【洋画】「トリコロール/青の愛」

舌を噛みそうなクシシュトフ・キェシロフスキ(1941〜96)というポーランドの監督の「トリコロール/青の愛(Trois Couleurs: Bleu)」(1993年)。

3部作である「トリコロール」(←フランスの国旗)の1作目という。懐かしいアート感覚いっぱいのステキな映画だった。

欧州を代表するような高名な作曲家である夫と幼い娘を、車の事故で一気に亡くし、自らも重傷を負った妻ジェリー。
回復して退院後、屋敷や家財道具一式、さらに夫が遺した未完の楽譜(欧州統合のための協奏曲)をも処分する。
彼女は夫の親友と一夜を過ごした後、亡き夫の影に悩まされながらも、全てをリセットしてアパートを借りて一人暮らしを始める。
そこで、新しい人間に出会うが、日常を送る中で、どうしても夫が未完のまま残した楽譜の旋律が頭の中で蘇ってしまう。
そんな時、ジェリーは、夫の親友が夫の楽譜を持ってて、協奏曲を完成させようとしてるのを知る。
そして、夫が見知らぬ若い女性と不倫関係にあったことも知る…。

時に、肉薄するようなドアップの表情を写すことで、台詞は少なくとも、特にジェリーの反発や戸惑い、諦め、そして、寛容へと至る心の動きが手に取るようにわかる。夫と娘の突然の死に引きづられながらも、なんとか精神の均衡を保とうとしてる。

ついには、夫の協奏曲を完成させようと働きかけて、ジェリーも知らなかった夫の愛人とお腹にできた子供をも、憎むことなく受け入れていく。

不幸に見舞われてしまった独りの女性の深い愛と受容の讃歌だと思う。苦悩を乗り越えて、生きることに正面から向き合う姿は崇高で美しい。

ジェリーを演じた女優さん、めっちゃ素晴らしいね。「汚れた血」「ポンヌフの恋人」の女優さんだ。

“青の愛”だけに、時折入るプールや宝石など、青の使い方が上手い。

このポーランドの監督、知らなかったけど注目だ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。