マスコミに取材される仕組み

それでは最後に、メディアに取材をしてもらえるための仕掛けについて説明します。ここからの説明はプル型の戦略です。今までプッシュをして自分たちからアピールしないとダメだよということを説明してきました。今度はメディアが来たくなるような仕掛けをすること、これが今回話す内容となります。プル型の仕掛けには大きく分けて2つあります。その一つ目が「社会性」となります。

テレビが取材に来てくれる一つの材料を考えてみましょう。商品であれば、いい商品できましたよ、新しい商品できましたよ、今までにないんですよ…この程度だと普通のことになってしまうわけです。もちろん、それでも商品に魅力的な要素があれば、取材に来てくれることもあります。ただ、テレビ番組というのはすべてがそういう特集の番組ばかりではありません。何々ランキング、今はやりの…というのもあれば、今市場ですごく活用されているものが取り上げられることもあるわけです。

例えば介護施設で有効的に活用されている、食事を自動的に出してくれるロボットとか、そういうのが良い例です。こういう商品がどこの番組に取材されているのかを考えてみましょう。朝の番組の何とか何とかランキングっていうところじゃないわけです。どこかといえば、例えばNHKであったり、お昼の番組、夕方の番組の中の一つの特集のコーナーであったりとなります。これは物売りに全然直結しません。しかし、対象の商品であったりその機能であったりというのは、世の中に広まる機会になるわけです。商品の機能について、社会的な意義をちゃんとうたっていけるようなプロモーションができれば、自然とメディアが入るというわけです。世の中の役に立つ商品を、メディアは取り上げたいからです。

介護施設であれば他にも、これはあるかどうかは分からないですけど、自動的に便のお掃除をしてくれるものとかも良いですね。排せつって老人にとっては結構大変で、寝たきりの人にとっては重労働です。それを例えば寝たままで、誰にも迷惑を掛けずにできる最新の道具があるとなれば、これはもう取材対象に当然なります。

あとは幼稚園なんかではどうでしょうか。とある幼稚園でやっている「新しい教育」なんていう切り口でやっていくのも面白いでしょう。もし仮に全国の幼稚園でそれが取り入れられることになったら、すごく流行となって当然取材も入ります。たとえ全国の幼稚園じゃなくても、ある一部のところで具体的な効果があるとか、そういう数字的なデータと一緒に証明されれば、やっぱりそれも取材が入るわけです。

だから、商品自体の魅力もそうですが、その商品に付属する社会的意義というところをメディアに打ち出していくことがすごく重要です。なので、例えばドライヤーでも、機能の部分で早く乾くとかだけではなくて、そのドライヤーを使うと髪がよみがえるとか言えたら強いです。死んでた毛根が復活するとか。で、その原理は…とつづけるわけです。社会に求められてるような要素を打ち出しながら物のPR戦略をすると、自動的にメディアさんが来てくれるようになります。

社会性、これがすごいキーワードです。同時にこれは、もう仕掛けなんですね。社会性を、どういう切り口で生み出して、どう商品をPRしていこうかというのを考えるべきだと思います。商品を世の中にリリースする前の段階から「この社会性を重視してやっていけば絶対メディアは食い付くよね」みたいに議論しましょう。NHKが特集したくなるような戦略って、組めるんです。

どうやればメディアさんが食い付くだろうなと、そこから入るパターンもあります。一方この商品をこういうふうに打ち出したらメディアが入るだろう、だからこの商品を扱おうというのもあるわけです。これをプロダクト・イン(マーケット・イン?)、プロダクト・アウトと言います。プロダクトがあって、その戦略を考えるのがプロダクト・イン(マーケット・イン)。プロダクト・アウトというのは、マーケットはないんだけど、商品ややり方を考えることです。

つまり商品があるから戦略を組む物と、市場があるから商品を作る物があるわけです。その中で、市場があるからその商品を作るというパターンの場合は、ほぼ外さずに売ることができます。要は売れない物を売ろうと努力するよりも、売れる物を売れるタイミングで作って売ったほうが売れるよということです。だから本当にメディアに来てもらいたければ、社会性も含めたニーズのある物を自分たちで作って発信していきましょう。とても簡単な手段です。

それから、ここまでの話でマスコミの人はネット中心で情報を見つけている、探しているという話をしました。しかし、実は流行を察知するのは全部が全部ネットではありません。リアルショップという方法もあります。リアルショップっていうのは、例えばポップアップショップであったりとかです。期間限定のポップアップショップというのを聞いたことがないでしょうか。

この、ゲリラ的に期間限定で立ち上がるショップなどは、今から注目されそうな商品などがあったりします。例えば今が夏だったら、かき氷やタピオカジュースとかですね。冬だったらあったかい物、スープなどです。今特集しやすいような時事ネタを扱う場合がポップアップショップでは多くなります。だから、こういうポップアップショップに出ている商品で、今まで名前を聞いたことのないものがあれば、マスコミの取材意欲をそそるというわけです。

だったら、こういうポップアップショップに商品を出しておくだけでも効果的です。いろんなイベント出店とかでも良いでしょう。そのイベント自体が儲からなかったとしても、取材が入ることによって商品の売上が爆発することもあります。だから、こういうリアルな活動ができるポップアップショップの存在も重要なのです。

それから、東京都内に住んでいてすごく大切だと思うことを話しましょう。大手の量販店、例えばヨドバシカメラさんやビックカメラさん、ロフトさん、東急ハンズさんであったり。こういった大手の量販店のショップでも取り扱ってもらうことも大切です。イオンさんでも良いですね。それも、東京都内の銀座店とか新宿店とか渋谷店とか、いわゆる都会の街がオススメです。街の中の街と言われている主要エリアのお店に置いてもらうことで、取材が入るということがよくあるからです。

なぜかというと、東京都内に暮らしている番組制作スタッフが非常に多いからです。つまり「今お店ではやってる商品を特集に来ました」という番組が作りやすいわけです。その番組と、テナントさんはこの大手量販店の担当と仲が良いわけです。例えばヨドバシカメラの新宿店があって、この新宿店のカメラコーナーの担当とマスコミの仲が良いとしましょう。ここに行って「今売れてるカメラは何ですかね」とか「他の家電で売れてる物、何ですかね」と、聞かれるわけです。つまりヨドバシカメラは全国にあるのですが、結局新宿店とか銀座店とかがメディアにとっては主要エリアということになっているのです。

こういったところで商品を取り扱ってくれると、取材のときについでに今はやっている物として紹介してもらえる流れになることもあります。家電・カメラの担当者、ヨドバシの関係者や担当者と仲良くしておけば、優先的に自分たちの商品を紹介してもらえることもあるわけです。すごく間接的な考えですが、家電量販店の人たちにちゃんと自分たちの商品をアピールして、その商品をそこに売れなくても置いてもらうことが、宣伝にもなると考えておくべきです。だから主要ショップだけでも置きませんかというオファーがあったときには、ぜひ置いたほうが良いでしょう。全然儲からなかったとしても、売れなかったとしてもです。何かのきっかけで特集されることもあるわけですから。特集が1回でもされると、リアルショップの売り上げが上がるだけじゃなくて、ネットの売り上げも総じて上がっていくわけです。よって、長い目で見れば大きな利益につながるかもしれないのです。

それから、テレビが入るためのマスメディア活動の仕掛けとして、リアルショップに商品を並べて「委託販売ができます」みたいなことも良いでしょう。月の出店料が1万2万かかりますと言われても、1、2万だけ払ってそこの場所に商品を置いておくことが重要です。そこに置かれている商品が、例えばポップアップショップの中でも、今はやりの商品ばかり取り扱っているショップですとなれば、その中の一つの自分たちの商品が取り上げられてニュースになることもあるわけです。

ポップアップショップとか大手量販店さん、付き合いがあるならばやっぱり置いてもらうべきです。例えば期間限定で、ロフトさんの中で行われるポップアップのイベントがあったとします。20万円で出しませんか?と打診があった場合、トータルでは赤字かもしれないけれど出すべきです。なぜならイベントをやっていたら、取材が来るかもしれないからです。実際にハンドスピナーの時は、渋谷のロフト店でイベントをやっていたら、朝の誰もが知ってる番組が取材に来てくれました。

そのときは出店料はそんなにかかっていなくて、売り上げと計算すると、まあトントンぐらいでしたが、つまりほぼ0円でマスコミさんが来てくれて、取材が入ったというわけです。

以上のような仕掛け、社会性とリアルショップという2点を押さえておきましょう。他にもありますが、まずはこの二つはやれるのであればやったほうが良いということです。

ただ、ポップアップショップについては、売上を気にして断念する人もいます。ポップアップショップに関しては、基本売れないものと思っておきましょう。これは、僕が「記念受験」と言っているのですが「ここのエリアにこのお店を出しましたよ」という宣伝活動の目的、それからそのエビデンス、証拠であるということが重要なのです。ですから、そこに出したときにはたくさん写真を撮りましょう。この目的のためだけに基本はやるのです。売れる売れないで言えば、ハンドスピナーの場合はめちゃくちゃ売れましたけどそれは特例です。そういう時事ネタだったり、あるいは流行商品を扱わない限りは「売れ過ぎた」みたいなことは絶対に起こりません。

また、人員のことも気になるところでしょう。用意するだけでもすごく大変です。僕は自分のスタッフにそういうのをやってくれる人がいなかったので、知り合いの会社にお願いをしました。そこで、売り上げがいくら以上になったら、その中から何パーセントを払うという条件を、僕らよりも取り分を多くして全部委託してやりました。売り上げが多いなというときにはそれができるけど、一方で最低の日当の保証もしてあげるわけです。最低日当を例えば2万円だったら一人2万円は払います。プラスで売り上げが上がったら僕らも取り分ちょうだいねと言うわけです。実際、ポップアップのイベントとかをやった時は、イベントからの収益は一切出なくなってもプラマイゼロでいいやという気持ちで外部の業者に委託しました。

プロに委託するほうが良いこともあるわけです。リアルショップの中でも、ポップアップショップって、いろんなエリアに行くと「ここの店、また変わってて何かやってるわ」って思うことがあるでしょう。だけど、お客には声を掛けないと、立ち止まらないし買わないわけです。アピールしなければなりません。例えばキャベツの千切り機があって、その機能性のすごさを伝える、テレビショッピングみたいなことです。プロを雇って実演販売のような形でやるのと、そうでないのとでは、売り上げがやっぱり全然違います。

リアルショップの中でもポップアップをやる場合は、このように呼び込みのできる人、そういうのを得意としてる企業さんなどに運営を委託したほうが、最終的に売り上げも伸びるかもしれません。自分たちの利益も残るかもしれないし、手出しの金額も少なくて良くなるかもしれないのです。だから、お願いをする先の選定はすごく重要だと思います。

出店のエビデンス作り、必ずやりましょう。正直すごく面倒くさくて、人件費的な工数を考えれば赤字になることがほとんどです。でもこれって一時的な考え方なわけです。僕らが例えばヨドバシカメラさんと一緒に仕事をすることで、商品自体に本当に世の中へ売りだそうとしているものだという印象ができるわけです。そこで、人間的な感情を少しでも感じてもらえれば「じゃ、ちょっと多めに取ってやるよ」みたいな話も出てきたりします。実際に現場の人たちと触れ合って、メーカー側がどういう人となりで、というのを感じてもらうと、ヨドバシさんほどの大きい社内の中でも、何か一つ化学反応が起きることがあります。そうなれば良いわけです。

例えば、新宿店1店舗でやっていたものが「あそこ良かったから、うちのお店でも取り扱いたい」と言って、それでは渋谷店も取り扱おうかとかいう流れもできます。次は東京丸の内店で、次はあの店で、そうして、次のステップでは都心でいっぱい扱ってるから、地方もそろそろちょっと欲しいんですよね、という話になるわけです。こうやって全国に広まっていくのです。その先の卸などにも繋がるかもしれません。

とにかく、全ての可能性を否定してはいけないわけです。以上が、マスコミに取材をされる仕掛けとなります。

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