SOTTのすべてを書いた後にリークしたSOTT時期のアウトテイク。

最近ブートレーベル、Eye Recordsからプリンスのアウトテイク集、『Blast From The Past 7.0』がリリースされた。ライブ音源のリリースはあったが、アウトテイクを収録したタイトルは17年末以来3年以上なかったので待望のブートレッグとなった。4枚組のCDでボリュームたっぷり。しかしEye Recordsのこのシリーズの常というか、アウトテイク集のリリースの性というか、既存の音源がかなり多く収録されていて、新発掘の音源はわずか、ということが少なくないので、警戒はしていた。実際今回の『Blast From The Past 7.0』は4枚組の中で新発掘だと思われるのは1CD分になるかならないかの分量、そしてその殆どがわずかに音が良くなっている程度、またはYouTube等で既に聴くことが出来るような未発表曲というものであった。それでも今回素晴らしいといえるアウトテイクが2つ、それもサイン・オブ・ザ・タイムズのすべて、でも書いていなかった、その頃のアウトテイクの流出だったので、ここに記しておきたい。

まずは「Shockadelica」(6:27)。ジェシー・ジョンソンのセカンド・アルバムは『Shockadelica』というタイトルだが、そのアルバム・タイトル曲が収録されてはいなかった。プリンスはそのアルバムをリリース前に聴き、良いアルバムには良いタイトル曲が必要なんだ、と勝手にそのタイトル曲を作ってジェシーに収録させろと迫った。ジェシーはやんわりとお断りしたのだが、プリンスは逆切れ。後に彼は当時リリースさせようとした『Camile』というアルバムに「Shockadelica」を収録させる。しかしそのアルバムがお蔵入りとなってしまい、更にその後『Sign O The Times』のセカンド・シングルIf I Was Your GirlfriendのB面曲として目出度く収まった。今回そのプリンスが送ったカセット・テープのオリジナル・ヴァージョンが登場したのだ。12インチのバージョンよりも長く4分後半での笑いながらのギターを弾き捲る部分が追加されている、とても興味深いヴァージョンである。実はプリンスはジェシー・ジョンソンのアルバムがリリースされる数週間前に「Shockadelica」をミネアポリスのKMOJのラジオ局で流している。プリンスのジェシーに対する報復なのだが、もしかしてこの時に流されたヴァージョンが今回収録されたのでは、と長谷川はまず思った。しかしそのラジオで流されたヴァージョンがオフィシャルのものと違っているならば、既に昔から出回っているはずだ。ラジオのエアチェックなんて、ブートの最も安易なリリースの仕方だからである。でも21年春まで今回の別バージョンはリークしていなかったのだから、先に言った通り、プリンスがジェシー・ジョンソンに送ったカセット・テープの音源、というのが正しい解釈となるのではないか。そうなるとリークしたのはジェシー・ジョンソン??この辺り今度来日したら誰か彼に聞いてくれないだろうか。機会を頂けたら僕が聞いてもいい。

もう1曲の興味深いアウトテイクは「Rebirth Of The Flesh」(5:19)。未発表アルバム『Camille』、『Crystal Ball』その両方に収録されている昔から超有名なアウトテイクである。『サイン・オブ・ザ・タイムズ・スーパーデラックス』に収録されたアウトロが異なる単独ロング・ヴァージョンにはびっくりさせられたが、しかし『Blast From The Past 7.0』に収録されているヴァージョンは、『Camille』や『Crystal Ball』に入っているヴァージョンのように「Play In The Sunshine」等へ繋がるように編集されているものの、そのヴァージョンより10数秒長い。テンポがほんの少し遅いのと中間でインスト部分が長い箇所がある。アルバム収録時間の調整のため、このようにレングスが異なるヴァージョンを用意したのかもしれない。長さ、大きさが異なるレゴ・ブロックの数々を駆使し組み合わせて作るかのようにである。しかしその真偽は不明だ。もちろんフェイクのヴァージョン?という警戒もある。


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