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デジタルコンテンツ最適化を定着させる方法

Adobe AnalyticsとAdobe Launchの話しを一通り書いたので、今回はAdobe Targetの話を書いてみようかと思います。Adobe Targetは、Adobe Analytics以上に情報がないので、どんなことができるんですか?について説明してもイマイチ理解が乏しくなるのが実情です。

それは、おそらく「デジタルコンテンツ最適化」についての定義が人それぞれであり、具体的なイメージも人それぞれになるのが実情だからではないかと思います。

PDCAというコトバの意味は理解していても、具体的にどうやるんだっけ?という話までは、コンテンツ運用者間では至らず、結局、「経験と勘で良くするんだよ」という笑うに笑えない現場になっていないでしょうか。

今回は、デジタルコンテンツ最適化の意義とAdobe Targetの関わり方について解説していきたいと思います。

コンテンツ最適化をやる意味

デジタルエクスペリエンスは模索の繰り返しです。様々な人により良い体験をつくるが故、一度つくっておしまいではなく、継続的により良い効果を出すために、「最適化」を行うことが求められます。
ただし、闇雲な最適化は推奨しません。必ず以下のような目的があってこそのデジタルコンテンツ最適化プロジェクトだという共通認識がなければやる意味はないと思っています。

Chart1 - いまさらコンテンツ最適化

コンテンツ最適化プロジェクトの構成要素

実際にA/Bテストをはじめとする最適化プロジェクトが始まる際に何を意識しておけばよいでしょうか。ツールがあれば簡単に始められますよ、ということが売り文句ではあるものの、「整えるべきプロセス」と「考えるべき軸」の両輪が整わなければ、運用に乗りづらくなります。

Chart2 - いまさらコンテンツ最適化

「ツールがあれば」というのはあくまでもプロセスの部分であって、考えるべき基本軸の部分が抜けていれば、プロジェクトは頓挫します。最適化プロジェクトが難しいのは、テクノロジーとコミュニケーション設計・企画の両方を同時並行ですすめる必要があるから。これまでやったことがないチームに最適化プロジェクトを持ち込んでうまくいかなくなるのは、この2軸でプロジェクトをすすめる認識が関係者にないケースがほとんどです。プロセスを整える話ができるメンバー、本質的に顧客体験を整える話ができるメンバーが揃えた上で、プロジェクトを計画するとよいでしょう。

最適化プロジェクトで考えるべき軸の整え方

考えるべき基本軸を整えるにあたっては、以下のようなイメージで進めていくとよいです。最初に目標達成への設計図をつくることで、プロジェクトが迷走することを防ぐことができます。

Chart5 - いまさらコンテンツ最適化

最適化プロジェクトは、手初めに訪問者全体に対して行うことが多いですが、効果を実感していくには、訪問者セグメントや最終ゴールへの中間ポイントを小分けにして、改善する箇所を細分化して、施策を積み重ねる計画を立てていくことが重要です。
チャート内の①〜③に関しては、データを根拠にすすめていくことを推奨します。専門家によるヒューリスティック分析で考えるというやり方も、最適化プロジェクトに慣れるという観点で最初は否定しませんが、経験上、進めていくうちに行き詰まることが多いです。

データを根拠に、が故に、最適化プロジェクトには関わる役割メンバーが多くなりますし、役割関係なく各自にデータを根拠に物事を考える習慣が求められます。データで物事を判断することにアレルギーがあるメンバーがいるう場合、思いつき発言をデータで表しカバーしあうチームづくりの工夫も必要です。施策を繰り返すうちに、数字改善のゲームとして楽しめる空気が出てくれば、最適化プロジェクトが根付いたといえます。如何に「楽しむプロジェクトにできるか」の空気づくりが、ビジネス企画やテクニカル技術よりも重要になります。

最適化プロセスに適したAdobe Target

最適化プロセスは、大まかに4つの要素で捉えることができます。以下はその要素とAdobe Targetの関わりを示したものです。聞きなじまない用語と機能名ばかりですが、今回はそういうものがあるのね、と思ってもらえればよいです。

Chart3 - いまさらコンテンツ最適化


(1)「つくる」
最適化の企画と制作を行うことを指します。「誰に」「何を」「どう体験させるか」を考え、実際に体験を構成するためのクリエイティブをつくる作業が含まれます。
まずはAdobe Targetを使う以前に、最適化の企画をつくります。プロジェクトリーダーは、企画を考える人、企画をクリエイティブに落とし込む人、クリエイティブ配信を設計・設定する人、結果を分析する人を巻き込み、施策の構想と計画を立てていきます。
クリエイティブの絵が完成した後に、ようやくAdobe Targetの管理画面からクリエイティブを登録する作業(Adobe Target用語でオファーという)が始まります。ここでの具体的な設定内容は、上記図の通りです。
オファーに関する詳しい解説については、以下にまとめてみました。

オファーの概念と種類
オファー生成のエディターVisual Experience Composerについて
レコメンドのデザインについて

(2)「管理する」
施策計画を実現させるための設定を行うこと指します。施策実施にあたり裏で人が控えて、人力でコンテンツを出し分けするわけはありません。
(A)狙ったセグメントを判定し、
(B)対象に出すべきコンテンツを自動的に出し分け、
(C)その結果を集計して妥当性を示し、
(D)結果に応じて出し分けをさらにチューニングしていく、
という一連の作業を、ツール側で「自動化」しています。
ここでAdobe Targetの理解力とプログラムの技術力が問われます。

1つ1つの施策のことをAdobe Targetでは「アクティビティ」と呼びます。アクティビティ設定に必要な情報を取りまとめ、設定を完了させることが最初の砦になります。(施策実施場所と箇所の特定、体験内容の選定、ゴール設定etc)

次は、狙うべきセグメントの設定です(Adobe Targetでは「オーディエンス」と呼びます)。どのようなデータを根拠に来訪者を狙うべき対象として判定し、その根拠となるデータをどこから引用するのか、を組み立てて、オーディエンスを構築していきます。
実際の現場ではAdobe Launchを使ってHTML内の値を条件に活用したり、Adobe Target内で特定のURLにアクセスしたら条件に当てはまったオーディエンスとするというフラグ付けプログラムを記述していきます。

1つ1つの機能については、ヘルプ内の記事や動画を参照いただくとイメージがつかみやすいと思いますので、ぜひ参照してみてください。
アクティビティ
オーディエンス

A/Bテストや行動ターゲティングではここで設定は完了しますが、レコメンデーションやパーソナライズではそれぞれの最適化アルゴリズムを決めていく作業を行います。ここは解説すると話が長くなるので別の機会に譲ります。

尚、このオーディエンスはある程度規模を見込まないと、施策結果の有意差が検証できなくなります。ニッチすぎるオーディエンスを作らないためには、最初のプラニングで意識をしておきましょう。
テスト設計にあたってのサンプルについては、以下のヘルプも参照するとよいと思います。
A/Bテストの期間について
A/Bテストで誤りやすい考え方

(3)「配信する」
体験を届ける方法を選定することを指します。テストなのかターゲティングなのか、そのとき届けたい体験次第で手法(アクティビティ)を絞り込みます。A/Bテスト、多変量テスト、ターゲティング、レコメンド、パーソナライズは意味を取り違えられやすいですが、しっかり意味を使い分けられるようにしていきましょう。
詳しい解説はAdobe Targetのアクティビティガイドを参照ください。(英語だけど)どうしても日本語訳でという場合は、こちらのヘルプを参照ください。


(4)「分析する」

施策結果を「つくる」「管理する」「配信する」に反映することを指します。施策結果の信頼度可視化(つくるに活かす)がAdobe Targetにおける分析機能ではありません。人が分析するまでもなく、Adobe Target側で分析を行い、最適化している結果がレコメンデーションやパーソナライズに反映されていきます。故に「管理する」「配信する」にも作用するものとして位置付けることができます。
分析内容の詳細部分はヘルプを参照ください。

実際のAdobe Targetプロジェクトはどうすすむのか?

Chart4 - いまさらコンテンツ最適化

このチャートは、これまで汎用的なコンテンツ最適化プロジェクトの解説を踏まえ、Adobe Targetの導入を加味したプロセスを表したものです。Adobe Analyticsの導入プロジェクトと同様のプロセスを踏んでいきます。
プロジェクト以前にTargetの機能や仕様を把握しておきたいという場合は、こちらのWelcome Kitを参照してみてください。(英語ですけど)

要件定義
冒頭で示したような目的の整理や目標数値達成の道筋を立てていきます。
また、導入するにあたっての技術要件もこの段階で把握することが手戻り少なくするポイントです。ここに関しては、Adobe TargetのヘルプにもRFIの雛形が公開されているので、参考にしてみてください。

最適化設計
まずは施策の計画をつくることが重要です。どのタイミングでどのような施策を行うか、最低3ヶ月先を見据えた計画を立て、常に目標達成の意識を忘れないようにします。
ロードマップと合わせて、直近の施策詳細イメージをつくります。絵に書いた餅にならないように、技術メンバーも交えて共同で施策設計を行うことが重要です。(小声で・・・Adobe XDを使ってもらえるとこのあたりのコミュニケーションがスムーズにいくと思います。)

実装・設定
ここは専門的にならざる得ないフェーズです。設計内容を実装に落とし込むにはAdobe Targetの製品理解が求められます。

技術面では、大まかに以下のタスクを行います。対応するヘルプも合わせて記載してみたので、参照してみてください。
(1)Adobe Target自体の環境設定
(2)Adobe Targetのファイル(at.js)導入Adobe Launch経由を推奨
(3)Adobe Target上でオーディエンス作成
(4)Adobe Target上でオファー作成
(5 ※)Adobe Target上でロジック作成 ※レコメンデーションをやるときのみ
(6)Adobe Target上でアクティビティ作成
 - A/Bテスト
 - 多変量テスト
行動ターゲティング
パーソナライズ
レコメンデーション

ビジネス面では同時並行で、クリエイティブの制作を行います。具体的には出し分けに使う、画像やテキスト、あるいはコンポーネント(特定の機能をひとまとめにしたもの)をAdobe Target上で登録できる状態にします。技術面のタスク(4)オファー作成までにタスクを完了させておくようにしましょう。

表示・計測検証
Adobe Target導入プロジェクトで一番ドキドキするプロセスです(いろんな意味で)。大きくは2つのタスクがあります。
(1)きちんと意図した通りの表示になっているかを確認する
- 表示検証方法については、こちらを参照ください。
- 送受信データの検証方法については、Adobe Analyticsの項でも紹介したAdobe Experience Cloud Debuggerを利用する方法があるので、こちらを参照ください。
- くわしいレスポンスも含めて確認したい場合は、こちらを参照ください。
- そもそものAdobe Targetの通信プロセスってどういうもの?を知りたい場合はこちらを参照ください。
- そもそもの対象ブラウザについてはこちらを参照ください。

(2)意図したレポートが挙がってきているかを確認する
そもそも訪問者としてカウントされているか、コンバージョンアクションをしてきちんとカウントされているか、を確認します。基本は見たまま確認をすれば問題ないですが、たまにハマる場合があるので、レポートのFAQも参照してみてください。

運用開始
ここまでくればあとは結果を日々追い、信頼度高い結果が出た時点で次の施策に移す、ということを繰り返していきます。一段落してやれやれとできないのが最適化プロジェクトの性です。毎日結果をレポートをメンバー間で共有して、予想をゲームとして楽しむなどしてモチベーションを保つのも工夫の1つです。

最適化プロジェクトに終わりはない

コンテンツが存在し続ける限り、最適化というコンセプト自体はなくなることはないと思います。今回は、デジタルコンテンツ自体の最適化ということで言及してきました。ですが、最適化対象は「コンテンツ」だけではなく、チームメンバー各自の「スキル」、1つ1つの工程「プロセス」、など広げていくことができます。本記事を通じて、Adobe Targetというソリューションへの理解のみならず、「最適化」というソリューションを組織に根付かせ、様々な場面で最適化サイクルが広まるヒントとなれば幸いです。