Tomohiro

小説やエッセイを書いてます。写真も撮ってます。多くの方に見ていただきたいと思い始めまし…

Tomohiro

小説やエッセイを書いてます。写真も撮ってます。多くの方に見ていただきたいと思い始めました。 よろしくお願いします。

マガジン

  • 【連載中・エッセイ】私の"うつ"体験記

    うつになったときの話をする。 私、28歳。社会人4年目の冬の話。 自分の体験を話す・書き記すという営みが、自分に何をもたらすか分からなくても。 どこかの誰かに、何を与えるのか分からなくても。何を残すのか、分からなくても。

  • 【連載中・小説】人間になりたい

    全10話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。

最近の記事

未知なる心の世界へ。【書評】 心が分かるとモノが売れる」

当たり前のようだけど、マーケティングや広告宣伝は、人の心を動かすことが最大の目的だと思う。「これだけモノやサービスがあふれている現代、マーケティングにおいて人の心を動かすことはさらに重要だ」なんて言説は、方々で語られている。”お客様”としての自分を省みても、それは自明の理と言ったところだろう。 クリエイティブディレクターの鹿毛康二氏の著書、「心が分かるとモノが売れる」には、そんな人の心を動かすためのメソッドが示されている。 「人の心を動かすためのメソッド」なんて聞くと、「

    • 人間になりたい Part8

      全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 第一話から読む *** 8 「あそこでみちると会うとは思わなかったよ」 デザートで出されたチョコレートケーキをフォークですくいながら、佐伯は言った。 「私も、佐伯とあそこでばったり会うとは思わなかった」おうむ返しのように、私は答えた。 佐伯とは前回交わした約束通り、週末の土曜日に私の家の近くにあるカフェでランチを一緒にすることに

      • 私の"うつ"体験記 第5話「ブックチューバーの動画に心を救われた話」

        うつになったときの話をする。 私、28歳。社会人4年目の冬の話。 自分の体験を話す・書き記すという営みが、自分に何をもたらすか分からなくても。 どこかの誰かに、何を与えるのか分からなくても。何を残すのか分からなくても。 前回の話を読む 第1話から読む *** 会社の人の勧めで心療内科を受診し、医師から1ヶ月の休職を勧められた私は、医師の勧めに従うことにした。 休職したところで何が変わるんだろう。そう思わなくもなかったけど、「とにかくこの疲れきった心と体を休めたい

        • 人間になりたい Part7

          全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 第一話から読む *** 7 「じゃぁ、またなー」甲高い声を出しながら千鳥足で歩く香月先輩の後ろ姿に向かって「お元気でー」と私は声をかけた。 香月先輩はくるりと後ろを振り向いて、真っ赤な顔をしながら親指を突き立てた。こういう暑苦しいところが、この人には昔からある。 携帯を見たら、時刻は22時を回っていた。酔いを冷ますために水でも飲も

        未知なる心の世界へ。【書評】 心が分かるとモノが売れる」

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        • 【連載中・エッセイ】私の"うつ"体験記
          3本
        • 【連載中・小説】人間になりたい
          8本

        記事

          人間になりたい Part6

          全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 第一話から読む *** 6 「しかし、神谷さんも変わらんね」懐かしい九州弁で話すその人の姿を見て、「香月先輩こそ変わってないですよ」と私は言った。 「そう?だいぶ太ったけどね」ビールジョッキを片手に高校生の時と変わらない笑顔を見せる香月先輩の姿を見ていたら、絵の具の匂いが漂う古びた部室の風景が思い浮かんだ。 「でも、びっくりしまし

          人間になりたい Part6

          豆塚エリさんの講演会を聞いてきた。

          昨日は福岡で開催された、詩人の豆塚エリさんの講演会に足を運んだ。 豆塚さんの経歴については、この記事に詳しく書かれているので割愛する。 今回、この講演会に足を運んだのは、まったくの偶然だった。 数週間前、天神を歩いていたら急に便意を感じ、講演会の会場であるレソラ天神のお手洗いを借りた。そのとき、玄関口に置かれていた講演会を知らせるチラシが目に留まった。 しかし、この時点で豆塚さんの著書はまだ読んでいなかったし、購入すらしていなかった。ただ、以前ライターの古賀史健さんが

          豆塚エリさんの講演会を聞いてきた。

          人間になりたい Part5

          全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 第一話から読む *** 5 「でさ、そのヒゲオヤジが言うわけよ」チエミは2本目の缶ビールを片手に、顔を真っ赤にしながら言った。 「これが今の流行りなのかって。それで私も言うわけよ、確かにそういう側面もあるかもしれないけど、完全にそうとは言えない、あくまでこれがうちの会社の商品の特徴なんですって。何回も何回も。それでももぉー聞く耳持た

          人間になりたい Part5

          私の"うつ"体験記 第4話「はじめての心療内科」

          うつになったときの話をする。 私、28歳。社会人4年目の冬の話。 自分の体験を話す・書き記すという営みが、自分に何をもたらすか分からなくても。 どこかの誰かに、何を与えるのか分からなくても。何を残すのか分からなくても。 前回の話を読む 第1話から読む *** 「心療内科に行った方がいい」 Nさんにそう言われたとき、驚いている自分がいた。 心療内科?俺、そんなにヤバイ状態なのか?でも、そう言われることを半分望んでたんじゃないか?でも、行ってどうなるんだ?仕事は?

          私の"うつ"体験記 第4話「はじめての心療内科」

          「人間になりたい」Part4

          全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 第一話から読む *** 4 「12日から行方がわからなくなっていた少女が本日、無事保護されました」 テレビから聞こえてくる女性アナウンサーの声と「よかったねー」というチエミの声を背中に受けながら、私はキッチンでスパゲッティーを茹でていた。遠山さんのバーで食べたナポリタンの味が忘れられなくて、自分でも作ってみようと思ったのだ。沸騰する

          「人間になりたい」Part4

          私の"うつ"体験記 第3話「会社の人に相談してみたら、思ってもみないことになった」

          うつになったときの話をする。 私、28歳。社会人4年目の冬の話。 自分の体験を話す・書き記すという営みが、自分に何をもたらすか分からなくても。 どこかの誰かに、何を与えるのか分からなくても。何を残すのか分からなくても。 前回の話を読む 第1話から読む *** 「相談したいことがあるのですが、明日お時間をいただけますか?」 会社のとある人に、私はメールを送った。 その人の名はNさんと言う女性の方だった。 Nさんに相談してみようと思ったのには理由があった。

          私の"うつ"体験記 第3話「会社の人に相談してみたら、思ってもみないことになった」

          勉強ができるとか スポーツができるとか そんなことはどうでもよくて ただ 自分の好きなものを好きと 胸を張って言える 人の好きなものを 大切にできる そんな子に 育ってほしい 幸せに なろうな ようこそ、この世界へ。 2023年2月

          勉強ができるとか スポーツができるとか そんなことはどうでもよくて ただ 自分の好きなものを好きと 胸を張って言える 人の好きなものを 大切にできる そんな子に 育ってほしい 幸せに なろうな ようこそ、この世界へ。 2023年2月

          「人間になりたい」 Part3

          全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 第1話から読む *** 3 次の日は仕事が休みだったので、10時頃に目が覚めた。結局昨日は遠山さんとの会話を終えた後そそくさと家に帰り、夜中の1時にはベッドに入った。 残り1枚だけになった食パンを食べながら窓の外をぼーっと眺めていると、ベランダにツバメが止まった。私はふと、昨日遠山さんに言われた「素敵な名前ですね」という言葉を思い出

          「人間になりたい」 Part3

          私の"うつ"体験記 第2話「うつ経験者の親友に相談してみたら」

          うつになったときの話をする。 私、28歳。社会人4年目の冬の話。 自分の体験を話す・書き記すという営みが、自分に何をもたらすか分からなくても。 どこかの誰かに、何を与えるのか分からなくても。何を残すのか分からなくても。 前回の話はこちら *** 木曜日。私は会社を休んだ。 「休んでいる場合じゃないのに」 そんな不安が頭の中を支配していたけど、妻からの強い説得でとにかく1日だけ休むことにした。会社には「妻の体調が悪いので」と適当に嘘をついて。 その日は本を読ん

          私の"うつ"体験記 第2話「うつ経験者の親友に相談してみたら」

          最近話題のChatGPT、火の鳥 未来編に登場する人工知能ハレルヤを思い出すのは私だけ? でも、実際使ってみると「すげー」って変に楽しくなっちゃうから怖い。 月並みな表現だけど、自分の頭で考えるって大事。

          最近話題のChatGPT、火の鳥 未来編に登場する人工知能ハレルヤを思い出すのは私だけ? でも、実際使ってみると「すげー」って変に楽しくなっちゃうから怖い。 月並みな表現だけど、自分の頭で考えるって大事。

          「人間になりたい」 Part2

          全20話予定。原稿用紙148枚の中編小説です。 できるだけ多くの方に読んでいただきたいと思い、掲載しました。 ぜひ読んでみてください。 前回の話はこちら *** 2 電車から降りて改札に向かう。珍しく残業をしたせいで、時刻はもう22時を回っていた。 駅を出てすぐのコンビニでサラダでも買って帰ろうかと思ったが、結局コンビニにも寄らず、住んでいるマンションの近くにあるファミレスにも寄らず、駅から自宅へ向かう途中、少し入り組んだ道を入ったところにあるバーになぜか入っていっ

          「人間になりたい」 Part2

          私の"うつ"体験記 第1話「私の心が音を立てて崩れ落ちた日」

          うつになったときの話をする。 私、28歳。社会人4年目の冬の話だ。 ただ、自分があのとき本当にうつだったのか、今でも分からない。 自分よりもっとひどい症状が出た人だっているから。 自分よりもっと長い期間、会社を休職した人だっているから。 ただ、あの人に比べて自分は症状が軽いから大丈夫。そんな考えが、結果としてもっと悪い状態を引き起こすことは知っている。 そもそも苦しみに高いも低いもない。少しでも苦しいと感じたら、「誰か助けて欲しい」と声を上げた方がいい。 そこに

          私の"うつ"体験記 第1話「私の心が音を立てて崩れ落ちた日」