【洋画】「暴走機関車」

ソ連・ロシアの映画監督アンドレイ・コンチャロフスキーの、1985年の作品「暴走機関車(Runaway Train)」。Amazonプライムにて。

本来の原作は黒澤明他で、映画化は叶わなかったが、もし、ダイナミックな演出を得意とするクロサワさんが撮ってたら、どんな映画になったかな。ヘンリー・フォンダとピーター・フォークをメインキャストにするつもりだったというし。

アラスカ州の監獄から脱走したベテラン囚人のマニー(ジョン・ヴォイト)と、彼を手助けした、若い囚人のバック(エリック・ロバーツ)。
彼らは、極寒の山地を歩き回った末に、駅に辿り着いて、街へ出るべく、発車前の機関車に乗り込む。
しかし、発車直後に機関士が心臓発作を起こして外へ転落する。
機関車は走り続けて徐々にスピードを上げていく。
この事態に騒然となる鉄道会社だが、2人の囚人は、たまたま機関車で居眠りをしてた女性作業員のサラ(レベッカ・デモーネイ)と共に機関車を止めるべく奮闘するといったパニック映画である。

鉄道会社は、機関車を別路線へ誘導して、脱線させることを目論む。そして、2人の囚人を追う刑務所のランケン所長が、ヘリコプターを使って、機関車に飛び乗ってくる…。

雪原の中を、雪を散らして、意志を持ったように走り続ける重苦しくて頑丈な鉄の塊は、恐ろしい悪魔の象徴のようだ。その中で、追い込まれた人間たちが、手を結び、喜び、争い、罵り合いと、極限のスリルとサスペンスのドラマを繰り広げる。ちょこちょこ粗はあっても、まさに目が離せない展開。

ある意味で囚人たちのヒーローだったマニーが、パニックによって人間性を垣間見せて、ヒーローという幻想を崩すことになるものの、ラストにランケン所長を道連れにして、機関車の上に仁王立ちとなって、森に突っ込んでいき、再びヒーローとなって死んでいく。晴れて自由の身となったマニーなりの悪の美学だ。

争う中でサラが叫ぶ。「あなたはケダモノだわ!」。マニーは返す。「違う!もっと悪い!俺は人間だ!人間なんだ!」。

ロシア文学のような重厚さと暗さを持つが、それぞれの立場で、熱い人間たちが繰り広げる上質なエンターテイメントであった。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。