白猫が、コンビニ袋になってしまった。

昨夜、会社帰りの出来事だ。

電信柱の影に白猫を見つけた。姿勢を低くし、腕を伸ばしながら静かに近づく。少し身を捩りながら電柱の影に隠れるが、逃げない。もっとじっくり間合いを詰めた方がいいのだろうけれど、終電が迫っていた私は少し強気に出る。猫のあごの下を目指し、腕を精一杯に伸ばす。しかし次の瞬間、指先に触れたのはコンビニ袋だった。

パニックのあまり「ひィッ」などと叫びながら勢いよく尻もちをついた拍子に、噛んでいたガムが器官に入ってしまった。電信柱に向かって体育座りをした状態で激しく咽るが、驚きすぎて息が吐けないので上手く咳き込めない。ものすごく苦しい。だけれども、その時の思考は100%、「白猫がコンビニ袋になってしまった」だった。次に考えたのは「うちで飼っているうさぎが茶封筒になっていたらどうしよう」。(なぜか、この瞬間に世界中の動物が袋になってしまったような気がしたのだ。さらにパニック。)   

「白猫だと思ったらコンビニ袋だった」と気が付いたのは、ガムをなんとか飲み込み、涙をぬぐった瞬間だった。同時に視線を感じて振り向けば、ステテコ姿のおじさんが驚愕の表情でこちらを見ている。私はそそくさと立ち上がって目礼をし、終電を目指して駅へと走った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?