【古典邦画】「浮草物語」

もう一本未見だった小津安二郎監督の、1934(昭和9)年のサイレント映画「浮草物語」。Amazonプライムにて。

原作はジェームス槇(小津安二郎)。

ありゃ、この物語は前に観たなぁと思ったら、1959(昭和35)年に小津安自身がカラーで「浮草」としてリメイクしてたのだね。

「浮草」は、2代目中村鴈治郎と京マチ子だったが、コレは喜八シリーズの一本で、坂本武と八雲恵美子、飯田蝶子ら。

ストーリーは当然、「浮草」と一緒で、旅芸人一座が信州のある町へ興行に出かける。そこには座長の喜八が昔、自分の子・信吉を産ませたオツネが住んでいる。喜八は、旅芸人の子ではまずかろうと信吉には父親であることを隠していた。喜八は当然、オツネと信吉に会いに行くが、今の女房であるオタカが勘付いて修羅場に…。

昔は、芸人・芸能の世界では、こういう隠し子や愛人騒ぎは、いっぱいあったのだろうなぁ。

女房オタカの策略で、信吉を若くてカワイイ芸者オトキに誘惑させるけど、そのうち2人は本当に惹かれ合う。喜八が、いくら反対してもムダで、若い2人は家を飛び出してしまう。

雨続きで客入りが少なく、一座は財政難で解散へ。

喜八は、オツネの家でオトキを巡って信吉とケンカ、信吉に自分が父親であることを告白する。女房オタカは喜八と激しく罵り合う。雨が降る中、道を挟んで喜八とオタカが罵り合う有名なシーンもちゃんとある。が、やっぱりカラーの「浮草」がイイね。

つまりは、喜八の、昔の火遊びのおかげで、息子の信吉や母オツネ、女房オタカ、娘オトキの関係までメチャクチャになっちゃうのだが、そこに、血を分けた親子とはいえ、距離を置くと、やはり変わるものであり、絶対はないという小津安ならではの無常感を感じる。

信吉のために喜八は独り旅立とうと駅に行くが、ケンカ別れした女房のオタカと再会して、再び2人で汽車に乗るのだ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。