【古典邦画】「カルメン純情す」

木下惠介監督の、1952(昭和27)年の作品「カルメン純情す」。デコちゃん(高峰秀子)主演の「カルメン故郷に帰る」の続編だ。

でも、カラーではないなぁ。前作は国産初のカラー映画だったのに。

デコちゃん演じる浅草のストリッパー、リリィ・カルメンが、あるブルジョワの前衛芸術家の男に恋をして、また一騒動ある話だ。

ちょっとおバカなリリィは、友人マヤの赤ちゃんを巡って一悶着あった時に、前衛芸術家の須藤ハジメと出会い、アトリエに招かれて、ヌードモデルを引き受ける。
しかし、彼は女癖が悪くて、外で子供を作り、家の資産を使い果たしてしまうようなダメ男。
そのため、彼の母親は、ハジメを資産家の娘と結婚させる算段でいた。
そんなハジメを真剣に好きなったリリィは、彼のモデルのためにヌードになるのをためらうようになる…。

須藤ハジメの母親・熊子が、次の選挙で、再軍備を目論む“日本精神党”から立候補するつもりでいる豪傑の女(アゴ髭が生えてる)で、選挙と金のためなら息子の結婚相手をも利用する。須藤家は、この母親をはじめ、何でも原爆に結び付けて話をする女中や、軍隊口調の元軍曹の召使い、そして、異常な女好きのハジメと変人揃い。他にも、個性的(?)な人物ばかりが登場する。

つまりは、当時の世相を盛り込んだ、木下監督なりの風刺が効いた喜劇なのである。

前作と同様、ストリップも“裸芸術”ということで、リリィも精一杯踊るのだが、惚れてしまったハジメの前では踊れなくなる。

また、芸術、芸術と連呼しているので、理解に苦しむようなオブジェを並べたりして、カメラも大きく傾けて撮ったりしている。

そんな中で、デコちゃんと友人マヤの、男に対する昔ながらの純情さが際立つわけだが、前作とは全く違うものといっていいだろう。

この作品では、木下監督も遊んでるなぁ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。