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イタリア旅行記2019①

2019年秋、イタリアへ旅行した時の備忘録。(全部で4万文字なんで読むなら覚悟いるよ)
当時ブログにupするつもりで書き残していたが、写真upが面倒でそのまま放置していた。良い機会なので若干加筆修正して当初の望みを果たすとする。
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今思い返せば相当運が良かった。
帰国直後にヴェネチアが過去最大の水害、その翌年2020年初頭からはコロナで都市封鎖と、旅行の日程があと少し遅れていたら、ネガティヴな内容になっていたと思う。
結論から言えば、イタリアは最上級に良かった。また行きたいと思えるほどに。イメージと違う点は結構あったが、それでも知らない文化と知らない街で過ごすのは刺激的で良い。もう1回来たいとも思ったし、また別の国にも行ってみたいという気持ちも強まった。そのぐらい驚くこと、初見なこと、学ぶことが多かった。俺はもう40になるが、この年になると悪い意味で色々なことに慣れてしまう――新鮮な感動がない――ので、今回の旅行のような「殴りつけられるような未知と新鮮の激流」は本当に刺激的で楽しかった。
 
という内容をこれから書き連ねていくのだが、俺が結構変わり者であるため、着眼点や感想もかなり変だと思う。そんなマニアックな点もお楽しみ頂けたらと。

■~0日目:事前準備
新婚旅行どこ行くかで議論したところ、
俺:英語圏
妻:イタリア
と見事に割れた。(ちなみに俺はこれが初めての海外旅行。意外にも)
 
俺は観光とか遺跡に興味がない。それよりも何の変哲もない街を歩いてみたり、現地の人が食べてるものと同じものを食べる、みたいなことをする方が好きな人間だ。モノよりヒトに興味があるので、現地人のファッションや習慣、どういう仕事をしてるか、どんなものを食べて何の趣味があるのか、などを見たり知ったりするほうが楽しい。多少英語が話せる(日常会話程度)ので、自分の英語がどれぐらい現地で通用するのかと、英語onlyの環境で暮らしてみたい、という希望があった。
 
ただ妻の希望はイタリアで、それも子供の頃からの夢らしい。そんな歴史あるストーリーに勝てるわけもなく、合議制(建前)の下、イタリア観光ツアーに決定した。最初から詰んでた。
この時点で俺はだいぶテンション↓だったけど、ツアー詳細を見ていくとローマのホテル近くにオペラ座を発見、急にテンション上がる。ミュージカルはそこそこ見てるけどオペラは見たことがない。しかも本場イタリアのオペラ座で見れるなら、これ以上のものはない。早々に手のひらを返してイタリア熱上がる。
 
ということで唯一知っているトゥーランドットのチケットを買おうと思うも や っ て な い。いやいやそんなことないっしょ超有名なんだし、と思いつつ調べたら、そもそもローマオペラ座ではトゥーランドットを公演していない(んなアホな)。ミラノのスカラ座でも年間通してもやっていなかった。しかも何かしらのオペラはやってるものだと思っていたら、実際は月に10回ぐらいしか公演がない。劇団四季や帝国劇場でも毎日昼夜2公演してるというのに、オペラは人気ないのか?と少し不安になった。
 
・チケット購入時のギャグみたいな話
行ける公演が1日だけあったのでそれに合わせてツアーも急きょ日程変更。JTBにチケット購入代行頼んだらサービス外と言われたので自分で購入することに。これがまた大変だった。公式購入サイトは英語だったが、途中から強制的にイタリア語onlyに変わる。わかんねーよ。国籍とか住所を書かなきゃいけないんだが、JAPANが項目になくて入力できず苦労する。もしかしたら日本からは買えないとか、スマホからだと購入できないとか色々悩んだ末に、
「そういやJAPANって英語だな…」
と気がつくまでに10分を要した。なんたるイージーミス。イタリア語なんだからジャパンじゃなくジャポネーゼじゃないかと一人で笑ってしまったが、それでもジャポネーゼはなかった。ジャマイカはあったけど。ここでまた5分ぐらい悩んだ結果、もしかしてジャポネーゼってJから始まらないのか?と調べたら「Giapponese」だった。Gかよ…知らねーよ…
(意外にもイタリア語にJはない。もちろん後で知った)
 
ようやく入力完了できたわけだが、実はこの購入サイト、イタリア語onlyになってから15分以内に決済完了しないとまた最初からやり直しになるクソ仕様。何回もタイムアウトくらった。リアル脱出ゲームかよ。
やっと時間内に全部入力できて決済しようという時、メインカード(楽天)が対応不可だったのでサブのメガバンカード使ったら途中で決済強制停止、スマホに、

「あなたのカードが不正利用されているので利用停止しました」
 
のアラート。まぁ確かに、2年ぶりに使って決済通貨がユーロだったらそら不正疑われて止まるわな…。解除して云々やって結局1時間以上要して何とか購入完了。とても疲れた。でも日本にいながらローマのオペラのチケットをユーロで買う、ってすごい時代だよね。
 
・イタリア語の参考書を購入
英語圏ではないが、せっかく海外に行くんだから現地人と現地語でコミュニケーションを取りたいという強い願望はあった。イタリア語なんてジャポネーゼぐらいしか知らないが(しかもスペルを間違えるという)、一言二言ぐらいは会話できるようになりたいと思い、参考書を買って勉強することに。
 
この時点でもう新しい発見があり、面白かった。というのも、イタリア語は案外簡単なのだ。まず読み方。ローマ字、というぐらいなので発音がまんまローマ字読みで良い。
Baratti=バラッティ、Nocciola=ノッチョーラなど。
若干gliをッリィと読んだりchiをキと発音したりと多少異なる部分はあるものの、95%はローマ字読みでいける。なので単語の音を覚えておけば、なんとなくで正しいスペルが書けてしまう。すばらしい!機能的すぎる!
 
次に発音。日本人にとって死ぬほど聞き取りやすい。英語だと別の単語に聞き間違うことが結構あるけどイタリア語ではそれがない。恐らく英語のような抑揚がないためと思われる。日本語も抑揚がないからね。
英語だとGi↑ve↓ me↓ a↓ ge↑la↓to↓みたいな抑揚とアクセントがあり、速い部分と遅い部分がある。(早い部分は聞き取りづらい)
イタリア語だとDel→ questo→ gelato→ per→ favore→みたいな感じ。
アクセントがないわけじゃないけど英語ほど強めないし、スピードも一定。こちらが話すときもそう。「デル、クエスト、ジェラート、ペルファヴォーレ」みたいにカタカナ読みしたほうが正しく伝わる。
(後日談:本当にカタカナ読みした方が正確に伝わる。逆に英語っぽく抑揚つけて発音するとほとんど伝わらない。不思議だ)
 
最後に、主語を言わなくても良い。なので日本語の文章をそのままイタリア語に単語翻訳するだけで綺麗に伝わる。(be動詞や動詞で主語がわかるので言わなくてもわかる、という仕組み)日本人にとっては、英語よりはるかに簡単だと感じた。
 
ただこれらは参考書を買うまではわからなかったこと。たった一冊の本を買っただけだが、こんなに新しい発見・体験ができるのかと感動した。よく「海外旅行は良い」と言われるが、この時点でその魅力を体感し始めていた。最初はオペラだけが楽しみだったが、ちょっとずつイタリア全部が楽しみになっていった。(ちなみに勉強したのは1週間程度。付け焼刃) 

■1日目:移動→ミラノ泊
13時のフライトで18時にミラノ着。航路は13時間だが時差が-8時間なのでワープしたような感じ。初めて海外に降り立ったわけだが、空港内はそんなに日本と変わらず、海外に来たという実感はあまりない。
 
11月のミラノは日本と同じぐらいの気候で、とくに気温の変化は感じなかった。高速バスでホテルに向かう途中、車窓から外の景色を眺めるもあまり海外感がなかった。標識や看板などは全てアルファベットだが、日本も英語が沢山あるのでそんなに違いを感じない。ホテルも少し古いだけでビジネスホテルのよう。TG5(イタリアの国営放送)を見ながらこの日は就寝。

■2日目:AMミラノ観光→PMヴェネチア移動
普通に起床。特に時差ボケ等はなかった。

スターホテルの朝食ビュッフェ

朝食はビュッフェで、ハムが抜群にうまかった。料理の種類はかなりたくさんあったが、ハムだけで3回おかわりしてしまうほどハムがうまい。朝食はそんなに食べない方だが、死ぬほど食ってしまった。
 
観光地までバスで移動。車窓から見たミラノの景色はとても都会的で東京を連想させる。どうしても海外というとラスベガスとかNYの「コテコテの90’sオールドアメリカ」を想像してしまうけど、ミラノの街は案外東京だった。途中でスフォルツェスコ城に立ち寄り小休止。

スフォルツェスコ城(要塞化後の姿)

一言、でけぇ。熊本城の 石垣とか見たことあるけど、比較にならないレベルででかい。この時なぜか一般兵の気持ちになって考察してみたけど、これはどう見ても攻略できんだろ、と素直に思ってしまった。日本の城と比べると1.5倍ぐらい全てがでかい。まあ体がでかいから彼らにとってはこれぐらいで普通なのかもだが。入口周辺だけブラついてバスに戻る。

本日メインの観光はドゥオモ(キリスト教の大聖堂のこと)とその周辺。この辺りになると古めかしい石造りの家が増えてきた。古代ローマ、って感じの円柱がたくさんあり、ローマ人の石像がたくさん家に付いている。屋根とか壁とか柱とか、とにかくたくさん。こんな過剰な飾りつけいるか?と疑問になるほど
 
ヴィットーリオの大アーケードを抜けてドゥオモが目の前にあらわれると
「あ、これはやべぇわ」と、つい口から洩れた。

ドゥオモ(写真じゃ感動が1ミリも伝わらん。マジでこれだけは実物を見るしかない)

でかい。他に言うべきことあるんだろうけど、とにかく想定外にでかい。長野で言うと黒部ダムの実物を見たときの「でけえ」みたいな感じ。東京や大阪だと適切な比較が見つからん。事前に写真で見ても「へーすごいね」ぐらいのドライな感想しかなかったけど、きれいとか形とか本当どうでも良いぐらい「でかい」っていう感想しか出てこなかった。
 
でかさに最初は呑まれるんだけど、次第に疑問と好奇心が生まれてきた。古代ローマ人の身長が4mぐらいあればこの建物は妥当だけど、たかだが180cm程度の人間にはでかすぎて非合理的だ。科学が発展していない時代にこれを作ったことは単純にすごいと思うが、それだけの頭があるのになぜこんな無駄にでかい建物を作ったのかと(良い意味で)疑問が湧いてきた。このでかさの真意はわからなかったが、好奇心をくすぐられた瞬間だった。遺跡や観光に興味のない俺でも少し心境の変化があった。不思議な感覚だ。
 
ドゥオモ内部はまんまFFみたいなファンタジーな造り。というかFFがこういうのをモチーフにしたのだから似てるどころか本家本元。6階建ての大型デパートみたいな外観しておいて、中は全て吹き抜けのワンフロアなので中の空間もとにかく広い。巨人族の家といった方が納得できるほど。

ドゥオモ内部(人と柱を比較すると広さが異常だとわかる)
ドゥオモ中央部

これは想像だが、昔はビルみたいな高い建物もないので家なんて精々2階建てぐらいなもの。その中で遠くからでも見れて、そして絶対的な象徴として必要以上に大きくしたのかなとも思う。「当時なぜこれを作ったか、なぜ作る必要があったか」みたいな背景考察は結構好きなので観光はこう楽しめば良いのかなと、少し見方が変わった。このドゥオモにはそれだけのパワーがあった。

ステンドグラス

でかさと同じく感心したのがドゥオモ最奥にあるステンドグラス。一枚絵が50枚ほど並んでいて、ストーリー仕立てになっている。要は絵本だ。3セットあり、それぞれ旧約聖書、黙示録、新約聖書の内容を示す。当時は識字率が低く印刷も高価なため、キリスト教を布教するには口伝しかなかった。その内容をイメージさせやすくするのがこのステンドグラス=絵本システムというわけだ。単なる綺麗なガラス装飾ではなく絵本になっていたとは。用途がわかると面白い。

ヴィットーリオ広場(ドゥオモ前の広場。黒人移民が多く治安はあまり良くない)

「日本は安全、海外は気を付ける」という一般常識は持っていたが、このヴィットーリオ広場で早々にそれを体感した。アーケードからドゥオモ前は良くても、広場の端っこに行くとミサンガ売りの黒人が結構いた。観察が好きな俺は遠巻きから動向を見ていたが、確かに観光客に手あたり次第に絡んでいるようだった。ガイドブックによると、彼らは観光客の腕に勝手にミサンガを巻いて、€20(2,400円)ぐらいを請求してくるらしい。世界遺産のドゥオモからたった20mのところに怪しい黒人達(※)が結構いる。海外では普通なのかもしれないが、日本人からすると怖い光景だろう。
※注釈:2019年頃のイタリアは移民難民を大量に受け入れ始めた時期で、彼らの文化の違い=素行の悪さが社会問題になっていた。犯罪が多発して国軍が出動していたほど。それぐらい治安が悪い時期だったと捉えて欲しい。決して人種差別的な意図はない。
 
広場を散策していると、ふいに黒人に絡まれた。言葉は英語なので内容は理解できたが、会話してはいけないと思い、目も合わせずNoとだけ言い続け、中心部に逃げるように歩を速めた。すると彼らもテリトリーがあるのか、一定以上は追いかけて来なかった。英語がわからないフリをしてNoと言い続けるのも間違いではないらしい。早速良い勉強になった。
 
その後は40分の自由時間。ツアーガイドさんが日本人にオススメなカフェをいくつか教えてくれたが、日本人や観光客ばかりいる場所には行きたくなかったので、彼らが来ないような、ちょっと外れの路地にあるジェラテリアを探して入った。読み通り観光客はおらず、現地のイタリアーノが2,3人いるぐらい。ナイスチョイスだ。

え?ここで飲むの?

ショーケースにはジェラートの他にマカロンやケーキなど色々あるが、みんなそのショーケースの上で立ち食い・飲みしてる。イタリアはこの立ちスタイルの方が普通らしい。みんな座らない。(これはこれでなぜ座らないのかも興味湧いてくるよね)
郷に入れば、ということで俺もマネしてみる。付け焼刃のイタリア語を思い出しながらボンジョルノと挨拶したら「Buon giorno!」と返してくれたが、
「Sir, can I help you?」と続きは英語になる。まぁ観光地だからな…。負けじとオーダーぐらいはイタリア語で言いたかったので、俺(日本人)がイタリア語を話し、店員(イタリア人)が英語で返す、という謎のコミュニケーションがスタート。マカロン2つとカプチーノ、エスプレッソを頼んだ。

店員「Another? something more?」
俺「Basta, grazie」
店員「(^^)b」
良い笑顔だった。日本に来た外人さんが拙い日本語でしゃべっていると微笑ましくなるけど、彼も同じような感情を抱いてくれたと思いたい。そう考えるとカタコトでもいいから現地語をしゃべるというのは、思っている以上に大切なことなのかもしれない。

昼食前にミラノ博物館を軽く見学。

トゥーランドットの譜面原本
ポスター(昔はミラノのスカラ座で公演していたようだ)

ミラノ駅前のトラットリアに移動して昼食、ミラノ風カツレツとミラノ風リゾット。

かなりでかくボリューミー。頑張って食ったけど、これが後の悲劇に…
ミラノ駅(石造りの駅ってすごい(語彙力)

この後はサンタマリア教会に移動し、最後の晩餐を見る。

サンタマリア教会(謎の構造)
最後の晩餐(壁画だと初めて知った。遠くからみるとこんな感じ)

正直特に琴線に触れるものはなかった。歴史もそんなに響かなかった。世界遺産で超有名な壁画だけど、それだけ。ドゥオモが強烈すぎたせいかもしれない。
 
その後はヴェネチアに移動。最寄り駅までバスで移動し(約3時間)、そこからは水上タクシー(ボート)で移動。本当はホテルまでそのボートで行く予定だったが、水位が高い?ため途中で降ろされた。(水位が高いとボート降り場が10cm以上浸水して降りれない。後で知った)
19:00頃、ホテルにチェックインし指定のレストランまで徒歩移動、夜のサンマルコ寺院や街並みを先に見れたのは良かった。東京チックなミラノとは違い、狭い路地、趣のある石造りの家。まんまイメージ通りの美しい街並み。街全体が世界遺産というのも頷ける。夜歩けるほど治安も良く(ここ超超重要)、黒人移民もほぼいない。(ヴェネチアに入るにはボートが必須=金がかかるので、危ない奴が少ないと思われる)夜の日本を歩いているような安心感があった。
 
夕食はレストランでコース。イタリアのコースはアンティパスト(前菜)→パスタ→メイン(肉or魚)→サラダ→デザートという順番。日本でいうと一品料理を2つも食う感じ。結構量が多い。
この日はパスタが「シーフードパスタ」と日本語で書いてあったが、イタリア語では「spaghetti al nero seppie」と書かれており、イカ墨だとすぐにわかった。イカ墨と書くと嫌がる日本人がいるから「シーフードパスタ」にしたのだろう。そう考えるとちょっと面白い。イタリア語を勉強した甲斐があった。ただ残念ながら、俺もイカ墨はあまり好きじゃない。微妙な心持ちだったが、一口食ってみたら死ぬほどうまくてびっくりした。
(イタリア旅行中、一番うまいメシだった)
昼のミラノ風カツレツがでかすぎたせいで全く腹が減ってなかったが、それでも人生で一番うまいとも言えるシーフードパスタだった。これ腹減ってるときに食ったらもっと感動しただろうなと思うとちょっと残念。
このイカ墨以外は大したことなかった。メインはエビだったが香辛料が強くてエビの味が薄かった。
 
食後は散歩もかねてサンマルコ広場周辺を散策。観光客が夜ブラついても大丈夫なぐらいには治安が良かった。ヴェネチアすばらしすぎる!
 
ホテルに戻りTG5を見て就寝。TG5は15分置きに天気予報をやるのでそれ見るのが目的なんだが、何回も見る内に単語が何となくわかってくるのが面白かった。seraという単語で天気が出た後に別の都市の天気になるので、何となくsera=夜?みたいに思えてくる。するとmattinoという単語から別の都市の天気が始まるので、mattinoは朝なんだろうな、と想像できる。住めば話せるようになるとはよく言うけど、こういう風に自然に覚えていくのだろう。

その②に続く イタリア旅行記2019 ②|tomo_1851 (note.com)

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