【古典映画】「一番美しく」

黒澤明監督の初期作品「一番美しく」。

1944年の、2作目の作品だから戦時中で、結果的に国策の戦意高揚プロパガンダ映画になるんだな。許可が降りないから、そうならざるを得なかったのかもしれんが。

戦争中に軍需工場で働く女子挺身隊の少女たちを描いた小品。

女子挺身隊ってのは、大戦中の国家総動員法に基づき、未婚の女子によって構成された勤労奉仕団体。主に工場での労働に従事した。黒澤監督のことだから、実際に工場に女優たちを入所させて厳しい条件下、撮影したんだろうな。

戦闘機などに使われる光学機器を生産する工場で、生産の倍増が発令、男子工員は通常の2倍、女子は1.5倍という目標数値が出される。
しかし、女子工員たちは、男子の半分ではなく、3分の2を目標にしてくれと懇願する。
発奮した女子たちによって、最初は、生産率も上昇するが、病気や疲労、ケガ、仲間同士の嫉妬や争いにより、下降してしまう。
泣き笑い、喜怒哀楽種々あって、周りの協力も得て、また女子工員たちは結束し生産率を上げる…といった話。

作業中に軍歌を唄ったり、鼓笛隊を組んで行進したり、空を飛ぶ零戦を見て鼓舞したり、スローガンが貼ってあったり、ついでに作業の休み中、バレーボールに興じ、滅私奉公が美徳とされた戦時中だということがよくわかる。

でも、黒澤監督らしく女子工員をなるべく人間的に描いてると思う。

主演の矢口陽子さんは、映画公開翌年に黒澤監督と結婚してる。撮影中、厳しく指導して口説いたのかしら。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。