【古典邦画】「無法松の一生」

探してた三船敏郎主演、未亡人役がデコちゃん(高峰秀子)の「無法松の一生」。TSUTAYAにあったぞ。1958(昭和33)年公開の作品。稲垣浩監督。

稲垣監督が、1943(昭和18)年に撮った同作品のセルフ・リメイクだ。前作は、検閲・カットが多かったため、本作でその無念を晴らした形。

ケンカっ早くて豪快な荒くれ者で、“無法松”と呼ばれた人力車夫の富島松五郎は、イジメられて木から落ちてケガをした少年と出会う。
少年を家に送り届けた彼は、少年の父親の陸軍大尉に気に入られて、一緒に酒を酌み交わす。
しかし、その後、大尉は、風邪をこじらせて、早々とこの世を去ってしまう。
残された大尉の奥さんと少年は、松五郎を頼りにし、松五郎も2人の面倒を見ることに…。

ストーリーから外れたようなヘタな演出がちょっとクドい感じがして、“無法松”の豪快なエピソードをもっと見せて欲しい気もしたが、三船さんは豪傑らしく怒鳴るといういつもの演技だけど、やはり未亡人・吉岡良子、デコちゃんの自然な演技が群を抜いていると思う。デコちゃん自身も好きな作品に挙げていたし。

松五郎の、下層階級の車夫という薄汚れたなりとは対照的に(三船さんによく合う)、常に息子を気遣う、理解のある優しいブルジョア夫人の、麗しい上品な振る舞いがデコちゃんにもピッタリだ。

松五郎と未亡人となった良子、もしや結ばれるかも、と思ったが、それはなかった…どころか、松五郎の良子を想う恋情が昂じて、「自分は汚い人間です。もう会うこともないでしょう」と、良子の前から去って、酒に溺れて自暴自棄な生活を送り、冬の野道で野垂れ死ぬなんて…。

車夫と大尉の夫人という身分の違いもあって、やはり叶わぬ想いだったのか。

想いをグッと堪えて、夫人と息子のために、いつも陰から支えるだけの松五郎の哀しさよ。

松五郎の死後、彼の居所に、夫人に貰ったお金や品物など、一切手を付けることなく、大切に取ってあったことがわかって、松五郎の男気を感じて、さらに哀しみが増すってもんだ。

三船さんの祇園太鼓を叩くシーンだけは見事だ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。