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Web3.0型資金調達「Grant(グラント)」とは

こんにちは、Techtecというブロックチェーン会社をやっている田上と申します。先週那須で開催されたIVSにて、「DeFi・ブロックチェーンビジネスの最前線と法規制」セッションに登壇してきました。

その中で、新たな資金調達手法として「Grant(グラント)」というスキームがあることを紹介しました。グラントはWeb3時代には当たり前のスキームですが、日本では全くと言っていいほど知られていません。

本noteがスタートアップの選択肢を増やす機会に繋がれば幸いです。その暁には、ぜひ一緒にツイ廃活動しましょう。@tomohiro_tagami

IVS登壇資料

↑弊社はこれまでに6度、アメリカやイギリスなどの企業からグラントで資金調達を行なっています。

グラントとは

グラントとは、日本語に置き換えると「競争的資金」「助成金」に相当する言葉であり、主にテクノロジー系の研究開発の文脈で利用されている資金調達スキームです。海外では多くの企業にとって一般的な手段となっています。

グラントはOSS(オープンソース)のカルチャーを背景に誕生しました。OSSのプロジェクトをいかに収益化しスケールさせるかというところで生まれた資金調達手法だといえます。

OSS発なので、研究者や企業といった立場はあまり関係なく、プロジェクトに手を挙げて承認された人が資金を調達できるのが特徴です。調達金額の相場は、日本円で100万円代~数億円代と幅があります。

グラントの特徴は、株式による調達と違って議決権に影響を与えない点です。会社法の枠組みによる資金調達からは外れ、法律の影響を受けることもないため、資金を調達する際にスムーズな意思決定が可能になります。しかし、日本企業の多くは国内を主戦場としておりOSSの文化もあまり根付いておらず知名度が低いため、グラントによる資金調達事例はほとんど生まれていません。

グラントの進め方

グラントは、基本的には公募制です。フォームに申し込み後、書類審査が行われ、通過したら資金提供者とWeb面談が実施されるというのが通常のスキームとなっています。

グラントを使って資金調達する場合、基本的に資金を提供する側と受け取る側とでマイルストーンを設定するのが一般的です。このマイルストーンに従って、一定の資金が支払われる仕組みとなっています。資金の提供側は、「自社のサービスを使って何かプロダクトを開発すること」といった内容をマイルストーンに設定するのが基本です。

このようにして、提供側の事業を拡大させることにつなげる算段となっています。OSSの文脈から誕生したのもうなずけるでしょう。

なお、先述の通り議決権に影響を与えないため、グラントの提供側は基本的に企業やプロジェクトに限られます。金銭リターンを求める独立系ファンドは、IPOやM&Aといった出口戦略を必要とするためグラントの手法は使えないと言えるでしょう。

グラントが流行る背景、資金調達の現状と課題

株式会社の場合、株式や融資による調達が一般的であり、非営利団体の場合は寄付による調達も考えられます。以下ではまず昨今の資金調達における課題について触れていきます。ここでは立場を株式会社に限定し、海外からのグラントによる資金調達との比較観点で言及していこうと思います。

着金まで時間がかかる
外部から資金を調達する場合、金額が大きくなるほど着金までの時間も長くなります。これは、どの手法を使っても同じといえるでしょう。特に、ディープテックと呼ばれる最先端テクノロジーを扱う専門性の高い領域の場合、前提となる投資家への説明コストが高く、本質的な話に入るまでに時間がかかってしまいます。

おおよその目安として、シード期の調達で着金までに数カ月~半年、シリーズA以降で半年~1年以上といった期間が必要になってくるのではないでしょうか。そのため、経営陣は常に資金調達に動いていなければならない状態になります。

これは、創業期のベンチャー企業において非常に大きな問題だと言えるでしょう。数人しかメンバーがいない状態で経営陣が常に資金調達に追われていては、プロダクト開発に注力できないからです。

グラントの場合、この説明コストをかける必要がない点で時間短縮が可能となります。

当局への届け出など膨大な事務作業が発生する
資金調達に時間がかかる原因の1つは、膨大な事務作業が発生することです。資金調達に際しては、投資契約書や登記申請書、定款の変更、割当通知書といった膨大な量の書類を作成しなければなりません。

そしてそのほとんどに印鑑が必要であり、ステークホルダーが増えるほどに時間も費用も多分にかかってしまいます。実際に経験した身としても無駄な作業だと感じました。

グラントの場合、事務作業と提出書類の数が相対的に少ないのが特徴です。

グラントのメリット

ここからは、グラントのメリットについて考察していきます。

各国規制の影響を受けない
株式で海外から資金調達を行う場合、資金の提供側と受け取る側とでお互いの国の法規制を意識しなければなりません。たとえば、適格機関投資家の定義1つをとっても、米国と日本とでは大きな違いが存在します。

グラントを使えば、海外からの資金調達であってもこれらの問題を気にすることなくスムーズに調達を実施することが可能です。グラントで調達した資金は、ほとんどの場合で売上や雑収入として計上されるため、通常の決算と合わせて処理することができます。先述のマイルストーンに従った返済条項が契約に組み込まれる場合もありますが、その場合は負債として計上されると思われます。

これは国内に閉じた場合でも同じことが言えます。たとえば、独立系ファンド(VC)と企業内ファンド(CVC)とでは、そもそも法人格が異なるため組成時にも異なる法規制の枠組みが適用されます。

グラントであれば、法人格を意識することなく資金提供できるため、各国規制や会計上のルールを気にする必要がないのです。

前提となる説明コストが低い
ディープテック領域における資金調達特有の問題も、グラントで解消できます。先述の通り、この領域では前提となる投資家への説明コストが高く、本質的な話に入るまでに多くの時間を費やしてしまうことが少なくありません。

グラントはOSSを背景に持つため、テクノロジー系の研究開発の文脈で利用されることが多くなっています。これはまさにディープテック領域のことであるため、資金の提供側もある程度の知識・インサイトを有している場合が多いです。

もちろん、まとまった資金を調達する場合には説明コストは避けられませんが、シード~アーリーフェーズにおける調達の際にはグラントは大いに活躍するのではないでしょうか。

事務作業が発生しない
売上や雑収入、負債として計上されるグラントは、議決権に影響を与えないため当局への細かい届け出が不要となります。これは、プロダクトの開発にリソースを集中したい創業期のベンチャー企業にとっては非常に大きなメリットです。

支払う側の事業拡大に直結する
グラントでは、資金を提供する側にも大きなメリットが存在します。先述の通り、グラントを使って調達する場合は両者でマイルストーンを設定し、このマイルストーンに従って資金が支払われる場合がほとんどです。

マイルストーンには、自社サービスの成長に直結する内容を設定する場合が多くなっています。内部で新たに人材を採用してから機能を拡張し新規ユーザーを獲得する、といった一連のプロセスよりは、外部のリソースを活用した方が費用対効果が高い場合もあるでしょう。グラントは、自社サービスのエコシステムを拡張したい場合に最適な資金提供方法なのです。

グラントのデメリット

グラントのデメリットについても触れておきましょう。これは、メリットをそのまま逆にして「少額になる可能性が高い」「課税対象になる」「返済の可能性が発生する」の3点があげられます。

少額になる可能性が多いのは、複数の企業に資金提供し、また意思決定のプロセスを簡略化しているためです。グラントは企業側も資金提供先を1社に限定せず、多くの企業に助成します。条件に合っていれば助成対象として扱うため、この点で意思決定のプロセスを簡略化しているのです。

また、売上または雑収入として計上される場合があるため、課税対象になるケースもあります。さらにマイルストーンに従って資金提供されるため、返済の可能性が発生することにも留意しておきたいところです。

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グラントを含めた「海外からの資金調達」の意義

最後に、グラントを含め海外から資金調達することの意義についてです。個人的には、海外でサービスを展開していくのであればそのための資金も海外から調達した方が資本効率が良いと感じています。

グラントで実際に海外から資金を調達した経験を元に、主に3つのメリットを紹介します。

海外市場へのPR効果
1つ目は、海外市場へのPR効果です。海外のユーザーや企業にアプローチする際に、世界的に名の知れている企業・プロジェクトから資金を調達しておくことで、まず話を聞いてもらえるようになったり、安心してサービスを利用してもらうことができるようになります。

国内でどれだけ有名な企業・サービスになったとしても、海外進出がゼロの状態ではマーケティングにかかる費用が計り知れません。これまでに数々の日本企業が海外進出の際に苦戦してきたことを鑑みると、イメージしやすいことなのではないでしょうか。

海外の一次情報にアクセスできる
海外に出ていくにあたり、現地の一次情報をいかに入手するかというのは非常に重要なことです。これも、海外から資金を調達しておくことでクリアできます。

投資家には複数の投資先が存在するため、進出したい国に拠点を持っている企業を繋いでもらうことが可能です。自らが自国の一次情報にアクセスできるのと同様、海外では現地企業のサポートが欠かせません。

国内市場でのオーソリティ獲得
あまり本質的ではありませんが、海外から資金を調達しておくことで国内市場におけるプレゼンスを発揮することもできます。

世界のトップティアと組むということは、そのネットワークに参画できるということであり、これほど貴重な武器はないと感じています。

最後に

スタートアップにおける資金調達といえば「株式(エクイティ)」「借入(デッド)」の2つが一般的です。起業すると、どうやって資金調達をするかばかり考えてしまい、肝心のプロダクト開発にリソースを集中できないといった事態に陥ってしまいます。

グラントは、資金提供側がファイナンシャルリターンを求めません。事業シナジーのある企業・プロダクトに対して資金を提供するため、資金の適切な使い方を意識するようになります。

クリプト系のスタートアップに限らず、グラントの仕組みが日本でも普及していけば良いなと思います。

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