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Adobe Analyticsの解説動画がupdateされているので、まとめてみた(導入実践篇)

入門篇の動画に続いて、実際にAdobe Analyticsを導入しようとなったときに便利な動画集の紹介です。
一般的にはAdobe Analyticsの導入は以下のプロセスで進めていきます。入門篇に出てきた分析サイクルとほぼ同じです。

Adobe Analyticsの解説動画がupdateされているので、まとめてみた(導入実践篇)

1. ビジネス要件定義書をつくる

ウェブ分析ツールの導入でBusiness Requirements Documents(ビジネス要件定義)、というと仰々しく聞こえるかもしれません。ここでは「分析プロジェクトにおけるビジネス上の課題解決は何かを特定すること」を「ビジネス要件」として捉えてもらえるとよいです。

分析ツールを入れて、何を知り、何に対する問題に気づき、解決策を考えたかったのか、という根本の部分を明確にすることで、計測するデータの無駄を省き(導入コストの節約)、導入直後の活用をスムーズにまわすことができます(運用管理コストの節約)。

実際に私が業務で携わるときにも、ここのプロセスは時間をかけます。いきなり「計測するデータは〜、設定は〜」、という話にはせず、何を知るための分析ツールなのか、を定めます。非常に重要なプロセスである一方、コミュニケーションの齟齬を生むことが多く、要件定義をめぐる混乱が現場でよく起きます。

うまく要件定義をするために必要な視点は、「全社にとって」「どの部門にとって」、「誰にとって」といった切り口で目的をブレイクダウンすること。
陥りやすい失敗でよくあるのが、「全社にとって、ウェブ分析」とは、という大きい視点でのみ要件をまとめるだけで、部門や担当者レベルの要件まで落ちず、実際に運用の場で、これでいいんだっけ?となってしまうこと。
分析ツールを使う人の視点、分析ツールから得られる示唆を受ける人の視点、分析ツールを管理する人の視点、様々な人の視点を忘れずに目的を定めることが大切です。

さて、動画の中で出ている要件定義書(BRD=Business Requirement Documentと呼びます)。実はAdobe Analyticsのヘルプで公開されています。業界別のテンプレートが複数存在しているので、いずれも眺めてみると面白いと思います(英語だけど)。

2.計測設計書をつくる

動画では、Solution Design Reference(SDR)というシートで計測する内容をまとめておきましょう、という趣旨でシートの使い方を解説しています。シート自体は、1.の動画で紹介したBRDとセットになっています。シートの「Variable Map」を参照して、実際の中身を参照してみてください。

運用の現場では、このシートを使って、「計測するこれこれのデータはこの変数に入れるのである」、というものをガシガシ決めていきます。

作成のポイントは、BRDで定めた内容に忠実に計測する値が落とし込まれていることはもちろんのこと、計測データのタイミング、データ取得方法、データ値の型や用途が一覧化できていること。
どんなデータが計測されているのか、を他人に引き継ぐ際、最低限これさえ見れば分析する際に困らないようにするという状態目標を念頭につくることが必要です。これはどんな分析ツールであっても同じことが言えると思います。

SDRは会社や人によって、色々なフォーマットが存在しているようですが、特段フォーマットの正解はないです。このSDRを見ればビジネスユーザーも、開発ユーザーも同じ目線でツールの運用ができるという状態を満たすことができれば、問題ありません。(せっかくなのでテンプレートは利用したほうが開発工数は少なく済むメリットはあると思いますが・・・)

3.計測実装や設定を知る

2.のSDRで定めたことを設定するプロセスです。ここはいくつか動画が小分けになっています。最初はAdobe Analyticsの管理画面で変数を定義する作業を紹介した動画です。イメージリクエストから送られたデータをそれぞれ格納する箱をつくる作業ね、と捉えてもらえるとよいです。

管理画面側で計測する変数を定めたら、それぞれの計測変数タイプに応じた実装を行うことになりますが、おさえておきたいAdobe Analyticsの変数タイプに関する動画が3本です。いきなり具体的な話になりますが、概念としてどう捉えるべきかを中心にテイクアウトいただけるとよいです。

▼コンバージョンイベント(s.event変数)について

カートに入れた回数、購入した回数、特定の箇所をクリックした回数などを計測する目的で利用する変数です。この変数で計測したデータは、指標として扱われます。動画中にもありますが、データテーブル上で「数量」で示される部分です。
ポイントは2つ。
1つめは指標の型を選べること。「回数」の指標だけじゃなくて、「金額」や「数字(+や-を含む)」といった指標でも計測できることがポイントです。これによって、ECサイトの計測や、B2Bサイトのスコアリング計測が可能になるわけです。詳しくはコチラのヘルプを読んでもらえるとよいです。
2つめは、計測の持続性と配分を選択できること。都度なのか、訪問毎なのか、計測の持続性指定ができ、また、ディメンションで指標をクロス集計する際に数量を均等配分にするのか、最初のもの最後のものといった柔軟な指定ができます。

▼トラフィック変数(prop変数)について

計測したいコンテンツのプロパティ(だからprop変数)を格納する変数です。この変数の特徴は、「Aページ」→「Bページ」という遷移をした際の各プロパティの遷移をパス分析できること。プロパティ毎の「変遷」が辿れる変数がゆえに、トラフィック(推移)変数と言われるわけですね。
また、ページビュー、訪問回数、実訪問者数、滞在時間、直帰等々の「トラフィック基本指標」と組み合わせて利用する変数であると覚えておくとよいです。つまり、データテーブルでいうところのディメンション(指標の切り口)になるということです。

コンバージョン変数(eVar変数)との計測変数の使い分けが問われるケースが多いですが、上記のようなプロパティ値の変遷・推移を追う必要がある(パス分析する必要がある)ものは、prop変数で計測する、と整理するとよいでしょう。
コンテンツのプロパティ変数がゆえに、持続性はなくイメージリクエストが発生したそのタイミングの計測しかできません。よって、コンバージョンイベントとクロスして利用することは推奨しません。(Workspaceでクロスできちゃうので、誤解を招きやすい)


▼コンバージョン変数(eVar変数)について

トラフィック変数同様、データテーブルにおいてディメンション(指標の切り口)になる目的で計測する変数です。主に、コンバージョンイベントとクロスして利用します。購入につながった広告キャンペーンはどれだろう、ダウンロードに貢献したページはどれだろう、といったことを分析するときに必要になります。
例であげたようなことを計測するときに、重要になるのが、「値の持続性」です。購入につながった広告計測の例で考えると、複数の広告を複数回クリックした場合、「どこまでさかのぼって購入につながった広告と評価するか」を定義する必要が出てきます。一概に最後にクリックした広告でいいじゃないか、という割り切りもありますが、果たしてそれで「カスタマージャーニー」を捉えた分析になるのでしょうか?
コンバージョン変数の設定をする際にはこの持続性をどう設定するか、が重要になります。分析用途に応じ、同じ値を持続性を分けて計測しておくということもときに有効なケースもあります。ここは個別の正解はなく、要件定義時における、コンテンツ分析要件、広告分析要件で目的に応じた選択を選べるとよいです。

4.計測検証を知る

これは検証ツールを使ってしまうと楽ですよ、という動画です。
検証ツールはChrome用としてコチラで紹介されています。挙動を試してみたいという方は、アドビのホームページでこのツールを動作させてみるとよいと思います。
Adobe Analyticsの計測実装を覚えるコツは、導入されているサイトで検証ツールを使ってどんなデータを計測しているのか、を目で見ることです。なんでこんな値を計測しているのか、を思い巡らせることがビジネス目的の構造化の練習として役立ちます。

5. 運用にあたって基礎をおさえる

導入完了後、「では貯まったデータを読み解きましょう」、ということになります。その際、一番最初に見るであろう指標についての基礎解説動画です。トラフィック基本3指標の「ページビュー」「訪問回数」「実訪問者数」は基本概念なので、一番最初にマスターするとよいです。
そして、昨今のAdobe Analyticsでは、Workspaceを使ってレポートをつくるが主流です。(数年前に主流だったReport&Analyticsはあまり使わなくなっている)

・・・
実際にAdobe Analyticsの導入となった場合は、もう少し各プロセス毎に知らなければならない製品そのものの仕様や決めるべき検討事項はありますが、導入プロジェクトの大枠をおさえる上で必要なエッセンスは動画としてまとまっている印象です。導入プロジェクトを実際に携わることになった、という方に少しでも参考にしてもらえたら幸いです。