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なぜDeFi協会を作ったのか

こんにちは、Techtecというブロックチェーン会社をやっている田上と申します。個人のnoteで書くべきか悩みましたが、DeFi協会における僕の考えはきちんとオープンにしていきたいなと思い、このnoteにまとめています。

よくある書き方にはなりますが、このnoteに記載の内容はあくまで僕個人の見解であり、組織を代表するものではありません。DeFi協会には既に多くの方が携わってくださっており、それぞれ異なる見解の元に活動しています。

一生懸命Twitterも更新してますので、良ければ交流してやってください→ @tomohiro_tagami

DeFi協会の説明

まずは簡単にDeFi協会について説明しておきます。Webサイトの方で詳細に説明してますので、ここでは概要にとどめます。

DeFi協会は、前身となる「Japan DeFi Alliance」を法人登記する形で発足したブロックチェーン業界団体です。主に次の3つを軸として、「DeFi(分散型金融)」の普及・発展を目的に活動しています。

1. ナレッジ共有
DeFiを普及させるために、正しい理解が進むようナレッジ共有の場を創出します。具体的には、セミナーやカンファレンスの開催、海外プレイヤーを招待しての勉強会などを実施していきます。

2. ビジネスマッチング
会員同士にシナジーが生まれるようビジネスマッチングを積極的に行なっていきます。黎明期のDeFi業界において、日本国内からもプレイヤーが出てくることは重要な意味を持ちます。

3. 政策提言
金融業界に変革をもたらしうるDeFiの未来を決めるのは適切な法規制です。他国の規制動向をキャッチアップし、最適な規制が整備されるよう提言を続けていきます。

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設立の経緯

DeFi協会は、2021年2月に「Japan DeFi Alliance(以下「JDA」)」という形で発足しました。事の発端は、当時のMakerDAOとKyber Networkの日本担当だった方々との会話に遡ります。

DeFiに国境がないことは既知ではありますが、人気プロジェクトのほとんどが米国発(米国人・米国登記)となっており、またDeFi銘柄も日本では一切上場していません。

そのため、日本の資金は全て国外に流出してしまい、更には日本で登記していたプロジェクトもシンガポールやスイスに拠点を移し、資金だけでなく人材も流出するといった事態になっていました。弊社も例に漏れません。

しかし、本当にそれでいいんだっけ、という思いが拭いきれませんでした。確かに個社の問題としては国外に移転すれば関係なくなりますが、やはり僕は日本で生まれ育った日本人です。人種に言及する意図はありませんが、起業家として故郷に錦をあげたい思いは強いです。

この状況を受け、MakerDAO、Kyber Networkと共に、あえて国境にこだわる形で「日本のDeFi市場、その先のWeb3を盛り上げよう」という思いの元に、JDAを発足しました。

こちらのインタビュー動画でもJDAについて説明しているので、宜しければご覧いただけると嬉しいです。

JDAを発足して以降、当局とのディスカッションや情報交換を行なってきましたが、組織に人格がないことから形式上の窓口として立てにくいとの指摘を受けました。

DeFiの現場に精通した意見を当局へ提示していくには、形式上の法人格が必要になることを鑑み、DeFi Alliance改め、DeFi協会として法人登記を行っています。

そもそも何が課題なのか

先ほど、資金や人材が国外へ流出しているということを指摘しましたが、一体なぜこのような状況になってしまったのでしょうか。ここで、日本の現行規制についておさらいしておきます。

まず大前提として、「日本は世界で最も早く、暗号資産の規制を整備した国」です。具体的には、2017年4月1日より、資金決済法が改正される形で暗号資産交換業のライセンス制が整備されました。

未だに世界各国でライセンス制が整備されていない状況を鑑みると、2017年時点でしっかりとした規制が整備されたことは、本当に誇るべきことです。当時学生だった2013年からこの業界に関わってきた身として、2017年までの4年間で目にした暗号資産取引所の方々の尽力は、本当に凄まじいものがあったことを今でも覚えています。イノベーションはこうやって社会を変えていくんだと痛感しました。

それから4年が経ち、逆に日本はブロックチェーン後進国になってしまいました。途中、過去最大規模のハッキング事件が起きてしまったこともあり、2017年規制は強化の一途をたどります。

その結果、日本では、ブロックチェーンによるイノベーションが暗号資産(仮想通貨)の影響を受けすぎる形となってしまいました。

暗号資産はブロックチェーンを資産に適用したものであり、これを金融に広げたものが「DeFi」、デジタルデータに適用したものが「NFT」です。

こう考えると、「DeFi」「暗号資産」「NFT」は、それぞれ異なる規制が整備される必要があると言えるのではないでしょうか。それぞれが完全に独立した規制で制御されるべきとは全く思いませんが、ある程度、実態に即した枠組みが必要です。

それが、日本では2017年規制がベースとなって2020年に概ね強化の路線を経て現在に至るため、ブロックチェーンの次のユースケースである「DeFi」が遅れを取ってしまいました。

日本の現状

日本でDeFiが育たないいくつかの理由を、具体例を見ながら整理していきたいと思います。ここに記載するのは、最も頻繁に指摘されている問題です。これ以外にも多くの理由が存在しています。

弊社は、2020年10月に、最大手DeFiプロジェクトAaveからの資金調達をグラントで行いました。独自トークンを発行してAaveと連携し...と考えていた時に目の当たりにしたのが、「法人がトークン(暗号資産)を持っていると、期末時点で評価益に課税される」という問題の致命的な点です。

日本では、法人が期末において所有する暗号資産に関わる未実現利益(損失)は課税対象とされています。前提として、以下の2点を認識しておく必要があります。

1. DeFiなどのブロックチェーン活用のプロジェクトは、資金調達をトークンで行うことが多い
2. DeFiなどのブロックチェーン活用のプロジェクトを運営するには、自社発行の独自トークンが必須

察しの良い方はお分かりかと思いますが、上記2点とも課税対象です。

弊社はAaveから資金調達を行う際に、Aaveの発行するトークンで受け取っています。利確した際の利益に課税ならわかりますが、持っていて値上がりした場合に評価益に課税というのは、「調達した資金まだ使ってないのに課税...泣」ということになります。

2点目が特に致命的です。DeFiを含むWeb3プロジェクトを運営する場合、独自トークンを発行することが一般的となっています。トークンを発行する場合、多くはユーザーに○割、開発資金として○割、創業メンバーに○割、というディストリビューションを組むケースがほとんどです。

この場合、トークンを発行して開発資金として確保すべき○割の評価益が課税対象になります。評価益なんだから価格が上がったら納税するのは当然だろうと思う方がいるかもしれませんが、BTCやETHとは違い、発行するトークンには元値がありません。元値がないというより0円です。

つまり、トークンを発行してユーザーに配布し、そこにマーケットが出来るようになると、マーケットサイズ全額が値上がりということになるのです。ブロックチェーン業界では、トークンを発行すると簡単に数億、数十億という市場が出来てしまいます。このうちの○割を開発資金として法人が有していると、日本では課税されてしまうのです。

まとめると、「資金調達をトークンで行うことに向いていない」「トークンを発行することに向いていない」というのが今の日本です。そんな国で、誰がブロックチェーン事業を行うのか、という状況に陥っています。

この問題については、つい先日にも日経さんと連携して大々的に課題提起してもらいました。

これは、弊社だけの問題ではありません。DeFiに限らず歴史を作ろうとしているWeb3プロジェクト全てが、日本発で行いづらい状況になっているのです。

実際にグローバルを目指してプロジェクトを運営していると、やはり生まれ育った国での地の利を活かせないのは大きなビハインドです。中国が急速な経済成長を遂げたことからもわかりますが、国内である程度育ったサービスが海外に出ていくのと、ゼロからいきなり海外で立ち上げるのとでは、戦い方に大きな差が出ることは言うまでもありません。

改めてDeFi協会設立の目的

ブロックチェーンはインターネットの再来であり、Webの未来です。そんなイノベーションに乗り遅れてしまっては、次の世代の方々に、ソフトウェアで世界に敗北した過去から先人は何を学んだのかと言われてしまいます。

DeFi協会では、規制に対して直接的に何かを強く訴えていこうとは考えていません。やるべきは、現状の課題をより多くの人に知ってもらい、より多くの人にDeFiに興味を持ってもらい、声をあげて然るべき場に居合わせられるようにすることです。

現状の日本は、DeFiに関する議論を行う際に、大学の教授、弁護士、DX企業、暗号資産取引所の方々が意見を出してくれています。前提として、この方々には何の非もないということは理解してください。

実際にDeFiに取り組んでいないからこそ言える意見や発想があることは間違いないからです。しかし、逆にDeFiの現場で必死になって頑張っている人たちの意見も必要だと僕は思います。要はバランスです。

DeFiについて何か議論・決定していく際に、DeFi協会の意見も必要だね、と思ってくれるようになることを目指し、僕は活動していきたいなと思っています。

もちろん、DeFiが普及することで浮き彫りになる課題も認識しています。その最たるものが、AML/CFTだと思います。AML/CFTについて既に様々な意見を耳にしますが、この議論をより具体化するためにも、まずは国内発の取り組みを増やしていく必要があるのではないでしょうか。

現状のDeFiに関するAML/CFTは、FATFを中心に主に米国がリードしています。これは、先述の通り米国発のプロジェクトがほとんどだからです。

日本で多く見られるAML/CFTの意見は、米国で行われていることの焼き増しであり、まるで具体性を帯びていません。意見だけ言って当事者は米国になるからです。もちろん多角的な意見は必要ですが、日本が再び世界で勝つには好き勝手言うだけでなく、具体性を帯びた行動に移していくことが重要ではないでしょうか。

僕は、米国がリードするリスク議論に日本が食い込んでいけるよう、日本発の取り組みを増やしていきたいと考えています。国外に資金と人材が流出してしまうと、議論や意見が机上の空論になります。であるならば、国内でプロジェクトを増やして、そこを日本の規制下で管理した方がいいはずです。

これまでに寄せられた意見について

JDAの設立に伴い多くの方にご協力をいただき、まずはスタートすることができました。DeFi協会として出発した際に早速入会してくれた各企業様・各個人様、今後入会いただける皆様、引き続きよろしくお願いいたします。

一方で、僕個人に集まる痛烈な批判も無視してはいけないと考えています。皆様のお陰で、僕は人の痛みが少しわかる人間になれました。ここで全てを公開したい気持ちも当然ありますが、いくつか特に理解していただきたいことだけ掲載しておきます。

>「俺たちの島を荒らすな」という意見について
DeFi協会だけでDeFiを健全なものにしていけるとは思っていません。表立って活動したいわけでも、DeFi協会が何とかするんだ、という気持ちもありません。

DeFi協会は設立間もないですが、DeFiに関する知見だけは自信があります。どうか敵視せず、DeFi協会が裏方に回る形で全く構わないので、共に協力して活動させてくれませんでしょうか。

>「協会ビジネスのため」という意見について
これはDeFi協会に限らず、他団体の名誉のためにも言っておきますが、この狭い業界のしかも黎明期に、協会ビジネスのために業界団体を立ち上げる人はいないと思います。少なくとも、僕はそう信じています。

一般社団法人というのは、株式会社と違って資本金もなければ株式調達もありません。従って、発起人(厳密には設立時社員といいます)がすべての費用を立て替えます。

他団体のことはわかりませんが、DeFi協会は個人会員の入会を認め法人会員からも年間3万円〜入会を認めています。別にあえて言うことではありませんが、全く儲かりませんし、未だに費用のほとんどを僕が立て替えています。

他にもかなり強めな批判をTwitterやFacebookのDMでたくさんいただいていますが、ぜひオープンな場で議論できれば嬉しいです。一生懸命ツイ廃活動やってますので、ぜひ議論させてください → @tomohiro_tagami

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございます。日本経済は、長年停滞したままの状態にあります。その理由の一つが、消費されないまま貯まる預金額です。暗号資産がそうだったように、DeFiは日本の眠っている余剰資産を呼び覚ますポテンシャルを持っています。

すでに一部の資産が市場に戻ってきていますが、現状のままではこれらがそのまま国外に流出してしまいます。Great Again Japanではありませんが、先人たちの努力により積み上がってきた眠れる資産を国外に流出させてはなりません。

引き続き、日本発でDeFiプロジェクトを立ち上げていけるよう、その先のWeb3.0の未来に向けて共に活動できればと思います。

p.s.
個人的には、DeFi協会の運営を通して「DAO」に関する知見を溜めたいなと思っています。資本主義最大のイノベーションとも言われる株式会社が、DAOによって400年振りに大きくアップデートされようとしています。

DeFi協会には理事会が設置されておらず、代わりに全会員が参加可能なフォーラムを設けています。このフォーラムを通して分散的に組織を運営することにより、近い将来にスタンダードになるであろうDAOの構築に備える所存です。

ぜひ、このムーブメントを共に経験してくれる方々からの入会をお待ちしています!

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株式会社techtecでは、DeFi・NFTをWebサービスに組み込んだ長年の実績をもとに、ブロックチェーン事業の立ち上げ支援やアドバイザリーを行なっています。特にNFTに関しては、企画・発行はもちろん、コミュニティを理解したマーケティングまで一気通貫でサポートします。お気軽にお問い合わせください。

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