プリンスのDiamonds & Pearlsのスーパーデラックス・エディション、リリース決定!?

8月19日、Steve Hoffman Music Forumにおいて、Diamonds & Pearlsのスーパーデラックス・エディション(以下DP SDE)のセトリかもしれないものが紹介されているとツイッター(今はXか)でHousequakeが知らせてくれた。

https://twitter.com/Housequake/status/1692811879033307612

https://forums.stevehoffman.tv/threads/prince-diamonds-and-pearls-box-set.1110704/page-10#post-32685566

その後リリース日も23年10月27日と決まっているとリーク、そして今月末には何らかの発表が行われるとHousequakeがツイートした(後に24日に告知と決まる)。既に7月7日の「All A Share Together Now」と「7 (E Flat Version)」のデジタルリリースの配信の際のツィートで、❝8月に更なるプリンスの音楽がアナウンスされます❞と記されていた。よってこれならばなんとかその約束を守る形となる、はずだ。

「All A Share Together Now」と「7 (E Flat Version)」のデジタル・リリースされたバージョンは、セレブレーションで配布された音源より音質が向上している(そのセレブのバージョンも聴ける)。また「All A Share Together Now」では、セレブ・ヴァージョンがギターが右側から聴こえるのに対し、リリース・バージョンは中央から、というミックスの違いがある(狭川さん、教えてくれてありがとうございます)。個人的にはギターが華やかに飛び込んでくる様を感じられるセレブ・ヴァージョンの方のが好き。

さてそのDP SDEの噂のセトリだが、果たして信ぴょう性があるのか、見ていきたい。

Daddy Pop (12" Mix) 6:07
DPの代表的なセッション、90年6月オリンピックスタジオで曲は作られ、90年末から91年頭辺りにペイズリーで追加録音されている。Sexy MFのシングルのB面曲。PVも企画されていたので、12インチバージョンも作られていたのだろう。2:18の未発表バージョンが最近登場した。今回のセトリにはDP関連の12インチ・リミックスは入っていないが、恐らく別のディスクにまとめて収録してくれているのではないだろうか。あくまで未発表曲、未発表リミックスのみがセトリに記載されているのだろう。

Martika's Kitchen 4:21 ブートは4:14
Spirit 4:32 ブートは4:33
Open Book 4:59 ブートも同じ
噂のセトリには曲のレングスが記されている。これによって既存のブート音源もロング・ヴァージョンなのかがわかる。上記3曲は90年末から91年頭辺りにペイズリーで録音。マルティカのセカンド、そしてジェヴェッタ・スティールにプリンスがあげた音源、そのプリンス・ヴァージョンだと推測される。本来はオリジナルズの続編に収録して欲しいタイプのアウトテイクだ。既にブートである。そのロング・バージョンが収録される?と思いブート・ヴァージョンの分数を記載した。正直殆ど差がない。そしてこの手の提供音源はあまりオルタネイト・ヴァージョンがないケースが多い(提供して断られ別のテイクを作り直すという例はあるけど)。ブートより音質向上、それだけじゃちょっとこれだけ待たされているSDEなんですから、ねえ、とは思ってしまう。

Work That Fat 4:35 ブートは4:26
91年2月17日ペイズリー。ヴォルト内のテープにはMartika Jam Grooveと記載。既存音源とあまり変わらないのでは。ヴァージョン違いなら何らかの記載があるはずだから。

Horny Pony (Version 2) 4:21
90年9月7日東京のワーナーパイオニアスタジオで、その後91年初期にペイズリーでリリース・ヴァージョンを制作。DPの初期のコンフィグレーションというのがブートであり、オリジナル・ヴァージョン(3:57)とされ収録されている(スロウ・ヴァージョンでデモっぽいサウンド)。また『Uncut Diamond』というブートに収録のヴァージョン(3:57)もある(スロウ・ヴァージョンだが比較的リリース・ヴァージョンに近いもの)。オリジナル・ヴァージョンの方が東京レコーディングと同じテイクなのかもしれない。東京レコーディングと91年初期のレコーディング、二つの合間に更にスタジオ作業をしたとprincevaultに記載はない。しかし2つの未発表ヴァージョンがあるとしている。今回のVersion 2はVersion 1である東京レコーディングの後、リリース・ヴァージョンより前に作られたテイクということになり、『Uncut Diamond』収録だったもののロング・ヴァージョンである可能性が高い。初音源が収録される可能性もあるにはある。

Something Funky (This House Comes)(Band Version) 7:04
90年8月終わり東京のワーナーパイオニアスタジオで。90年9月11日ペイズリーで追加録音。91年にロック・イン・リオII等でライブ・プレイされている。トニー・M、ロージー・ゲインズの声が目立ち、NPGのメンバーを紹介、プリンスもいるのだが控えめ、NPGのアルバムに収録されていそうなバンドを大々的に知らしめるための宣言曲である。そもそもブートの音源(3:47の音源、そしてDP初期コンフィグレーションに収録の3:44の2種がある)でも(NPG)バンド・ヴァージョンである。これがプリンスだけで作ったデモの収録だったら衝撃ではあるけども。
 
Hold Me 4:36 ブートは4:34
90年6月ロンドン、オリンピック・スタジオかメトロポリス、91年10月にジェヴェッタのヴォーカル入れ。アニタ・ベイカーにも提供しようとしたが採用されなかった。ロージー・ゲインズのファースト・アルバムの候補として作られたと思われる。マイテも歌入れしているが、DP系なのでプリンス・ヴォーカル、つまりブートとほぼ同じものになるだろう。

Blood On The Sheets 5:46
princevaultに記載なし。

The Last Dance (Bang Pow Zoom And The Whole Nine) 5:36
91年ペイズリー録音。バンド録音か?「Jughead」と同じベーシック・トラック、効果音が使われているとされ、「Gett Off」のリミックス扱いの「Violet The Organ Grinder」的なものだとprincevaultにある。ミネアポリスにあったクラブGlam Slamでこの曲の音源が流されたことがあるそうなのだが、その音源は未リークだと思われる。大変興味深い完全未発表曲。

Get Blue 4:43 ブートは4:32
91年4月録音。プリンス・ヴァージョンがブートで存在。これもブートとほぼ同じ音源が収録されそう。拙著『ゴールドエクスペリエンスの時代』でこの曲の詳細を書いているので是非。

Tip O' My Tongue 4:08 ブートは1:14
91年4月初期のララビー・サウンド・スタジオでの録音。後にエル・デバージが91年中半から92年初期にかけて歌入れ、エル・デバージ陣営のミュージシャンで録音している。『Promotions』というCDRのブートがあるのだが、そこに91年の夏のペイズリーパークのインハウス・テープからのデモとしてこの曲のプリンス・ヴァージョン、そのスニペットが収録されている。そのコンプリート・ヴァージョンがSDEには収録されるのだろう。エル・デバージ・ヴォーカルの方を聴き慣れしているのならば、ブート・ヴァージョンがプリンシーなアレンジのバッキングにプリンスのヴォーカルなので、大変興味深く、是非その全貌が聴きたい所。

The Voice 4:42
プリンス・ヴァージョン4:46、そしてプリンスとメイヴィスが歌うデュエット・ヴァージョン2:02の二つがある。今回はどちらのヴァージョンなのか、デュエットならそう書くだろう。拙著『ゴールドエクスペリエンスの時代』でこの曲の詳細を書いているので是非。

Trouble 5:36 ブートでは2:06
ロージー・ゲインズの『Essential Rosie』中の「T.R.O.U.B.L.E.」 (「Trouble (Never Give Up)」という名でも知られている)3:55のプリンス・ヴァージョンが収録されているのだろう。princevaultを見るとこの曲は92年8月13日ペイズリーでの録音となっており、91年10月1日発売のDPのアウトテイクとは言えない。しかし『Promotions』にロージー・ゲインズによるエフェクトが少ないデモ的な音源、そのスニペットが存在する。「Tip O' My Tongue」で書いたように91年夏のレコーディングの記載を信じるならば、DP時期となろう。プリンスのガイド・ヴォーカルのヴァージョンはブートにもなく、比較的興味深い収録とは言えるが、まあこれも『オリジナルズ』の続編に入れて欲しい所。

Alice Through The Looking Glass 4:18 ブートでは1:27
「Alice」の表記が有名で、princevaultでは恐らく最近上記のタイトル名に変更している。91年5月28日ペイズリー録音。Princevaultにシーラ・Eが02年6月22日のペイズリーパーク(つまりゼノフォビアの時)のライブで上記の曲と同じ名前の曲をプレイしているが、それと同じかはわからない、としているのだが、『Promotions』に「Alice」というタイトルの曲、そのプリンス・ヴァージョンのスニペットが収録されており、シーラの演奏と同じ曲である。スリリングでポップな素晴らしい楽曲なので、プリンス・ヴァージョンでも、ロージーやシーラのヴァージョンでも、なんでもウェルカムとなる期待大の曲。

Hey U 6:10
91年6月23日ペイズリー録音。マージー・コックス(ドクター・マンボスコンボのビリー・フランツェもヴォーカル)に提供される予定だった曲。彼女らがいたバンドMCフラッシュのリハーサル音源5:19がブートであるが、未流出のスタジオ・ヴァージョンがSDEに収録されることになるだろう。でもプリンス・ヴァージョンなのかどうか。共にカバー曲でAct Iでも演奏されている「Tighten Up」と「Get On Up」のサウンドが含まれていて、どちらかと言えば時期的にはDPだが、続く『ラブシンボル』系のアウトテイクとするべきかと。

Letter 4 Miles 4:36 ブートは4:42
91年9月30日ペイズリーで録音し、その後92年2月にホーンを入れている。ブートで有名な音源だが、これにはホーンヘッズのホーンが入っていない(いわゆる「Miles Is Dead」という名前の頃のもの、後にホーンを入れて曲名が「Letter 4 Miles」と変更されることになる)。よってギリギリDPのリリース前となるが、この曲の収録は違和感を覚える。新事実でも判明するのかもしれない。

I Pledge Allegiance To Your Love 4:41 
ハワード・ヒューウェットに提供された「Allegiance」のことか?このタイトル名は歌詞には登場しない。91年10月1日とDPのリリース日の録音で、これもちょっと収録がおかしく思える。「Promotions」にスニペットが収録されているし、そもそも3:35のプリンス・ヴァージョンがブートで存在する。

Thunder Ballet 10:56 ブートは10:50
ジョフリー・バレー団の『Billboards』で流されているし、そのスタジオ音源もブートで存在する。確かにThunderはDP収録曲なので、SDEに収録させても良いわけだが、厳密には91年10月5日にこのヴァージョンが作られている。先の「Allegiance」と同時期となる。

Schoolyard 7:10 
original versionは4:23で存在する有名なDP時期アウトテイク。90年6月オリンピック・スタジオ。DPの90年11月、12月二つの初期コンフィグレーションにも収録されていたので、これは間違いなくSDEに入れるべき曲だが、どうやらロング・ヴァージョンとなりそうである。エリック・リーズがサックスを入れているスニペットが存在しているが、それがロング・バージョンだと言われており、それが収録されている可能性大。

My Tender Heart 5:06
ロージー・ゲインズのヴォーカルで、『Closer Than Close』と『Concrete Jungle』でバックの演奏者が異なる。プリンスの声が聞こえるのはコンクリート・ジャングル・ヴァージョンの方だが、プリンスのガイド・ヴァージョンはブートにもない。90年6月オリンピック・スタジオでの録音、その時はMy Tender Loveという曲名で録音されている。92年12月19日にテレビ放送された番組『The Ryde Dyvine』でロージーが歌っており、どちらかと言えば『ラブシンボル』の方のアウトテイクとしたいのだが、時期はまあDPではある。

Pain 5:57 
チャカ・カーンが歌うサントラ『Living Single』のヴァージョン、16年プリンス没後シングルとしてリリースされたロージー・ゲインズのヴァージョン(5:37)、そしてプリンスのガイド・ヴォーカル・ヴァージョン(3:27)もある。また
90年6月オリンピックスタジオで録音されたものと思われるロージーがボーカルのオリジナル・ヴァージョン(5:35)もある。多分プリンス・ヴァージョンのコンプリートが収録されるのだろう。

Streetwalker 4:48
90年6月オリンピック・スタジオでの録音、ロージーのファーストとなるはずだったプリンスが大いに関与する『Concrete Jungle』(92年録音、10年にリリースされたのとは異なる)に収録される予定だった曲だが、プリンスのガイド・ヴォーカル・ヴァージョンは存在しない。今回の噂のセトリには確かに幻ファーストの『Concrete Jungle』系の曲が多いのだが、やはり未発表の「In The Name Of Love」、そしてボブ・マーリーのカバー「Turn Your Lights Down Low」も入れるとかして、ロージーのために一つリリースしてあげても良いのではないか、と思ってしまった。

Laurianne 4:15
これは『ゴールドエクスペリエンスの時代』でも少し触れた93年1月2日のペイズリー録音で、時期がかなり違う。新事実でもあるのだろうか。ブートにもない完全未発表曲。

Insatiable (Early Mix) 8:10
タイトルだけで、涎ジュルジュル、これはとても面白そう。90年10月のララビーサウンドでの録音としかprincevaultに記載がない。どのようにリリースされたヴァージョンと異なるのか、新事実とかもあるのかもしれない。

Glam Slam '91 6:16
コンプリート・ヴァージョンと思っていた5:21のヴァージョン、そしてそれより短い、ミネアポリスのラジオ局WLOLで流されたナレーションが入る5:12のヴァージョン、二つがブート音源で存在し、それぞれミックスも異なるが、今回のはそれらよりも1分弱長いので、リアルなコンプリート・ヴァージョンが収録されるのかもしれない。

Live 4 Love (Early Version) 7:32
タイトルだけで、涎ジュルジュル、これは最初期DPセッション、89年12月ペイズリー録音のベーシック・トラックが収録されるのではないか。プリンスだけで作られたデモのようなもの、かもしれないし、当時メンバー入りしてヌード・ツアーのリハをこなしていただろうマイケル・B、そしてソニーT、最初期のプリンスのラップ・コラボとなるトニーMといったNPGとなるメンバー、またマージー・コックスも参加しているものかもしれない。

上記収録曲だけではずっと待たされたSDEの未発表曲収録、その全貌だったらがっかりではあるし、Sign O The Times SDEの時のマイケル・ハウらの既存ブート音源ではない未発表曲、ヴァージョンを収録させていた素晴らしい仕事には及ばないレベルだ。グラム・スラムのライブ以外にも更なる収録曲の続報を待ちたい。

*これを執筆している現在、princevaultではDP SDEの正式な収録曲として上記の曲のいくつかが載せられ始めています。また24日の正式発表前に出したいと思って結構焦って書いてしまっており、間違っているところがあると思います。すみません。

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