イーサリアム2.0でETH価格に影響しそうなこと
こんにちは、Techtecというブロックチェーン会社をやっている田上と申します。イーサリアム2.0について、先週末は少しテイストを変えてまとめてみました。
イーサリアムでは、「イーサリアム2.0」「Eth2」などと呼ばれる大型アップデートが2020年12月1日より進行中です。イーサリアム2.0は、PoWからPoSへの移行とシャーディングの実装が目的であり、その過程でいくつかの段階的なアップデートが行われます。
ファンダメンタルズという意味では、イーサリアム2.0そのものが価格上昇の要因になり得るのですが、その過程におけるアップデートでどのようなポジティブ要素があるのかについても知っておくと良いと思います。イーサリアム2.0のロードマップと共に見ていきましょう。
Twitter:@tomohiro_tagami
はじめに
このnoteでは、イーサリアム2.0におけるETHの価格上昇に影響を与えそうな要素について紹介しますが、ETHの購入・投資を推奨するものではありません。自己責任の前提でご覧ください。また、暗号資産はリスクの高い金融アセットですので、失ってもいい金額で扱うようにしましょう。
弊社では、イーサリアム財団よりイーサリアム2.0に関するグラントを獲得しています。イーサリアム財団と連携しながらイーサリアム2.0について情報共有してますので、それなりにコアな部分に入り込めているかと思います。
イーサリアムやイーサリアム2.0についてはPoLで無料で詳しく学習できます。このnoteでも、イーサリアムやイーサリアム2.0の基本的な知識についてはPoLから引用しています。
イーサリアム2.0とは
先に超簡単にですが、イーサリアム2.0についておさらいしておきましょう。現在のイーサリアムには、大きく3つの課題があります。
スケーラビリティ問題:トランザクション処理が追いつかない、結果的にガス代高騰
ストレージの肥大化問題:イーサリアムの需要増によるデータ容量の増加
環境問題:マイニングするのに膨大な電気が必要
詳細は割愛しますが、これらの問題を解消するためにイーサリアムは大型アップデート、通称「Serenity(セレニティ)」を進めています。Serenityは、別名「イーサリアム2.0(以下こちらを使用)」とも呼ばれており、海外のイーサリアムコミュニティでは「Eth2」と呼んでいます。
イーサリアム2.0では、「PoSへの移行」と「シャーディングの実装」を行います。この2つを行うことで、上記3つの課題を解決することが期待されています。
PoSへの移行:マイニングからステーキングに切り替えることで消費電力を削減(環境問題)
シャーディングの実装:イーサリアムブロックチェーン(ビーコンチェーンともいう)に加えてシャードチェーンを追加することで処理性能を拡大(スケーラビリティ問題とストレージ問題)
ちなみに、PoSへの移行だけを指して「Casper(キャスパー)」と呼ぶこともあります。
イーサリアム2.0のロードマップ
イーサリアム2.0は、ざっくり以下の4つのフェーズに分けてアップデートが進んでいきます。
フェーズ0:ビーコンチェーンの稼働、ステーキングの開始(2020年12月1日)
フェーズ1:シャーディングの実装、シャードチェーンのテスト稼働
フェーズ1.5:シャードチェーンのメイン稼働、PoSへの移行開始
フェーズ2:シャードチェーンのフル稼働
これらは、必ずしも順番通りに行われるわけではないことがイーサリアム財団から発表されています。2021年11月末時点では、フェーズ0→1へのアップデートが進められていますが、シャーディングの実装よりも先にPoSへの移行が行われることになっています。
ETH価格に影響しそうな要素としては、シャーディングの実装は直接的にスケーラビリティ問題を解消できると期待されているため、まず間違いなくポジティブに働くでしょう。
なので今回は特にシャーディングには言及せず、PoSへの移行に関する内容に絞って、ETH価格に影響を与えそうな要素を紹介したいなと思います。
PoSへの移行はいくつかのステージに分けて行われます。中でも要注目なのが、PoWチェーン(旧チェーン)とPoSチェーン(新チェーン)の統合を意味する「The Merge」とチェーン統合のタイミングETH発行量を急激に減少させる「The Cliffening(クリフ二ング)」です。
The Merge
The Mergeは以下のようなロードマップで進められることが発表されました。2022年Q1からQ2にかけて行われる予定となっており、後ろにずれこむ可能性はありますが、想定よりも早いペースで進んでいます。
The Megerでは、いきなりPoWチェーンとPoSチェーンが統合されるのではなく、段階的にPoSチェーンの方に機能が移っていくイメージです。なので、2022年Q2までにPoWチェーンが消滅するわけではありません。
現在、PoSチェーンに約8,400,000ETH(約4兆円)がロックされています。これは、2020年12月1日よりステーキングが始まったことによるもので、現状は引き出すことができません。
ステーキングされているETHを引き出し可能になるのがThe Mergeのタイミングになると言われています。以前それよりも前にロックだけ解除してもいいのでは?という提案が出されましたが、現状は特に採用されていないようです。このあたりの議論については弊社とイーサリアム財団とで開催したAMAで、Eth2リサーチャーのAlexが回答してくれています。
イーサリアム財団とのAMAについては、CONNECTVさんで解説動画をアップしていただいています。
予定通りThe Mergeが進んだ場合、約4兆円相当のETHが市場に戻ってくることになります。これが1つ目の価格に影響しそうな要素です。
この4兆円相当のETHが売られるのかそのままステーキングされ続けるのかはわかりませんが、判断材料としてはステーキングした時点のETH価格とロックが解除された時点のETH価格の差があげられそうです。
ロックされた時点の方がETH価格が高い場合、一定量のETHが売られる可能性があります。一方で、ETHをステーキングしておくと一定量のETHが付与されます(現在は年利5.26%)。そのため、売らずにステーキングし続けるインセンティブがあるのも事実です。
The Cliffening
2つ目はThe Cliffeningです。ETH価格に影響を与えそうという点ではこちらの方が重要になるのですが、ほとんど知られていないように感じます。
Cliffeningは、ビットコインにおける半減期のようなもので、The Mergeのタイミングで発動することが予定されています。Cliffeningが発動すると、ETHの発行量が一気に約90%減少されます。
上のツイートの通りですが、イーサリアム2.0では単位時間におけるETH発行量が激減する設計となっています。これは、ETHあたりの希少性を高めることが狙いです。Cliffeningが発動すると、下図のようにETH発行量は激減するため、市場に流通するETHの価値は高まることが予想されます。
8月の「London」ハードフォークにより実装されたEIP-1559の影響で、すでにETHの発行量は以前と比べて少なくなっています。この状況で、Cliffeningが追い打ちをかけるように発行量を激減させるので、十中八九ポジティブな反応を見せるのではないでしょうか。
最後に
イーサリアムは、ビットコインと比べて用途が広いためその分アップデートも頻繁に行われ、ファンダメンタルズが多くなっています。今回紹介した「The Merge」と「The Cliffening」以外にも、細かなアップデートが予定されています。直近では、LondonやAltairといったアップデートが行われており、市場はいずれもポジティブな反応を見せました。
今回紹介したレベルの内容であれば、イーサリアム財団と共同制作しているPoLのイーサリアムカリキュラムで全て学習できますので、良ければ参考にしてみてください。
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