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Buffalo Daughter "Jazz" の装置

Buffalo Daughterニューアルバムがついについに出ましたね…!

今回、Buffalo Daughterの楽曲"Jazz"のための映像を作りました。
演出・監督、編集、そしてメカの製作も含めて1人で好きなように作らせてもらった作品です。
(リリックのシートづくりは手伝ってもらいました)

そしてさきほど公開されました。


ここでは映像の技術的な説明をします。
要素としては今回、

・再帰性反射
・多軸のメカトロ

を試しています。以下それらについての(主に)自分用メモです。

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まず、こんなものを作ろうという構成を練りました。
歌詞が読めるリリックビデオのような、、というお話をいただいたのですが、文字を表示させる、といっても映像編集ソフトのテロップで作り込むのではなくて、文字が印刷(後に印刷ではなくてカッティングシートに変更した)されたシートをロボットアームがカメラの前でひらひらさせるという、サイバネティック人形浄瑠璃を作ることに決めます。

リリックの内容から暗い情景からだんだん明るくなっていくような演出にしたいと思い、それだと写らないんじゃないのか、という恐れがあり、文字を光らせることに。道路標識等で用いられる再帰性反射材(リフレクター)という素材と、レンズ一体型の照明を使うことにします。
この素材は光源からの光を光源の位置にそのまま帰すという特殊性があります。かなり変わっています。

スクリーンショット 2021-09-17 12.57.09


問題はカメラのレンズの中心と照明のランプを近い場所に配置しなければ強い反射が撮影できないということです。車の運転手の目とヘッドライトは離れていますが、道路標識も遠くにあるので十分に反射が見えます。でも本当はヘッドライトの真横に顔を持ってきたときに最大の明るさで眩しく見えます。(道路標識だと暗くても眩しすぎても良くないのでうまく調節されているのだと思う)

カメラのレンズの中心と光源の軸を一致させる、というのは簡単ではありません。スマホの場合、レンズはとても小さいので光源のLEDはかなりの近接配置がなされています。実はスマホとスマホ内蔵のライトを使えば特殊な光源は必要なく簡単にきれいに反射を撮影可能です。
しかし、今回は背景から文字を浮かび上がらせたいので文字の前後にピントを合わせたくないわけです。小さいレンズですみずみまでくっきりはっきりなスマホカメラは用途に合いません。普通のデジカメを使う場合、レンズの中心にライトを配置するとライトのお尻が写るだけになってしまいます。
そこでレンズの前にビームを分割する透明板を配置します。
図にするとこうです。

スクリーンショット 2021-09-17 14.21.15


こんな感じ。
実際には光は透明板で全反射するわけではないので、すり抜けた分が装置内部で反射してレンズに入ります。これが余計なフレアになります。
ややこしいですが図にするとこうです。

スクリーンショット 2021-09-17 14.20.38


装置内部での余計な反射をなるべく抑えるために、光陽オリエントジャパンという会社が作っている内面反射防止素材であるファインシャットというシートを貼りまくります。それでも強い光は反射してしまいますが、そこは諦めます。いい感じに画面が白っちゃけてしまうので怪我の功名とします。


この光陽オリエントジャパン、光学用の黒い素材をいろいろと作っていて、かねてから興味があったので会社までお邪魔させてもらったこともありました。

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↑内面反射防止素材でボディのすべてを覆われた車です。(撮影:わたし)立体感がなくなって非現実感がすごいな、、という衝撃があって、それからファインシャットをいろいろと作品に使わせてもらっています。
光陽オリエントジャパンの清藤さん、その節はありがとうございました。

ファインシャットのシートはアマゾンで買えます。便利。

文字のシートもこのファインシャットの上に再帰性反射素材で作った文字を貼付して作成します。(ファインシャットを8シート使用しました)
これによって光を当てたときのコントラストは最強になって、白飛びと黒つぶれの両方を獲得できます。そういうニーズはあまり多くなさそうですが。
こんな像が得られます。

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そしてそれを撮影するカメラの姿はこんな感じです。
普通のミラーレス一眼と標準レンズ、反射板のボックスと突き出した高輝度ペンライトという奇妙なものです。レンズの焦点距離は50ミリ、F2の古いレンズです。

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カメラのレンズの中心からこのように光が出ます。不思議な感じです。

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撮像系とプロジェクションなどの光源を同じ軸(共役)に配置する、ということは撮影しながらリアルタイムでプロジェクションをする際などでいろいろな面でメリットがあるので、稲見先生(@drinami)による光学迷彩の研究をはじめとしてたくさんの前例があります。わたしのはただの照明ですが、本来はもっとインテリジェントな用途のものです。

参考:光学迷彩における撮影系・投影系の共役配置
https://hoshistar81.jp/pdf/2017VR.pdf

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鮫洲で買ったリフレクター素材のピーポくんステッカーですが、このカメラで撮影すると、

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このようになります。目が白い印刷なので全部黒目になりました。
部屋の明るさは同じです。このくらい極端なコントラストが得られるのです。

さて

文字のシートをひらひらと動かすロボットを作ります。
まずは手でテスト。

スクリーンショット 2021-08-30 1.22.13

やってみるとわかるのですが、自然な動きをさせようと思うとモーター可動軸が何個あっても足りない感じです。自然はすごい。なんとか減らして、片側3軸、計6軸で妥協します。
安価で簡単に作れるロボットをいろいろ調べましたが、エアコンのルーバーに内蔵されているモーターを使った例がありました。

この人はほんとにすごいです。(動画もきれい)
このモーターと構造でどうしてこんなに精度の高い動きをさせられるのか、だいぶ参考にさせてもらっています。

ダウンロード

ちょっとすっ飛ばしますが、できました。
モーターが12Vで動くので、屋外で撮影するために車の非常時エンジンスターター用のバッテリーを使用します。
これです↓


これが本日発売されたNew Albumです。みんな買って聴こう。
配信もスタートしていますが、ライナーノーツがいいのでCDもおすすめです。


最後にもう一度映像を。


謝辞
ホシヒカリさん、リリックのシートの製作などなどありがとうございました。


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