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その虎は 揺るぎ無き笑顔を 維持して

高田馬場で この前 会った『トライさん』と 待ち合わせをして 西早稲田にある『blah blah blah』という 青森の料理を 提供してくれる お店を 訪れた。

待ち合わせの 前の日。

『この度は 訪れる機会を つくっていただき ありがとう。』

と 送られてきた。

それだけで『トライさん』の 人柄に 安心した。

『こちらこそ 誘っていただいて 有り難いです。』

小さなきっかけから どこまでのサイズになるかは これからの あたすの行動なんだよなぁって つくづく 考えたりする。

驚いたことがある。

『トライさん』って みんなが 読んでいる あだ名というか ニックネームなんだと 勝手に 思っていたのだ。

でも 違ったのだ。

「そういえば『トライさん』って どんな字を 書かれるんですか?」

「『トラ』は 動物の『虎』で『イ』は 明治維新の『維』なんだよ。」

どうして その漢字を あてたのかを わざわざ 聞こうとは 思わなかった。

それよりも 純粋に 珍しい名前だということに 心を 惹かれていた。

集合時間は 18時。

螺旋階段を 下っていった先に お店は あった。

ドアを 開けると 目に 飛び込んできたのは ドラムや ボーカルマイクなどの ライブステージだった。

「もしかしたら 飛び込みで 歌えるかもしれませんよ?」

虎維さんの言葉を 瞬間的に 思い出していた。

席に 案内してくれたのは ママさんである『ゆっこさん』だった。

「今日は『銀ダラの西京焼き』とか『みがきニシン』とか 色々あるから 好きなの 食べていってね!」

ふと お母さんのような 包み込むような 優しさが じんわりと 胸の中を 泳いだ。

あたすは 地元の漁港近辺に 住んでいたのだが あまり 魚介類が 得意ではない。

そのことを 正直に 伝えると 虎維さんと ゆっこさんは 笑ってくれた。

「面白いねぇ~笑」

素直に 飾らずに 自分 を 伝えれば 自然と そこには 笑顔が あったりする。

ほんの少しのプライドが 生まれたはずの笑顔を 引き出せないのは 淋しい気がする。

あたすは 初対面の人だろうと 昔からの知り合いだとしても 話すことは 一緒だ。

それは『今』を 伝えること。

相手が 話してくれたことに 対して 共通する感情に 関してのエピソードなら 共感は しやすい。

こちらだけが 知っている いわば『内輪ネタ』だけを 教えても 伝えても それに 対して 共感するのは 難しかったりする。

隣に 座っている 虎維さんは それを 知っている人だと 感じた。

何故ならば『否定』ではなくて『肯定』から 話が 展開したから。

認めながら『もしかしたら』という アナザールートを 二人で 探していく旅をしている感覚だった。

途中で お互いが これまでの話を 整理出来たと 感じた時に また どちらかが 話し始める。

そんな感じだと あたすは 捉えた。

気付けば 18時に 始まったはずの旅は 22時を 迎えようとしていたから 虎維さんの 名前の漢字よりも 驚いてしまったのは 言うまでもない。

「ゆっこさん…今日は ライブがあると 聞いていたんですけど やるんですか?」

「私と 一緒に 演奏してくれるはずだった 俳優の人が 来れなくなったから 今日は 出来ないかな。」

残念そうな ゆっこさんからの言葉を 19時くらいに 聞いていたからこそ こんな 濃厚な時間を 過ごせたと 思えば それは それで 良かった。

もちろん 歌う場所を 貪欲に 求めている 心は あるにしても それは 状況や事情を 無視していい 理由にも ならない。

「今度 また 歌えるタイミングで 歌います。」

これから あたすは この文言を 何度でも 言い続ける。

明確なビジョンを 会話だけではなく 歌を 通して 届けていけたなら。

そんなことを 想い描く夜に なった。

虎の威を借りずとも 明治維新ほどの 大きな革命じゃなくても。

映っている世界ぐらいは 好きなように 感じていたい。

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