【洋画】「ガープの世界」

優しい笑顔のロビン・ウィリアムズ主演の「ガープの世界(The World According to Garp)」(1982年・米、ジョージ・ロイ・ヒル監督)。

まずは主人公ガープの出生が明かされる。男嫌いの、看護師の母親が、子供は欲しいけど結婚はしたくないから(性行為は子作りだけのため)、働いてた従軍病院で、入院してた重症の患者(三等曹長)が、意識がないのにアソコだけは元気に勃ってたから、人目を避けて乗っかって射精させて妊娠(!)、ガープが産まれたのだ。

母親は息子を独りで育てて高校まで通わせる。高校生のガープが興味を持つのは、レスリングとセックス、そして、小説を書くことだった。

ガープは、小説を書いて作家となり、レスリングのコーチの娘と結婚して、子供に恵まれて父親となる。一方、母親も、フェミニズム的な自らの生き方を綴った著書を出して、一躍、ベストセラー作家となる…。

母親の生き方に影響されながらも、あらゆる困難を全て受け入れて、幸せを追求するガープ。出会った女性から多くを学び、周りには不寛容な人間が寄ってくるが、苦悩しつつも、寛容な態度を崩さない。世間には寛容を訴えながらも、本人自身は不寛容だったりするのだ。特に、あるイデオロギーを信仰する人間は。

結局、ガープの母親はフェミニズムの集会で凶弾に倒れ、ガープ自身も、彼を妬んだ幼馴染みに発砲され倒れる。救急搬送されるヘリコプターの中で、ガープは妻に「忘れないで、僕らの全てを」と話して優しく微笑む。幼い頃から夢だった空を飛びたいという夢も叶ったのだった。

ベースは喜劇だと思うけど、喜劇は常に悲劇と裏腹。お互いの浮気をキッカケに事故で子供の1人を亡くし、母親も撃たれて、ラストは自分も撃たれる。様々な困難の中で、ガープが望んだ幸せの形は、リビングで子供たちが遊んでいるのを窓から見てることだった。つまりは、何気ない家族の時間を共有することだったのだ。それに、やっと気付いたからこそ、笑顔で死んでいくことができたのだ。

…なんとも言えない監督の演出。難解じゃないけど複雑なストーリーで、周りの人間も、フェミニスト、性転換した男、カルトにハマって舌を切った女たち、精神を病んだ人、バリバリ保守の男、すぐに男と寝る女…と個性揃い。

表向きはどうであれ、家族で過ごす普通の日常を送ること(しかも寛容的な)の素晴らしさ=人生の最良の時を訴えたのだと思う。「人はみんないずれ死ぬのだから、それまでしっかり生きるのが大事」と母親は言う。

主演のロビン・ウィリアムズ自身は自殺してしまったけどね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。