【古典映画】「素晴らしき日曜日」

黒澤明監督の、1947年(昭和22年)公開のモノクロ映画「素晴しき日曜日」。

敗戦直後の東京を舞台に、毎週日曜日にデートする雄造と昌子のカップルが厳しい現実に直面するが、希望と夢を捨てずに逞しく生きようとする姿を描く。

厳しい現実とは、単に金がないということだが、雄造は戦前、カフェの開業を目指していたが戦争でダメになり、親も亡くして、戦後は自暴自棄な態度になっていた。昌子は、そんな雄造をなんとか励まそうとしている。

手持ちの少ない金で、住宅展示場やアパートの下見、ダンスホール、コンサート、喫茶店、動物園とデートして回り、昌子は明るく振る舞うが、やっぱり貧乏が雄造を落ち込ませる。

「今は現実的にならなきゃだめだ。夢で腹はふくれない」と雄造。

最後に、誰もいない廃墟と化した日比谷野外音楽堂で、雄造はステージに上がり、指揮者みたく指揮棒を振る真似をして、昌子が客席で拍手して雄造を励ます。しかし、やっぱり雄造はうなだれてしまう。

昌子は、ステージに上がって、客席(つまりは映画の観客)に向かって叫ぶ。「皆さん、お願いです。どうか拍手をしてやって下さい。世の中にはあたしたちみたいに貧乏な恋人がたくさんいます。そういう人たちのために、どうかみなさんで拍手を送ってください」…。

おたふく顔で決して美人ではない昌子だが、子供みたいな雄造に、なんとか元気を出させようと頑張ってる姿がいじらしい。女の子は強い。自暴自棄に身体を求めてきた雄造に泣きながらも応えようとするし。

当時の貧しい日本をリアルに描いたのかもしれないが、クロサワさんが撮る映画じゃねえな。

いったい観る者に何を訴えようとしたのだろう。昌子が観客に向かって話しかけて拍手をお願いするという演出だから、同情してほしかったのか?それとも具体的に寄付でも募ったのか?

あゝ、ナルホド、アメリカの古典映画「素晴らしい哉人生」をヒントにしたのね。向こうの方が全然面白いけど。

ラスト、抱き合って唇を交わした2人は、それぞれ帰るが、雄造がヨッシャーやるぞと希望に満ちた顔で夜空を見上げるからまだ良かった。

当時の東京の風景が興味深い。

またディスっちゃった(笑)。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。