【古典映画】「大阪物語」

1957年公開の古典映画「大阪物語」。

元々は溝口健二監督作品だったが、溝口監督が急遽、入院、そして急死となったため、吉村公三郎が監督を引き継いだ。

井原西鶴を基に溝口健二が書いた脚本。さすがは溝口監督、人間の深い“業”を感じさせる面白い作品だった。

元禄時代、年貢を納められずに夜逃げした百姓の貧乏一家。
逃げたは良いが、どうしようもなくて一家心中を決意するが、偶然、米俵を荷揚げする川の岸で、俵からこぼれた米を拾って、それを売って命をつなぐ。
それから10年間、一家で米を拾って売り続けた主人の仁兵衛は、資金を貯めて、両替屋を構えるに至った。
息子と娘も成人となり、商売も上手くいって、なに不自由ない暮らしが可能になったが、仁兵衛は、散々、貧乏をして苦しんだ過去の経験から、度を越したケチ、守銭奴となっていく。
病気に倒れた妻の薬代や生活の必需品、使用人にまで徹底してケチを強要し、娘の縁談も金次第。
ついに薬代をケチって妻は死に、息子は仁兵衛の金を奪って芸者遊び、娘は、かねてから好意を寄せていた番頭と駆け落ち。
独り残った仁兵衛は地下に隠してあった金箱を抱えて発狂してしまう…。

仁兵衛を演じたのは、2代目中村鴈治郎だが、ドケチ守銭奴の大阪商人の役がまたピッタリ。最後の「あっち行け、寄るな、触るな、わいの金や!」と金箱を抱えて不気味に笑う顔が狂気そのものでゾゾッとする。

金への執着は、例え金持ちになっても、終生、続くものかもしれない。それだけ、人間は金のあるなしで大きく左右されるものなのだね。資本主義に徹底的に洗脳を受けた奴隷だ。

俺も、満足に金を持ったことがないから、守銭奴の傾向にあると思う。映画を観てて、自分のことを思ってちょっと恐ろしくなった。

仁兵衛の息子を女遊びに誘い出す道楽息子を、若き勝新太郎が演じてて、芸者の一人が中村珠緒で、この映画での共演を機に結婚することになったという。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。