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特定行政書士と考査試験

特定行政書士とは

行政書士法の条文に則して言うと、「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること」(行政書士法第一条の三 1項2号)のできる比較的新しいカテゴリーの「行政書士」ということになります。

すなわち、2014年の法改正前まではできなかった「許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること」ができるようになりました。許認可等に対し、不服である場合の支援を行うということで行政と申請者の見解相違、紛争領域ともいえる分野の支援業務へと権限が広がったと捉えられる法改正でした。

このような広がった権限で業務を行うためには、日本行政書士会連合会が主催する法定研修を受け、考査を受けて合格する必要があります。

制度の状況
比較的新しい制度ということもあり、総務省の統計などを見ても、特定行政書士が不服審査の代理人として関与している数はまだ少ないようです。そのため、実務において、具体的に実務にどのような変化があり、メリットがあるのかは正直分かりませんが、知見の交換、勉強会等を通じ、実務を創造していければと感じている次第です。今後、より使いやすい制度になるため、使ってもらえる制度にするためには、さらなる法律改正が必要と思われる箇所も多々あるように個人的には感じてもいます。実際に行政書士会政治連盟は法改正の活動を継続しているようです。

特定行政書士とは?行政書士の違いは?研修や試験、合格率も紹介! | 行政書士の通信教育・通信講座ならフォーサイト (foresight.jp)

試験の概要
私が受験した平成29年においては、試験自体はあまり馴染みがなかった要件事実論、特定行政書士の倫理以外、行政書士試験の行政法総論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法と多くが行政書士試験と重なりました。細かい条文の問題、改正法の問題もありましたが、私が受けた年は、条文の問題を確実に取れれば合格の可能性が高まる内容だったと思います。

行政書士試験受験から時間が経過している受験生(といっても全員が登録した行政書士実務家である前提)にとっては、その後の行政法各法の大幅改正もあり、侮れない内容であったのではないかと思われます。事前に勉強せず、実務だけの知識で対応することは難しいと思います。というのも、行政不服審査法事態も比較的新しい法律ですし、2014年以降の改正は制度の根幹に関わる改正も多いためです。

お勧めの勉強法

行政法 (講学上の概念、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法)
受験される方には、過去問が公表されていない事情もあるため、行政法分野については、「最近の行政書士試験の過去問を回す」が、お勧めです。
特定行政書士の主な業務は行政不服審査法に基づく手続ですので、試験の重点も行政不服審査法に重点を置いた勉強になります。

というのも、法定研修は参考にはなるものの、具体的事例やあてはめ、知識運用の部分までカバーされるわけではなく、受験生としては、問われる可能性の高い形式、演習形式でも準備しておく必要性があると思われるためです。

要件事実論
司法試験予備試験の受験経験がないと、なじみの少ない分野かもしれません。特に行政法分野の要件事実論は、司法研修所でみっちり叩き込まれて卒業している弁護士以外の士業実務家にとっては、通じている人があまり多くない分野かもしれません。

注意点は、民事訴訟の要件事実論は司法試験予備試験の問題集等を演習本にしてポイントを押さえることができますが、行政法事件訴訟法分野の要件事実論の本や問題集・演習本の数は圧倒的に少ないことです。そして司法試験の目的や重点が若干異なる部分があるので、司法試験用の問題集だけを使うことは参考にはなっても積極的にお勧めできないかもしれません。

行政法分野の要件事実論は、『行政書士のための要件事実論』(日本行政書士会連合会 中央研修所)という本が出ており、実務にも使えると思いますので、そちらを購入して具体的事例を通じて理解を深めるとよいと思います。
行政書士のための要件事実の基礎 | 日本行政書士会連合会 中央研修所 |本 | 通販 | Amazon

特定行政書士の倫理
法定研修で配布されるテキストに沿ってルールを把握することに尽きると思われます。試験自体は、比較的素直な条文やルールを理解していれば解ける問題であったと思います。

過去問の公表がないため、対策が立てにくいかもしれませんが、自分の主観的感覚と合わないルールを中心に押さえておくとよいのではないでしょうか? 

法定研修時に条文の趣旨や目的を理解・把握する中で理由を押さえながら頭に入れていくことが差し当たりの対策となるでしょう。

私が利用した問題集
行政書士試験の際にも利用した肢別本は行政法総論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国賠法の勉強に使えました。普段の仕事が忙しく、クイックに関連する範囲の知識を確認したい、問題の形式で知識の確認をしておきたい方は、ぜひ利用した方が良いと思います。

私が活用した書籍は網羅率がよかった『合格革命 行政書士 肢別過去問集』(早稲田経営出版)でした。
合格革命 行政書士 肢別過去問集 2024年度 [全2733肢を重要度ランクに応じてメリハリ学習](早稲田経営出版) | 行政書士試験研究会 |本 | 通販 | Amazon

特定行政書士試験チャレンジのメリット

メリットは人それぞれかもしれませんが、個人的には以下のようなメリットを感じました。
(1)特定行政書士試験の試験勉強を通じて、行政法全般の知見が強化できること、
(2)要件事実論を学ぶので、契約書のドラフト等において要件事実論を意識したドラフトが可能となり、予防法務を意識した知見が得られること、
(3)特定行政書士に関するワーキンググループも行政書士会内では立ち上がっていて、日々勉強の機会に繋がること、
(4)日本行政書士会連合会では、特定行政書士ブラッシュアップ研修が行われており、継続して行政法を中心とした実務の知見を深める機会を得られること、
(5)1サイズ大きめの特定行政書士徽章(バッジ)の着用が許されること、

でしょうか。
つづく。


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