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Orbiter Financeの仕組み、"Optimistic"な分散型クロスロールアップブリッジ

イーサリアムのセカンドレイヤーが台頭にするにつれて、レイヤー1とレイヤー2のブリッジが重要な意味を持つようになります。2022年はセカンドレイヤー元年ですが、同時にクロスレイヤー(L1⇆L2)ブリッジも元年になると思います。

クロスレイヤーブリッジのプレイヤーとしては、Hop ProtocolやOrbiter Financeなどが成長してきています。クロスレイヤーブリッジの概観やHop Protocolに関しては下記のnoteで説明しました。

今回は、前半でOrbiter Financeについて、後半でOptimistic Bridgeについて紹介します。

Orbiter Financeとは

名前の由来:インターステラのように人類は他のネットワーク(惑星)に移動するようになる。他の惑星に移動するにはコストがかかるため、そこを円滑にするためのブリッジを作る

定義

  • Planet:L1、サイドチェーン

  • SpacingGuild:ネットワークを跨いだ相互互換システムのルールメーカー、将来的にはDAOになる

    • Agreement-Contract:Solidityベースのスマートコントラクト

    • SupplyStation-Contract:LPのデポジットを管理

  • OrbiterProject:プロジェクトのビジョンを実現するための一連のOSSツール、スマートコントラクト

    • ReturnCabin:ReturnCabinにデポジットすることで誰でもナビゲーターになれる。ReturnCabinは不具合やナビゲーターの不正が起きた場合に、SenderがReturnCabinを通して送金ができるようにする

    • Makerの稼働状況は近々ダッシュボードとして公開予定、たぶんこれがUniswapのプールみたいな流動性供給用のインターフェースになる、現状は自由にMakerにはなれない

    • インターフェースはAWS EC2、Vue+web3.js、Nodeで開発、プロトコルはOSSなのでSenderはインターフェースを通さなくても送金は可能

Fee

  • 手数料:withholding fee(源泉徴収)+ trade fee

  • withholding fee:送金先のネットワークに送金する際にMakerのガス代を支払うために必要。送金先ネットワークのガス代が不規則なため、withholding feeを設定することで不規則性に対応する。withholding fee > 送金先ネットワークのガス代の場合、差額はMakerの収益になる

  • trade fee:初期値は取引額の0.3%、これはMakerが自由に設定できる

コントラクト

  • コントラクトは送金側のみ用意

  • SenderとMakerの2つの役割

  • Senderが送金するとMakerが送金のための流動性を供給する(現状はOrbiterの運営が担当、将来的にプールっぽくなる想定)

  • Makerはあらかじめコントラクトにデポジットする必要がある

  • SenderはSource Network(L1)上のMakerに送金し、MakerはTarget Network(L2)上のSenderに送金し返すのが基本的な流れ

  • Makerが不正した場合、SenderはMakerのデポジットを使ってコントラクトに検証要求を出すことができる

  • Orbiterではコントラクトアドレスではなく、MakerのEOAアドレスに送る。これがOrbiterと他のブリッジプロトコルの顕著な違い

  • 3種類のスマートコントラクト

    • MDCコントラクト(Maker Deposit Contract):Makerのデポジット用、Maker不正時のSenderへの自動送金およびSenderのガス代補填などに使用される

    • EBCコントラクト(Event Binding Contract):送金元のネットワークAと送金先ネットワークBが指定したものであることを保証。State Transferを実行

    • SPVコントラクト:送金元ネットワーク上のトランザクションの存在証明を行う、SPVコントラクトはネットワークごとに必要

  • MakerがSenderに送金し返さなかった場合

    • 1. SenderはSPVコントラクトにトランザクション情報を提供

    • 2. SenderはMDCコントラクトを通して不正検証を請求

    • 3. MDCコントラクトはSPVコントラクトのトランザクション情報を参照し、Senderの請求が正しいトランザクションかどうか検証

    • 4. MDCコントラクトはEBCコントラクトからもトランザクション情報を参照する、セキュリティコードなどを使ってSenderからMakerへ正しく送金が行われたことを検証

    • 5. MDCコントラクトはMakerに対して送金依頼をかける、Makerが応じた場合は解決、応じない場合はMDCコントラクトのMakerデポジットで送金に自動対応

  • 1人のMakerに多くのSenderが同時に送金した場合は問題が生じる。MakerのデポジットがSenderからの総金額を超えた場合はMakerはデポジット全額を失っても送り返さない方が得をするため

  • Makerの最低デポジット額:Makerは総金額の5~10回分を常にデポジットしておく必要がある。EVM互換ではないネットワークの場合は100~200回分を必要とする

トランザクションの仕組み

  • MakerはOrbiterのオフィシャルインターフェースを使ってもいいし、独自のインターフェースを開発してSenderに対応してもいい

  • MakerがSenderの送金に対応するには、送金されたトークンの種類と量、どのネットワークなのかを把握する必要がある。Makerはあらかじめ対応するトークンの種類と徴収する手数料を設定する。対応可能な送金があった場合にMakerは対応する

  • Senderはトランザクションごとに総金額の末尾にセキュリティコードとなる少額の手数料を上載せる必要がある、このセキュリティコードは、Makerが不正をした時の検証請求時にトランザクションを特定するために使われる。セキュリティコードは同時にどのネットワークに対して送金したいのかを特定する際にも使われるため、Makerはセキュリティコードを見てネットワークを特定する

  • Makerは2種類の手数料を徴収できる、トークンは1つずつ供給するためインパーマネントロスは起こらない

  • ETH L1とzkSync、Arbitrumをサポートしているのが特徴、特にzkSyncはEVMをメインネットでは対応していない段階から対応している

Optimistic Bridge

Orbiterの特徴は、何と言ってもブリッジを"Optimistic(楽観的)"に行っている点です。今後イーサリアムの世界は、メインチェーン(L1)とロールアップ(L2)で構成されるようになります。そして、L1とL2を繋ぐブリッジが重要な意味を持つようになります。

ブリッジを介してL1とL2間をトークンが行き来するようになるわけですが、下記のnoteで説明しているように、現状のブリッジの仕組みでは mint & burn を行う必要があります。そのため、Wormholeのようにハッキング対象になりやすかったり、mint & burn の分だけ余計にガス代がかかったりします。

これについては、Vitalikも言及しています。

Orbiterでは、mint & burn を行わないOptimisticなブリッジの仕組みを採用しています。Orbiter固有の仕組みではなく、Optimisticな仕組みは少しずつ出てきています。これについては、Vitalikも言及しています。

なぜOptimistic Bridgeなのか:

  • 通常のブリッジではネットワークを超えるのに2回ネットワークを渡る必要がある→Polygon to ETH、ETH to Arbitrum

  • つまり、2回分のガス代がかかる

  • VitalikはブリッジはOptimisticである必要があると指摘している

先述の通り、今後イーサリアムの世界は、メインチェーン(L1)とロールアップ(L2)で構成されるようになります。これをさらに詳細に定義すると、メインチェーンがエグゼキューションチェーンとビーコンチェーンに分解され、そこに最低64のシャードチェーンがアドオンされます。そして、それぞれにロールアップ(L2)が実装されることになります。

つまり、イーサリアムだけでも複数のチェーンとレイヤーが存在することになるのです。そのため、これらを全てシームレスに繋ぐブリッジが重要になります。

ブリッジに必要なのは安価で高速でかつ安全であることです。Orbiterはクロスチェーンブリッジではなくクロスロールアップブリッジに該当します。イメージとしては、クロスチェーンブリッジは横のブリッジ、クロスロールアップブリッジは横に加えて縦のブリッジも担う感じです。

セカンドレイヤーはイーサリアムのデータレイヤーを使用するため、他のパブリックチェーンやサイドチェーンと比べて51%攻撃などが起こりにくいです。

そのため、やはり今後はイーサリアムのセカンドレイヤーが急速に拡大することが予想されるのです。そしてOptimistic Bridgeは、イーサリアムのセキュリティを継承できるセカンドレイヤーが育つために欠かせないパーツとなります。

参照ソース



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