界を感じた。その結果、責任能力を失ったのだ。家へ帰ろうとする本能だけが残された」等と。

上官とはいえ、戦場では国家の単なるコマでしかない。戦時下に、いくら若者の心理的な葛藤や日常、道徳を説いたところで、兵士としての役割を果たさなかったら、意味を持たないのだ。

結局、“他の兵士の士気を上げるため”という理由で銃殺刑となったが、上官は、「残念です。我々全員の負けです」と言いながらも、「私は義務を果たしただけだ」とクール。

軍事裁判という場では、人間が持つ道徳感や倫理観、秩序などを熱く語ったが、上官という立場をわきまえて、粛々と役割を果たす姿勢に考えさせられるものは大きい。

だから戦争は止まない。人間本来の闘争本能を、社会の倫理観や秩序が後押しするのだと思う。

銃殺刑執行前夜、仲間の兵士らが、隠れて酒を持ち込んで、しこたま酔って、ドンチャン騒ぎに興じるなんて哀しいものだね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。