枝垂れが好き ブーツにナイフと白樺の皮を少し

枝垂れが好き
暖かくなってきてから、友人宅へ行ったときのこと。
庭にはクリスマスローズが咲いていた。聞くと花だと百合も好きだがなかなか咲かないということだ。
「私枝垂れているものが好きなのかも」
友人が言った。
私も、枝垂れ梅、枝垂れ桜などが好きだ。枝垂れていることで、儚げなのか、控えめなのか。かといって決して元気のない様子に見えるわけではない。クリスマスローズを持ち上げて正面に来るようにして、こう咲いていたらちょっと違うんだよね、と言う。私は、クリスマスローズを真前から軸が見えるようにしてみたことがなかったので、あまりにもくっきりはっきりとした花の中心の部分に少しびっくりした。確かに、随分と印象が違うなあと思う。

車に乗っていると、様々な枝垂れ梅に出会う。公園に咲いているものだけでなく、家に咲いているものも魅力的だ。短く切り揃えられている傘のような浅いお椀形のもの。白い柵の間から白い真珠のような大きな蕾がたま簾のように伸びているもの。もう少し長めの、長い前髪のようなゆっさりと枝の伸びているもの。形は住んでいる人の趣味か、切り揃えた造園家の手によるものかわからないがどれも見ていて面白い。
今年は枝垂れている植物に注目してみようか。私はどんな形の植物が好きだろう。

ブーツにナイフと白樺の皮を少し
この間、友人と焚き火に行った。焚き火に手を当てるほどの寒さではなく心地よい春風の吹くような気温だった。
暖かいし二人だから小さな焚き火台でいいかということで、コンパクトサイズの食パンぐらいの四方の焚き火台で火を起こすことになった。
かといって私もいつも誰かに火を起こしてもらっているのでよくわからない。
「この皮に火をつけてみて」
薪の間に挟まっていた白樺の皮を取り出す友人。油が豊富だから焚き火の時は重宝するそうだ。
モンゴル人は、ブーツの中にいつでも火をおこせるように忍ばせているらしい。もちろん、遊牧民の人々はということだろうけれどさっと足のくるぶしのあたりから取り出して火をつけて弾を取れることの格好良さよ。同じくさっと使えるようにナイフも忍ばせているという話を聞いたこともある。
これまでなんとも思っていなかったが、最近ふとApple watchを身につけている人に注目するようになった。財布に時計でスマホで健康管理でもできる。色もモノクロからオールピンクのものまである。以前、インディアンのような格好をして走り回っている子供が出てくる中国映画で、その子供が赤いApple watchを使って人探しをしているシーンがあった。バイトの退勤時間まであと何分かapple watchを覗く学生がいて、身につけるってすごいことだなあと思った。いつでも使える、すぐそこにあるということ。
そう思うと、腕時計の装身具のような形で靴と足の隙間に白樺の皮を挟んでいることの格好よさをしみじみと感じたのであった。


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