【古典邦画】「マリアのお雪」

溝口健二監督の、1935(昭和10)年の、戦前の小作品「マリヤのお雪」。YouTubeにて。フィルムの状態が悪い。

主演のお雪は山田五十鈴。

なんと、明治政府の官軍と九州の西郷軍が戦う西南戦争中で、しかも熊本・人吉が舞台。すごっ。古っ。

官軍に追われた西郷軍が立てこもる人吉で、戦火を逃れるために、町の名士らが一台の馬車に同乗して町を出ようとする。
そこに酌婦のお雪とおきんも乗って来るが、名士らは彼女たちに身分差別的な軽蔑の視線を投げる。
そして、馬車には西郷軍の関係者も乗っていたために、官軍に捕えられることに。
自分だけ助かりたいがために、官軍の隊長に自分の娘を差し出そうとする名士。
お雪とおきんは憤慨して、隊長に、娘の代わりに自分の身を捧げようとするが、隊長がことのほかイケメンであって、2人は惚れてしまうことに…。

前半は、高貴なブルジョワ市民と一般平民、下層階級の女たちの対比が面白い。

「マリアの…」だから予想できるように、前にどんなに差別されようとも、いざという時に、自分は我慢して、貰った食事をひもじい思いをしてるブルジョワ婦人にあげるなんざ、酌婦の善行に涙が出て来るねぇ。

官軍の長髪のイケメン士官との出会いと別れ、そしてまた偶然の出会いに、士官を巡る女同士の争い、最後は邂逅と描かれる。

溝口監督には珍しく人物のアップが多い。表情がよくわかる。花が散る様など、細々とした自然描写も溝口監督らしくてgood。

「あたしは戦場だって墓場だって構わないよ。とにかく不人情なやつらのいないところへ行きたいのさ」byお雪


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。